一、「食事中」

「オオキベリアオゴミムシって――」彼は言った。オオなんとかというのが何なのか知らないけれど、最後の「ゴミムシ」でおおよそ見当はつく。聞き返したくもない。代わりに露骨に嫌な顔をして見せたけれど、彼はお構いなしに続ける。「あれって幼虫の時、蛙に食われても口の中で噛みついて、逆に食い殺すんだって」……まったく、食事中に何て話を。僕は大げさに溜め息をついてから「でも、僕の口内には噛みつけないかな」と返して、細かい歯が奥まで埋め尽くす、丸い口の中を見せてあげた。途端、彼は鋏状の顎を閉じて項垂れる。うん、これでだいぶ食べやすくなった。

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