第102話 第13ドック2
俺は北の帝国の陸上戦艦と遭遇し攻撃を受けたためこれを重力加速砲により無力化した。
その艦の名前はガルムドといい、これをワイバーン強襲により制圧、鹵獲した。
北の帝国の陸上戦艦は、ご丁寧に艦橋の目立つところに艦名板が掲げてあり、簡単にその名前がわかった。
また魔導通信機が生きている艦であれば、データリンクでこちらの艦の電脳には相手の艦名がわかる。
元々は旧ガイア帝国所属艦なので、識別コードさえ把握出来れば、データバンクに記録されている建造時の古い艦名を知ることが出来る。
だが、北の帝国により艦名変更されていれば、その名は知る由もないわけだ。
北の帝国ではシステムに艦名の変更登録をさせられないのか、今まで――といっても3艦だけだが――建造時の名前のままの艦しか見たことが無い。
これでザールの名を冠する艦を手に入れられた。ザールの皆も喜ぶだろう。
さて第13ドックの所在地までやって来たのだが、その遺跡が見つからない。
ビーコンによる誘導はここが第13ドックであることを示している。
ルナワルドで何度も上空から探し回ったが、何も発見できない。
どうやらこれは地下に埋もれているということで確定だろう。
俺の胸にはプチが抱かれている。
プチはルナワルド防衛任務が暇だったことで、何も活躍できなかったと悔しがった。
そこで第13ドックの捜索を手伝うと言い出したのだ。
健気なプチは俺の胸に抱かれながら必死に地面を見つめているのだ。
「カワイイなぁ。プチは」
俺は思わずプチの毛をモフモフしていた。
すると、プチが久しぶりにチート能力を発揮した。
「わん、わん、わわわんわん(ご主人、ご主人、ここ掘れわんわん)」
『ルナワルド緊急停止、この下だ!』
出た。プチのユニークスキル【ここ掘れわんわん】だ。
俺はプチの能力を信じている。
第13ドックは間違いなくこの下にある。
ワイバーンに乗ってプチと一緒に地上へと降りる。
そこは木が疎らに生えた草原だった。
プチが俺の胸から飛び降りるとダーッと走り出した。
そしてある位置でお座りする。
「わん!(ここ!)」
俺がその位置まで行くと、またダーッと走り出す。
そしてまたお座り。
「わん!(ここ!)」
俺はプチが示した場所に木の枝を折って刺し、マーキングしていく。
プチは都合4回お座りをした。
つまり、プチは四角いエリアを示したことになる。
その広さは、キルトタルが収まるような巨大さだった。
「プチ、ここが入り口なのか?」
「わん、わわわんわん(うん、ここ掘れわんわん)」
「よし、土魔法でがっつり掘るか!」
俺は土魔法で第13ドックの発掘を始めた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
土魔法で掘り、壁を固め、残土をインベントリに収納しつつ掘り進めた。
その下には謎物質――陸上戦艦の装甲と同じ材質――の隔壁があった。
俺たちはルナワルドに戻り、ルナワルドをその隔壁の上へと進めた。
するとシステムコンソールのパネルが赤く光り出し、点滅を始めた。
『第13ドックのシステムとリンクしました。
管理者権限の確認を要求されています。
パネルに手を当ててください』
俺はシステムコンソールに促されるままパネルに手を当てた。
すると俺の手の甲の紋章が輝き、パネルが青く光った。
『管理者権限を確認しました。
管理者クランドを最上位管理者と認定します』
第13ドックのシステムからのメッセージがシステムコンソールから流れる。
『最上位管理者ということはセキュリティを変更できるのか?』
俺は北の帝国が、この第13ドックをまた狙って来るだろうと危惧していた。
俺たちが居れば撃退できるかもしれないが、いつまでもここにいるつもりはない。
不在時でも、セキュリティさえ上げておけば、もしかすると
『はい。可能です』
『俺の支配下にある艦以外は、ここへの侵入を禁止できるか?』
キルトタル、ルナワルド、あと名前は変更するけどガルムド、これらの艦だけがここへ侵入出来るようにしておけば問題ないだろう。
それと、もし他にも陸上戦艦が手に入ったら、俺の支配下という縛りで対応可能だろう。
ルナトークのリグルドも条件次第では修理にここを使うかもしれないし。
『侵入者への対応はいかがしますか?』
『基本は隠匿。攻撃されたなら反撃しろ。
防衛機能は?』
さすがに戦力がなければ反撃できないからな。
『対艦戦闘能力はあります。
しかし、砲台上部に土が積もっていて使用不能です。
現有戦力は防衛用の陸上戦艦が1艦あります。
魔導砲塔単装2基装備。
出入口が確保されたため、現在出撃可能です』
『そいつの管理権限も俺に書き換えろ。
運用は第13ドックのシステムに任せる』
その陸上戦艦が北の帝国の手に渡ったら困るからね。
俺の権限は最上位だそうだから、俺の支配下に入れれば北の帝国に権限を奪われることはないだろう。
『先ほど、この施設の権限を上書きした時に書き換え済みです』
よし、これでそう簡単にはここを奪われることはなくなった。
『それではドックの中に入れてくれ』
『はい。隔壁を解放します』
隔壁が左右に割れて開き、上空にレーザーで誘導路が描かれる。
このレーザーで囲まれた中にルナワルドを進めて垂直降下していく。
俺が土魔法で掘った穴の壁が上へと昇っていく錯覚に陥る。
ここの上にも隔壁を作らないとならないな。
中に入ると上部で隔壁が閉まっていく。
降りた先には誘導路が続いていた。
その先には陸上戦艦を泊める桟橋がいくつか見える。
正面の桟橋には先ほど話題に出た防衛用の陸上戦艦が泊まっている。
俺たちはルナワルドを展開路でUターンさせ、隣の桟橋にバックで停泊させた。
桟橋にはガントリークレーンが何基も聳え立ち、陸上戦艦の修理が出来ることが見て取れた。
ルナワルドはこのまま修理と整備を行うことになっている。
ルナワルドの舷側にはタラップが横付けされ、桟橋への乗り降りが出来るようになった。
俺たちはルナワルドを降りて第13ドックの施設に向かうことにした。
案内のゴーレムがやって来て、俺たちを誘導する。
「そうだ、ガルムドも修理してもらおう」
隣の空いている桟橋にインベントリからガルムドを出す。
ルナワルドとガルムドには早速作業用ゴーレムがわらわらと纏わりつきだした。
「修理に何日かかるんだろうな?」
一応食料は潤沢に用意した。
何百年も放置されたここに、まともな食料があるか疑問だったからね。
案内された施設に宿泊出来なかった場合はルナワルドの艦内で寝泊まりすることになるだろう。
さて、第13ドックにはどんな施設があるのだろうか?
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