第155話 ルナトーク奪還1

 第一戦隊を中心として全15艦を要する艦隊を編成した俺は、ルナトーク奪還のために艦隊を進めた。

そのルートは俺の傘下に入ったカムロ=アルペン伯爵の支配領である南東区を通過し北東区からルナトークに至る海岸道ルートだった。

商国には陸奥道、中央道、海岸道というルナトークに至る3つの大街道が南北に通っていた。

その1つ海岸道の半分は既に我が国のものとなっている。

そこまでは堂々と進出出来る。


 そのまま進撃するも、北の帝国の迎撃は受けていない。

まあ、南東区は我が国の領土なので、商国も文句のつけようがない。

そうこうするうちに、いよいよ商国との国境である南東区と北東区の境界に至った。

ここには東西を結ぶ街道が存在していた。

これを越えれば商国内ということになる。


「まあ、条約を反故にすると直接言われたわけではないから、以前の取り決め通りに通過するんだけどね」


 俺は商国との国境を無視して進撃を続けた。

商国内部では条約反故が決定し、我が国の財産に手を出して敵対済みなのだが、公には宣戦布告も条約破棄の通達も来ていなかった。

なので、こちらは条約が有効という認識で通行許可が下りているものとして堂々と通過してやるのだ。


 それが不服で、こちらに抗議すれば、それが条約破棄ならびに宣戦布告となる。

堂々と敵地を破壊しつつ進軍してやれる。

かと言って、このままスルーされるなら、何事もなく通過すれば良い。

どうせ商国には陸上艦を排除できるだけの戦力はない。

商国が雇った傭兵も、うちの国民だ。

同盟国だからこそ契約が成立しているが、裏切ったならば掌を返してこちらの兵となる予定だ。

自分達を護っていた兵が自分達に武器を向けるのだ。

ご愁傷様である。


「北の帝国の艦隊は?」


 北東区を抜ければいよいよ旧ルナトーク領だ。

北の帝国を東側から追い出してやる。


「輸送艦1艦を除き北西の国境まで後退しています」


「輸送艦? どこだ?」


 たった1艦残したということは、また魔力バーストを使うつもりだろう。


「旧ルナトーク城です」


 ルナトークのシンボルを破壊しようというのだろうか?

いや、二匹目のドジョウ狙いだろう。


「敵の狙いは我が艦隊への自爆攻撃だろう。

自爆される前に破壊する。

全艦横陣にて最大戦速!

15艦全ての砲でさっさと片付けるぞ!」


 敵艦は我が艦隊が接近し被害半径に入ってから自爆するようにしているだろう。

それならば、被害半径に入る前に全艦で破壊してしまえばよい。


『ウェイデン伯爵、地上部隊の準備は?』


『いつでも出撃可能です』


 我が艦隊15艦の後ろには兵員を満載した輸送艦が付いて来ている。

国の東側から一気に地上制圧していく予定なので、そろそろ地上部隊を降ろさなければならない。


『よし、地上部隊出撃!

ルナトークを解放せよ!

後はウェイデン伯爵、任せる』


『はっ! 光栄の至り!』


 地上部隊はウェイデン伯爵に任せて問題ないだろう。

ルナトークの解放はルナトークの民によって行われるべきなのだ。

俺は、邪魔になる北の帝国の陸上戦艦を叩く。

二度とこの地を踏めないように、1艦も逃すつもりはない。


『全艦、長距離魔導砲、重力加速砲準備、高度50mで目標が射程内に入り次第撃て!』


 これが準備に時間がかかった理由だった。

我が艦隊15艦全艦が長距離魔導砲を搭載していた。

この長射程の魔導砲ならば、魔力バーストの爆発圏外から敵艦を葬ることが可能なのだ。

例え重防御結界を張っていても15艦から連続で魔導砲を撃ち込めば、爆発する前に敵艦を叩くことが出来るだろう。


『敵艦、無力化を確認。重力制御が切れて墜落しました!』


 どうやら爆発させることなく無力化できたようだ。


『よし、このまま西の国境まで北の帝国の艦隊を追い込むぞ!

先制攻撃! SSM発射!』


 なけなしの4発のSSMが発射され敵艦隊へと飛んで行った。

狙うは戦闘艦のみ。

重防御結界を張っていてもSSMなら突破出来る。

これで敵艦隊は輸送艦も含めて残り6艦というところだろう。

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