第13話 お風呂と添い寝②

「うわー。広いねー」

「あやか、まずは体と頭を洗って、湯船に浸かろう」

「あやか、あたま洗えないの。目つぶってるからパパ洗って」

「いいよ。そこの椅子に座って」

 俺は彩花の髪を洗ってあげる。鮮やかな青い髪はサラサラだ。香織の髪も綺麗だったが彩花も負けてない。

「あやか、流すぞ。目をつぶってろよ」

 彩花はぎゅっと目つぶる。優しく湯をかけシャンプーを流す。

「あやか、終わったぞ。大丈夫か」

「プハー。パパありがとう」

「じゃあ、体は自分で洗えるかな」

「できるよ」

「じゃあ、パパはあっちのシャワー使って洗うから」

「うん」

 さっと、頭と体を洗っていると彩花がこっちに来た。

「パパ、お背中洗ってあげるね。ゴーシ、ゴーシ」

 小さい手でスポンジを持って、一生懸命背中を洗ってくれる。子供を苦手に思ってたけど、彩花の行動の一つ一つが可愛くてホッコリする。

「あやか、ありがとう。もういいよ。こっちにおいで、今度はパパがあやかのお背中洗ってあげるね」


 綺麗に泡を流して、湯船に浸かる。彩花には熱いようでまだ足の先しか入れていない。

「あやか、水を入れてあげるからこっちの方に入りな」

 水を少し入れてあげると何とか入れるようになったようで、肩までしっかりと湯に浸かっている。白い肌がピンク色になっている。

「あやか、ゆっくり10数えたら出ていいよ」

 そう伝えると、ゆっくりカウントを始めた。

「い~ち、に~ ・・・・・・ きゅ~う、じゅう。終わったぁー。あつーい」

 叫びながら、湯船から飛び出た。

「危ないから、走ったらダメだよ」

「は~い」

 トテトテと脱衣所の方へ向かう。体はピンク色になっているが、フラフラはしていないから、大丈夫だろう。


 用意されていたタオルでしっかりとあやかの髪と体を拭く。髪は男の様にゴシゴシと拭くと摩擦で痛んでしまうので、優しくタオルで包む。これは昔から詩織さんや愛花さんから散々言われているのでわかっている。わかっているが俺は面倒だから自分の髪を拭くときはこんなことはしない。自分のことは素早く終え、彩花の方へ。


 自分で着替えるからで手伝わないでと言われたので見守る。花柄のパジャマをきちんと着れている。大きなボタンが3つついてるが、これも問題なし。手を繋いで、リビングへ。


 康介さんがダイニングで晩酌をしている。

「あやかちゃん、パジャマ姿も可愛いねぇー」

 エヘヘと彩花は照れている。康介はビールを手に持ち、「賢太もどうだ」と勧めてきた。さっき禁酒を言い渡したのあんただろう!

「すみません。もう9時を過ぎてますので、今日は遠慮しておきます。明日一緒に飲みましょう。お父さん」

 俺の言ったセリフに康介さんが驚いている。

「ふっ。ふふ。いいな。やっと呼んでくれた。10年待ったぞ。ふー。今日のビールは格別だ」

「康介さん、よかったわね。今日は2つも夢が叶ったわね」

「何ですか夢って」

 俺は尋ねる。

「一つは賢ちゃんにお父さんって呼んでもらうこと。もう一つは女の子の孫よ。遙のところは二人とも、男の子だったからね。もう諦めたけど、一気にかなちゃったわ」

「そうだったんですね。お父さん」

 俺はニヤニヤしながら、康介さんを見る。

「俺はずっと息子が欲しかったからな」

 康介さんは照れながら真面目に答えた。今度はこっちが恥ずかしくなってきた。


「あやかちゃん、お風呂上がりに何か飲む?オレンジジュースか牛乳、お茶だったらあるわよ」

「おば、あっ。えっと、しー? しお?」

「しおりよ。あやかちゃん。難しかったら、しーちゃんでいいわよ」

「しーちゃん? うん。しーちゃん、夜遅くにたくさん飲んだらおしっこが出ちゃうから、オレンジジュースをちょっとだけください」

 おーえらい。この辺は香織の躾がよくできている。おねしょの心配が小さくなった。


「あやかちゃんは偉いわね。そこのおじいさんは飲み過ぎで、上からお漏らししそうね」

 詩織さんが毒をはき始めた。康介さん、そろそろ止めたほうがいいよ。言わないけど。南無。


「それでは先に休ませていただきます。おやすみなさい」

 俺になぞって彩花も、

「おやすみなさい」

 ペコリとお辞儀する。


 彩花と手を繋ぎ寝室へ。

 ベッドの上で、二人で正座して向かい合う。

「あやか。今日、パパは初めてあやかに会いました。最初はびっくりしたけど。今はあやかに会えて凄く嬉しい。今日から急にはママからパパに交代して、あやかもびっくりしたと思う。でも、パパもママに負けないくらいあやかのことが大好きだよ。だから、パパとおじいちゃんとしーちゃんの4人でママの帰りを待ってくれるかな」

「パパがいるから待てるよ。ママ言ってたよ、パパは凄くかっこよくて、強くて、ヒーローだって。あやかの事も守ってくれるって。だから、あやかはずっとパパに会いたかったの」

「そっか。ずっと会いたかったのか。嬉しいよ。あやか。さあ、もう遅いから一緒に寝よう。おいで」

「うん」

 彩花が俺の横に入り込んできてしがみつく。

「パパ、あったかい」

 彩花の方が温かいが、そこはツッコまない。

「あやか、おやすみ」

「パパ、おやすみのチュウは?」

 おでこに軽く口づけする。

「おやすみ」

「おやすみ。パパ」


 今日1日で色々な事がありすぎた。人生が変わる1日だった。考えることはたくさんあるけど、もう無理だ。眠い。彩花に普通の幸せを。只それだけは、絶対に守る。


zzz

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る