第272話 接続先の情報は?

 俺はふとあることに気付いてしまった。

転移門ゲートの設計図が残っていたならば、転移門ゲートの接続先の情報も残っているのではないかと。

俺はさっそくセバスチャンに訊ねた。


「まさかとは思うが、転移門ゲートの接続先の情報は有ったりするか?」


 古いデータにアクセスしているのか、またセバスチャンが止まる。

しかし、先日転移門ゲートの設計図を見つけたからか、その時間は若干短かった。

関連情報はそのデータの傍にあったのだろう。


「ございます。

第5代勇者様、ご帰還の世界。

第8代勇者様、ご帰還の世界。

第3代聖女様、ご帰還の世界。

その他、有用な物資を手に入れるための設定が残っておりました」


 その情報を聞き、俺はあることが気になった。


「第5代勇者と第8代勇者は違う世界に帰ったのか?」


 聖女も該当するのだろうが、とりあえず省略した。

例えば勇者たちが地球から召喚された被害者だったとすると、その帰還先の世界は同じで良いはずだ。

それが異なる理由、それは何なのだろうか?


「はい、1番目の世界指定が違います。

これは明らかに別の世界だということです。

ちなみに第5代勇者様と、第3代聖女様は同じ世界でありますが位置と時間設定が違います」


 うわ、勇者と言ってもパラレルワールドからも来ているのか。

似てるけど違う世界、それってどうやって自分の世界だって判断出来たんだろうか?

それらも一つ一つ調べて帰還したのだろうかね。

自分が行方不明になった世界を探せば良いのだろうか?

もしかすると召喚されたときの魔法陣に情報が残っていたのかもしれない。

まあ位置と時間は本人が良く理解しているだろう。


「人が生きている文明世界に繋げるのはやめておこう。

変に干渉しない方が良い。

有用な物資とは何がある?」


 俺の周囲には誘拐同然で召喚されたような転移者はいないからな。

たぶん召喚魔法陣が同じならば同じ世界の被害者だから帰せると思うんだけど、その被害者がいないならば、その世界に繋げることは面倒事を抱えるだけとなるだろう。

だから有用な物資だけに絞る。


「魔宝石を算出する世界設定を発見しました。

食料プラントとして利用されていた世界設定を発見しました。

希少金属を算出する世界設定を発見しました……」


 どうやら宝の山のようだ。

だが、ひっかかるぞ。

なぜ、そのような有用な接続先を持ちながら転移門ゲートは廃れたのだ?

何か原因があるのだろう。


「主君に警告を。

MAOシステムに侵されたとの記述を発見しました。

転移門ゲートの先にはMAOシステムが存在する可能性があります」


 つまり、MAOシステム側も転移門ゲート技術を持っていたということか。

そういや、バイゼン共和国が繋げてしまった暴走転移門ゲートも、その先はMAOシステムの支配下だったな。

それらとの接触を絶つために、転移門ゲートは使用されなくなったのかもしれない。


「使えそうな世界設定でも、ドローンに探査させなければならないな」


 やはり地道に探査するしかないようだ。


「セバスチャン、目ぼしい設定の先にMAOシステムが存在しないかチェックできるか?」


「はい、可能です」


「ならば、調べておいてくれ。

MAOシステムだと判断したら、魔導砲を転移門ゲート内に撃ち込め。

そして接続を遮断するのだ」


「かしこまりました。

我が第13ドックの保全を最優先いたします」


「いざという時は転移門ゲートを破壊しろ」


「はっ」


 転移門ゲートの設計図を見つけているので、また造れば良いだけなので転移門ゲートを破壊しても問題はなかった。

もし、接続先がMAOシステムに侵され続けているのならば、転移門ゲートの使用は諦めるしかないかもしれない。

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