一、「ネコ」
「にゃあ」
猫の声がした。外からにしては妙にはっきりと聞こえた。思わずあたりを見回す。もちろんうちには猫はいないし、ここは5階だ。じゃあ隣の部屋からだろうか。ここはペット禁止のはずだけど。一応ベランダに出てみたが、そこにも、階下にも、やっぱり猫の姿はない。そうして腑に落ちないまま部屋に戻った瞬間。
「にゃあ」
また聞こえた。部屋側から。部屋の中にいるはずはないと思ったものの、物陰やトイレものぞいてみた。クローゼットも開けてみた。もちろんいない。やはり隣なんだろうか。でも今まで隣の部屋から物音さえ聞こえたためしはなかった。壁越しの声にも思えない。壁越しでないなら……壁の中か。嫌な予感がした。私は恐る恐る壁に耳をあてた。
「にゃあ」
私は少し安堵して振り返った。壁からじゃなかった。
「にゃあ」
私の背後で、知らないおじさんがまた言った。
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