第104話 第13ドック4

 俺は艦の修理に関してセバスチャンに訊ねておくことがあった。


「セバスチャン、修理状況を説明してくれ」


「はい。こちらはニムルド改めルナワルドの設計図面と現在の破損個所を照らし合わせた映像です。

この赤い部分が設計と異なり、破壊された箇所と推定されます」


 やはりそうか。

となると俺が改造した部分も破損と認識されているんだな。

それとこの第13ドックにはガイア帝国で建造された陸上戦艦の設計図まで残っている。

これはとんでもないお宝と言えた。


「この舷側の装甲ハッチは舷側砲を出すために俺が開けた穴だ。

そのまま残してほしい。

俺が開発した蒸気砲と加速砲が設置してある。

開閉式なので強度に問題があれば補強改良してくれ」


「かしこまりました」


 セバスチャンはそう言うとスクリーンの該当箇所に触れる。

すると、赤の表示が黄色に変わり、注釈の文字が書き込まれていく。

それは俺が要請した内容をガイア帝国語に訳した指示書だった。

半透明のスクリーンをセバスチャンが向こう側から操作している。

これは地球でも実現していないなかなか面白い機能だ。


「ルナワルドと同等の改良をガルムドにもしておいて欲しい。

ガルムドの方は舷側装甲と魔力伝送管が破壊されている。

それの修理と、新規に舷側砲の開閉式への改良を施して欲しい」


「かしこまりました」


 すると巨大スクリーンがもう一枚表示され、ガルムドの3D画像が映された。

ガルムドの舷側開口部は赤で新たに描かれ、注釈文が付け加えられた。

以外なことにガルムドの修理箇所はそんなに多くなかった。

これも重力加速砲で魔力伝送管をピンポイント射撃したおかげだろう。

もうこれ以上他には指示するところはないな。


「こちらからの指示は以上だ。

修理はどのぐらいかかる?」


 俺は滞在期間のことを考えて、修理日数を聞いた。

あまり長いようなら転移で戻ることも選択肢にはあるからだ。


 セバスチャンが少し考えるような仕草をして答える。

ドックの電脳と情報交換でもしているのだろう。


「ルナワルドとガルムドの魔導砲塔は用意出来ていませんでした。

これの製造に3日ください。

搭載は1時間もあれば可能です。

その間に他の修理が完了するようにスケジュールを組みます」


 おお、ここでは新規に魔導砲塔が造れるんだな。

キルトタルの第二魔導砲塔を運搬するためにここに来たんだけど、それも新造だったわけだ。

交換用の在庫があるんだとばかり思っていたよ。

これは何基かもらっていって国の防衛兵器にしようかな。

それと、ここはとても重要な施設だ。

北のガイアベザル帝国にも所在を知られ、ガルムドを派遣されている。

ここを北の帝国に奪われたら世界が終わる。

俺はこの施設防衛の重要性を再認識した。


「ここの防衛戦力の拡充は可能か?

それと出入口の穴にも隔壁を設置して欲しい」


 また情報交換でセバスチャンが考え込む。


「開口部への隔壁の設置を要請しました。

また防衛戦力の拡充を受諾しました。

開口部への魔導砲の設置、補充戦力として陸上戦艦の新造を要請しました」


 え? 陸上戦艦も新造出来るの?

このドックやばいわ。生きたガイア帝国技術の宝庫じゃないか。


「陸上艦の新造が出来るなら新設計の艦も造れるのか?」


「可能です」


 マジか!


「なら物資を運ぶ輸送艦なんて造れるか?

キルトタルの魔導砲塔を運べるぐらいの大きさで」


「可能です。設計をいたしますか?」


 先ほどまでガルムドが映っていたスクリーンに既存の輸送艦の設計図が何枚も表示された。

リーンワース王国で運用されている陸上輸送艦と同型の設計図も見受けられる。

ああ、素人が新設計するより既存の設計図の方が優秀だわ。

これに俺の希望を反映させた方が遥かに優秀な輸送艦となるだろう。


「じゃあ、これにちょこっと改造を加えて……。

これで建造を頼む」


「かしこまりました」


 ここの施設はいったい何艦同時建造が可能なんだ?

いや、その能力をフルで使うつもりはないけど……。

ほら、そんなことをする目的って世界征服しかないからな。


「ちなみに、どのぐらいの期間で建造出来る?」


「輸送艦は50m級ですので1か月、戦闘艦は150m級の攻撃型ですので3か月といったところです」


 地球での船の建造スピードが良くわからないけど、これって早いんだよね?

あれ? これって俺が魔法で艦体を造ってしまえばもっと早くならないか?


「セバスチャン、ちょっといいかな?」



◇  ◇  ◇  ◇  ◆



 俺はセバスチャンと共にドックの桟橋へとやって来た。

施設の端の方に建造ドックがあった。

俺は入り口の穴を掘った時に出た土などをその場に出した。

そしてそれを材料に輸送艦の艦体を設計図を横目に錬成してみた。

艦体の構成物質は陸上戦艦標準の装甲材だ。


 目の前に土が盛り上がり、輸送艦の艦体の形を取り始める。

そして眩い光が発せられたと思ったら、そこには輸送艦の艦体があった。


「これで作業は捗るだろ?」


 セバスチャンはゴーレムでありながら一瞬驚愕の顔に固まったように思えた。


「はい。作業工程の50%が終了しました。

あとは魔導機関と重力制御機関、魔力ストレージ、魔導砲などなどのユニットを設置すれば完成です」


「魔導機関とかの実物ってある?」


「いいえ、それらはこれから製造いたします」


 残念。実物さえ目にすれば俺の錬金術で錬成できるから、もっと期間を縮められたのに。

そうだ。ルナワルドには実物がある。

あれを元にすれば作り放題だ。


「ルナワルドとガルムドには、これ輸送艦と共通する機関はあるか?」


「艦の大きさにより魔導機関や魔力ストレージの大きさ出力自体が違います。

魔導砲も大きさ威力が異なります。

共用しているのは、重力制御機関でしょうか。

これは大きさに対して基数で対応しています」


 ああ、重力制御機関なら造ったぞ。

あれは特殊素材が必要だな。

ただし、あれはほとんど原型を留めていたり、半分残っていたからなんとかなった。

ゼロから作るのは俺でも時間がかかりすぎるだろうな。


「となると俺が手を出せるのは今のところここまでか」


「いえ、これだけでも工期短縮になり助かります」


 そう? なら戦闘艦の方も造っておこうか?


「じゃあ、こっちに戦闘艦の艦体も造っておこう。

ちょっと材料を集めてくれないか?」


 セバスチャンがゴーレムに指示して装甲の材料となる土を搬入させる。

さらに俺の目の前の空間に魔法でスクリーンを出し、そこに150m級戦闘艦の設計図を表示する。


「よし、【錬成】」


 眩い光が消え、目の前に150m級の戦闘艦の艦体が出現していた。


「じゃあ、後はよろしく」


 後は作業用ゴーレムに任せて、俺とセバスチャンは迎賓館に戻った。

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