第3話 香織の子

 どうやら間に合わなかったようだ。泣きながら何か呟いている。

「パパ、ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい」

 俺は彩花ちゃんに近づき膝立ちの姿勢になり、目線を合わせる。

「すまん。もっと早く気づければよかった。別に怒ってはいない。大丈夫だから泣かないでくれ。ほら、立って。着替えをしよう」

 少女の手をとって立ち上がらせる。お風呂場へ連れてきたが、どうすればいい?俺が脱がすのか?脱がせていいのか?今日初めて会った女の子の服を脱がすのはハードルが高すぎる。取り敢えず時間稼ぎだ。

「着替えを持ってくる」


 俺は着替えを取りに玄関に置きっぱなしにしていたスーツケースを開けた。幸い鍵はかかっていなかったので開けることができた。

「えっと、着替えは。っ、これは」

 スーツケースの中に、賢ちゃんへと書かれた封筒があった。懐かしい香織の筆跡だ。早急に読むべきなのだろうが、まずは着替えを持っていかないと。

 取り敢えず、ピンクのワンピースとパンツを持って洗面所に戻った。


「!?」

 洗面所の扉を開けて、ビックリしてすぐに閉めた。

 白い肌の美幼女が真っ裸だった。非日常の風景に体が反応し、凄まじい速度で戸を閉めてしまった。いけない。驚かせてしまったかもしれない。

 断じて俺はロ○コンではない。ペ○でもない。そもそも女性に興味ない。男性にもな。人との関わりが面倒なのだ。

 しょせん子供の裸だ。気にする必要はないのだが、ただビックリしただけだ。

深呼吸し、戸をノックする。

「入るけどいい?」

「いいよ」

 中から聞こえたから戸を開けたが、やっぱり真っ裸だった。だよな。

 まぁ、俺は大人だ。子供の裸なんて気にしない。昔好きだっただろう子に似ている子供だけど気にしないったら気にしない。

「えっと、着替えを持ってきたよ。これでいいかな」

 ワンピースとパンツを渡す。彩花ちゃんは受け取って着替え始めた。

 よかった、着替えは自分でできるみたいだ。モゾモゾと着替えている。

 やっぱり痩せすぎだ。肋がういている。

「着替えたら、こっちに戻ってきて。」


 そう声をかけ、リビングへと戻り、ソファを拭くことにする。革張りだからそこまで大変じゃない。雑巾で綺麗に拭いて、必殺のファ○リーズ。大抵これで除菌できるだろう。乾いたタオルで乾拭きして処理完了。それほど手間でも無かった。


 ふと後ろを向くと少女がこっちを見ていた。

「着替えできたようだね。こっちにおいで」

 俺が呼ぶと、トコトコと歩いて来て、前にとまり、ペコリと一礼した。

「パパ、ゴメンなさい」

 俺はびっくりした。初めてあった男。まぁパパ認定だが。の家に急に来て、心細いだろう、ママはいないし、それにお漏らししてしまった訳だ。パニックになってもおかしくない。普通は泣き叫ぶだろう。でも、この子はきちんと謝ってきている。躾けができているのか、彼女の本来の性質なのか。いい子だと思う。

「君はいい子だね。きちんとゴメンなさいできて」

 俺は彼女の頭をよしよしと撫でてあげた。髪の毛はサラサラでまた、香織を思い出してしまった。

「エヘヘ、ママに迷惑かけたらゴメンなさいするように言われてるの」

とはにかんだ。


 俺は体中に電気が流れたかの様な衝撃をうけた。なんだ、この子はすごく可愛い。癒やしだ。まさに尊い。再度いうが俺はロ○コンではないぞ。ないよな。たぶん。


「えっと、あやか、ちゃん。お腹空いてなないか?オムライス作るけど、食べるかい?」

「パパっ、オムライス作れるの! すごい。食べたい!」

 やっぱり、彼女の中で俺はパパなんだな。まぁ可愛い女の子に懐いて貰って、嬉しくない訳があろうか。いやない。一人反語が出るくらいには嬉しい。他人に料理を振る舞うのも久しぶりだ。

「じゃあ、これから作るから、待っててね。」

「うん」

 ニコニコ笑顔だ。さっきまでのしょんぼりした様子はないな。良かった。


 香織からの手紙は気になるけど、それは後でいい。取り敢えず彩花ちゃんに少しでも安心してもらおう。そう考えるくらいには彼女のことが気になり始めているのであった。

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