第274話 バイゼン共和国のゲートを破壊する1

 MAOシステムを引き当てて、暴走中のバイゼン共和国の転移門ゲートを、放置するわけにはいかなくなった。

だが、この世界こそがMAOシステムのターゲットとする世界の未来だとは、まだ知られていないようだ。

本格侵攻して来ない理由がそれだろう。

知られないままに転移門ゲートを破壊出来ないものだろうか。


 現在のMAOシステムの動きは、魔物による偵察が行われている段階のように思える。

しかし、その魔物は魔素の無い東大陸では生きて行けず、ある一定の距離を進んでは死滅している。

その死体が一定期間魔素を放出拡散することで、ジワジワと偵察距離を伸ばしているところのようだ。

MAOシステムは陸上艦の魔導機関や勇者=異世界転移者の存在を感知して攻撃をしかけて来ると見られている。

つまり、俺や陸上艦が転移門ゲートに接近すれば、そこを守護するために配置されている魔物兵器に感知されて本格侵攻を招きかねない。


 暴走転移門ゲートを破壊するためには、非魔導兵器でアウトレンジ攻撃する必要があった。

いま考え得る選択肢は1つ。

改造戦艦でギリギリの海岸線に接近し、艦対地ミサイルで破壊だ。


 改造戦艦の機関はガスタービンだ。

燃料が特殊なため魔力が発生して魔導技術の電脳を動かせているが、燃料を化石燃料に変更すれば純粋な非魔導兵器とすることは可能だと思う。

ただし、その運航には結構な数の乗組員が必要となる。

乗組員はトラファルガー帝国から借りるという手もある。


 次に艦対地ミサイルだが、制御系から推進機関まで魔導技術で作られている。

これの非魔導化は今の技術力では不可能だろう。

ICからロケット技術の開発など、この世界の基礎科学力では何十年いや何百年必要なのだ?


 そこで思い出したのが、トラファルガー帝国の使っていた誘導魚雷だった。

これは制御装置に生体部品が使われていた。

これで誘導すれば魔導反応は出ないだろう。


 あとはロケット技術だが……。

固形燃料の成分が何かって一般人は知らないよね?

液体燃料のヒドラジンって過酸化水素と反応させるんだっけ?

よくわからないぞ。しかも爆発事故や漏出による事故では人が溶けるとか聞いたことがある。

燃料タンクが溶けてしまうので、燃料注入は発射の直前で無ければならないとか。

そんな取り扱いが難しいものは却下だ。


 そうだ、ジェットエンジンならば化石燃料でいけるよね。

あ、墳進式戦闘機のエンジンはあの魔力の発生する特殊燃料だ。

化石燃料で代替してもいけるんじゃないかと言っていたやつだ。

これで飛ぶミサイルを製造する手がある。

これで行ってみようか。


「ああ、化石燃料がそもそも採掘されてないじゃないか!」


 いや、これは錬金術でいけるのか?

イメージの問題。たしかケロシン系はほぼ灯油で硫黄とかが混ざっている感じだったはず。

とりあえず多少間違っていても飛べれば良い。

速度なんかを突き詰める必要はないからな。


「セバスチャン、非魔導ミサイル、作れるか?」


「作れますが、不確かな技術の兵器ほど失敗しかねないものです。

ここは魔導ミサイルの速度を生かして、敵が魔導反応を感知した時にはもう破壊されているというのはどうでしょうか?」


「なるほど。感知したという報告が上がる前に破壊すれな良いんだよね。

こちら側の転移門ゲートが消えてしまえば、向こうは常時接続が不可能になるんだったね」


 盲点だった。それではサクっと破壊してしまいますかね。

魔導ミサイル量産のネックだった魔宝石は大量に採掘できるアドレスがわかったからな。

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