第10話 おじいちゃん
「賢太、諸々の手続きは明日からにするとして、まずは俺の家に行くぞ」
「康介さん、なんですか、いきなり」
「お前、明日は土曜だからいいが、月曜から仕事はどうするんだ?その間、彩花ちゃんはどうするだ。急に保育園には預けられないぞ。それに子供の育てたこともないのに、いきなり面倒みれんだろ。だから、暫く家に住め。そして詩織に教えて貰えばいい
あと、父さんと呼びなさい。」
「いや、急には無理ですって。しかもまだ違いますし。仕事のことはちょっと考えていることがありますので、考えが纏まったら相談します。うーん。それでは、ご迷惑おかけしますが、ご厄介になります。服とか準備してきます」
「もう、お前の家でもある、気にするな。遙が嫁いでから、詩織と二人なんで寂しんだ。ずっと居てくれていいぞ。あと、香織ちゃんとの写真とか思い出の品とかも持ってきてくれ。証拠書類として申請に使うから。香織ちゃんからの手紙は持ってくるな。誰にも見られないように隠しておけよ。本当は処分した方がいいが、捨てられないだろ」
「そうですね。捨てれません。それじゃ、ちょっと準備してきます」
「おう、俺は詩織に電話しとくわ」
「それじゃ行くぞ。荷物は俺が車に運ぶから、お前は彩花ちゃんを起こさないように運んであげな」
「わかりました。お願いします」
康介さんは荷物を持って外へ出ていく。2往復はしないといけないもんな。彩花のトランクでかすぎる。彩花が2人くらい入れそうだし。
俺は彩花を起こさないように抱っこし、運ぶ。彩花と触れている所が温かい。子供って体温高いのな。温かいわ。久々に人肌の温もり感じ、満たされる。10キロは超えているはずだが、全く重くない。米はあんなに重いのにな。世界のミステリーだな。
俺は康介さんの車の後部座席に乗る。チャイルドシートないけど、今日は大目に見て欲しい。
康介さんも荷物を積み終わったようだ。
「賢太、玄関の鍵返しとく」
「ありがとうございます。ちゃんと鍵が閉まっているか。チェックしてくれましたか?」
「お前はおかんか。相変わらず細かい。多分大丈夫だ。それじゃ、出発するぞ」
康介さんは、エンジンじゃなかった、モーターの電源を入れ、出発した。康介さんの車は電気自動車だ。全く騒音がしない。タイヤとアスファルトの摩擦音しか聞こえない。ミニ四駆よりもよっぽど静か。しかも月の電気代100円位らしい。マジ省エネ。ガソリン1Lより安い。
康介さんの家は家から15分位だ。地方とはいえ、高級な住宅街にある。相当な豪邸だ。6LDKもある。リビングも30畳以上ある。弁護士ってスゲぇ。俺の家は3LDKの普通のマンションだ。一人では広すぎて2部屋は全く使ってない。だから一人位増えても全く問題ないし、何ならもう一人増えったって大丈夫だ。
康介さんの家に着いた。ガレージの扉がセンサーに反応し自動で開く、おしゃれガレージだ。
車から降りようとしたとき、彩花が起きた。
「ん~。パァパ、ここおそと?」
「そうだよ。ちょうど彩花のおじいちゃんとおばあちゃんのお家に着いた所だよ」
彩花がはね起きた。
「おじいちゃん!!!」
「そうだよ。あやかちゃん。僕がおじいちゃんのこうすけだよ」
康介さんが彩花に声をかけると彩花は吃驚して、俺の後ろに隠れた。
「おっ、おじぃ…ちゃん?」
俺の足にしがみつきながら、恐る恐る訪ねる。
「はじめまして、あやかちゃん。さあ、ここは暗いから、家に入ろうか。おばあちゃんも待ってるぞ」
彩花は少し人見知りをしているみたいだが、嫌がっている感じじゃない。
「あやか。おばあちゃんに会いに行こうか」
俺も今日からこの人たちと家族になる。新たな一歩だ。その一歩を彩花と進むため、俺は彩花の手を握った。
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