第156話 ルナトーク奪還2

「パッシブレーダー、光点4消えました!」


「魔力強度は戦闘艦か輸送艦か?」


「全て戦闘艦です!」


 どうやら狙い通りに戦闘艦を削れたようだ。

残るは専用艦2に輸送艦4だ。


「敵戦闘艦が後退! 輸送艦が前に出ます」


「好都合だ! 最大射程まで距離を詰めて殲滅せよ!」


 我が艦隊は長距離魔導砲の最大射程から敵輸送艦に向けて魔導砲を撃ち込んだ。

やつらの目的は接近しての自爆攻撃。

それ以外に輸送艦が戦闘艦にダメージを与える手段はない。

或いは、2艦残った戦闘艦を逃がすための囮だろうか。


 輸送艦の防御魔法陣は戦闘艦ほど強くない。

全ての魔力を注ぎ込んだとしても15艦からの一斉射撃に耐えられるものではなかった。


「重力加速砲も使え!」


 この世界ではあり得ない速度を持つ重力加速砲の砲弾が敵輸送艦に向かう。

その砲弾が防御結界の展開速度を越え次々と命中していく。

哀れ敵輸送艦は、改造により搭載された火薬砲を撃つことも無く、自爆の魔力バーストを起こすことも無く沈んでいった。


「敵輸送艦、全艦撃沈!」


 魔力バースト対策を施した我が艦隊は、数で劣る敵艦隊に止められるものではなかった。


「逃げた敵艦も落とす!

後顧の憂いの無いようにこの地から北の帝国の艦隊を消し去る!」


 15:2。負けようのない戦力差だった。

ついにルナトーク奪還の時は来た。


「魔力反応複数! 接近します!」


 その時、突然パッシブレーダーに魔力反応が大量に増えた。

その魔力反応は明らかに小さい。

俺はその反応を以前見たことがあった。


「航空機だ!」


 まさかの敵の航空攻撃だった。


「まさか、敵にも空母が居たのか!」


 キルトタルが航空母艦だということは、今は俺も判っていた。

この世界に戦闘機や攻撃機があることも第13ドックにて把握していた。

だが、それを北の帝国が運用しているとは思っていなかった。

この世界の陸上戦艦と呼ばれる陸上艦は対空戦闘を行えるような兵器を搭載していない。

何を対象に航空機を使っていたのかはわからないが、それが陸上艦を相手としていないのだろうと想像していた。

そもそも空母という存在が稀であり、陸上艦は空母の航空攻撃の脅威を知らないからだと思っていた。

つまり空母なんてキルトタルぐらいしか無いのだと高を括っていたのだ。


「どうする? いや、重力加速砲ならば、対空戦闘も可能か」


 重力加速砲は魔導レーダーの統制射撃が可能だ。

仰角も真上までも向けられる。

その砲弾の速度と連射速度は航空機に対応出来るはずだ。


「重力加速砲で航空機を狙え。

当たるまで連射して構わない」


 構造的に重力加速砲は連射が可能だった。

レーダーで標的の位置を捉え砲弾を連射する。

作っていて良かった重力加速砲。

俺は重力加速砲の存在に感謝した。

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