第12話 お風呂と添い寝

「賢太、話したいことはあるが、今日はもう遅い。あやかちゃんと風呂に入って、今日はもう寝なさい。話は明日だ」

 現在の時刻22時30分。かなり夜も更けてきている。


「あやか、一人でお風呂入れるか? それとも、パパとお風呂入るか?」

「パパと入る!」

「了解。康介さん、詩織さん、先にお風呂いただきます」

「おう。ゆっくり入ってこい。荷物は2階のいつもの部屋に運んどいたからな。あそこは今日から賢太とあやかちゃんの部屋な。あと、お父さんと呼びなさい」

「私は、詩織さんのままでいいわよ」

「それじゃ、お先に失礼します」

「おい、無視するな」

「あやかちゃん、明日は私と一緒に入りましょうねぇ」


 俺はしつこい康介さんを無視して、玄関まで戻り、2階へあがる。階段は玄関前にあり、2階まで吹き抜きの玄関にシャンデリアと螺旋階段。映画のセットの様だ。俺の部屋は階段をあがって左側にある客間の一つだ。いつもこの部屋に泊まらせてもらっている。勝手知ったる康介さん

 階段を上って左側には客間が二つ、トイレと洗面があり、右側に康介さんと詩織さんの部屋と書斎、元遥さんの部屋がある。しかも一番小さい書斎でも12畳もある。俺の部屋は18畳位ある。

 1階にはリビング、ダイニング、和室と浴室にトイレがある。それだけでなく3階には屋上があり、なんとすこし小さいがプールがあったりする。まさに豪邸。

 この近辺はこんな家がたくさんある。セレブ達の町だ。

「パパ、このお家、お姫様が住んでるお城みたい」

 玄関ホールから階段をあがっていると抱っこしている彩花がすごく興奮している。

「彩花も今日からここに住むんだよ。あやかもプリンセスだね」

「プリンセス! えへへ」

 彩花がうれしそうにはにかんだ。


 部屋から着替えをとり、1階の浴室へ向かう。

「あやか、お風呂もビックリするくらい大きいからな。後、滑ったらいけないから走ったらダメだよ」

「おふろも大きいの! すごいねぇ」


 この家、風呂が実は一番すごい。康介さんがこだわって作った風呂だ。まず、脱衣所が男女に分かれている。初めて見たときビビった。でも実は中は混浴になっている。

 風呂は総檜のキングサイズ位の大きさの湯船に洗い場は大理石が敷き詰めてあり、こちらもシャワーが3つもある。天井はガラス張りで夜空が見えるようになっており、天気のいい日は星空がきれいだ。さらに、洗い場の奥の扉から外に出ることができ、ここには露天風呂とサウナがある。

 小さいながらも日本庭園が広がっている。庭を眺めながら入る露天風呂は最高だ。しかも、康介さんの家は高台の端にあるため、お風呂側に他の家は無く、のぞかれる心配が全くないし、露天風呂からは市外が一望できる。

 どこの旅館の風呂だと叫びたい。


 彩花はまだ、5歳なので俺と同じ脱衣所を使わせる。

「あやか、脱いだ服はこの籠にいれるんだよ。こっちがパパの籠ね。あやかのはこっちだよ」

「はーい」

 元気な返事をして服をポイポイ脱いでいく。

 直ぐにすっぽんぽんになって言う。

「パパ、はやくー」

「はい、はい、待ってね。今いくからねー」

 彩花は本当に真っ白な肌をしている。特に虐待されたような跡は無い。心配は特にしていなかったけど、一応チェック。

 しかし手足の細さが痛々しい。5歳児は本来もっとふっくらしているはずだ。遥さんの上の子も5歳のはずだが、男の子とはいえ、もっとふっくらしている。

 これまでの生活がうかがえる。あまり良い生活環境ではなかったのだろうと。でなければ、香織がSOSなど出してくるはずはないのだ。たった一人の家族を手放すはずがない。

 これまでのことは、彩花からゆっくり聞けばいい。今日からは安心して暮らしてもらえばいいのだから。


 香織、俺はお前の方が心配だ。大丈夫なのか?

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