第103話 第13ドック3
200番代と同型の非戦闘用ゴーレムに案内され迎えの車両に乗った。
俺は普通に乗り込んだのだが、皆が驚いているのでよくよく見ると、それは地球で言うバスだった。
座席の部分が全面窓になっていて外の景色を見やすいようにした、まさに観光バスだ。
「ああ、この世界ではバスどころか車が珍しいんだったか。
危なくないから、乗った乗った」
ティアとニルは装甲車を知っているはずだけど、騎士たちは北の帝国の兵器としてしか知らないのだった。
更に全員を運べるぐらい大型のバスなんて彼らには想像の範疇にも無かったわけだ。
皆、警戒して慎重に乗り込んで来る。
「そこまでしなくても食われたりはしないぞ?
ああ、ここまで大型の車両は魔物か何かと同列に思われているのか!
ほらほら、大丈夫だから安心して乗れ」
皆をやっと乗り込ませると、バスが走り出した。
ゴーレムが運転席に座っているが、それはただのポーズで運転は自動のようだ。
触れていないハンドルが勝手に動いていた。
いや、もしかするとゴーレムの電脳が制御しているのかもしれない。
そうなると運転しているのはゴーレムということになるのか?
バスは工場街や倉庫街を抜けていく、その先には近代的な施設の中では場違いな貴族屋敷が建っていた。
『こちらの迎賓館にお泊り下さい』
「迎賓館だそうだ。ここに泊まることになる」
ゴーレムのガイア帝国語を皆に翻訳してやる。
良かった。まともな宿泊施設だ。
何百年経ったかわからないのに、今年建てられたかのように劣化が見られない。
これは【状態保存】の魔導具により魔法でもかかっているのだろう。
ガイア帝国の遺跡は朽ちてしまっているものもあるが、きちんと残されているものは新品のように状態が維持されている。
キルトタルなんかは艦体や魔導機関、一部倉庫の内部などは維持されていたが、搭載されていた魔導砲の一部や装甲車などは【状態保存】が切れて朽ちるに任されていた。
その【状態保存】の魔導具も故障したり魔力が切れれば機能しなくなる。
魔導具の存在と魔力の供給、その2つが揃わないとここまで完全に機能する遺跡は残らないのだ。
バスを降り、迎賓館の玄関に向かうと、俺の身長の倍はあるかと思われる大きな扉が左右に開いた。
中は巨大なホールで左右にずらりとメイド型ゴーレムが立って一斉にお辞儀をする。
今までのロボット然としたゴーレムではなく、完全に人型だ。
スタイルや髪型も様々で色や長さも変えており、同型が1台もいないバリエーション豊富な個性を持たされたゴーレムだった。
なぜゴーレムだとわかったかというと、
これは人と差をつけるために敢えてそうしているのかもしれない。
しかもメイド喫茶のようなミニスカートのコスプレ風メイド服を着ている。
まさかこんなところでミニスカメイド服に出会うとは思いもよらなかった。
やはりガイア帝国を創った勇者というのは日本人か。
メイドゴーレムたちの並ぶ先には執事型の男性ゴーレムが黒い執事服を着て立っていた。
執事ゴーレムは俺たちを迎え入れると深々とお辞儀をする。
「お待ちしておりました。
キルトタルの電脳よりお話は伺っております。
管理者クランド様、何なりとお申し付けください」
なんと執事ゴーレムは王国公用語を話した。
王国公用語が現在この世界の標準語に位置付けられているとはいえ、ガイア帝国の遺跡絡みは全てガイア帝国語で統一されていた。
神様から全ての言語を理解出来るスキルをもらった俺だからこそガイア帝国語を話せたわけで、ガイアベザル帝国の連中でさえガイア帝国語は話していなかった。
キルトタルの電脳も俺から言語データを得るまでは王国公用語を使うことは無かった。
俺は他の同行者との手前、ありがたく王国公用語で話すことにした。
「ああ、よろしく頼む。
ところでルナワルドとガルムドの修理について打ち合わせをしたいのだが可能か?」
ルナワルドは俺の独自改造部分があるからね。
そこを
ガルムドはガイアベザル帝国の改造部分をルナワルドに準じて直したい。
「かしこまりました。
クランド様は、私とともに執務室へ。
皆さまはメイドどもにお部屋へと案内させましょう」
俺の要請に執事ゴーレムは深々と頭を下げ、てきぱきと指示を出し始める。
「それではクランド様、こちらへ」
胸に抱いていたプチをニルに任せ、俺は執事ゴーレムの案内で、二階にある執務室に通された。
そこには陸上戦艦と同じシステムコンソール付きの執務机があった。
執事に促されて執務机の椅子に座る。
すると魔法により目の前に巨大スクリーンが展開した。
そこにはルナワルドの3D画像が描かれていた。
所々に赤い表示がある。
おそらく修理箇所のマーキングだろう。
俺は執事ゴーレムに説明を求めるため呼びかけようとし、名前を知らないことに気付いた。
「えーと、何と呼べばいいかな?」
「私に名前はありません。執事とお呼びください」
それはそれで呼びにくいな。
じゃあ、名前を付けるか。
「それじゃ、セバスチャンね」
「身に余る光栄!」
執事伝統の名前を与えただけなのにめちゃくちゃ喜ばれた。
まさか特別な名前だったりして?
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