<掌編/少変/小片>集

殻部

一、「手」

 私の寝室にある小さい窓に、無数の手の跡が付いていた。ここは5階で、はめ殺しの窓の向こう側にぺたぺたと。カーテンをぴっちりと閉めてから、リビングに駆け込んで同居人に話すと、なんと彼がやったと言う。どうやって?と聞くと、窓のところまで連れてこられ、促されるままにカーテンを開けた。窓の向こうに、両の掌をぴたりと付けて、彼が貼りついていた。驚いた。彼って二人いたのか。

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