第一章「旅のはじまり」 第二話
結局、突然よく知らない人の部屋で眠る事になった僕は、案の定中々寝付けず最悪の寝起きを迎える事となった。隣でぐっすり眠っていたメルは朝日がしっかり昇ってから目を覚まし、朝一番の発声とは思えぬほど元気に声をかけてきた。
「おはよー!雨彦、よく眠れた?」
「全然…」
「そっか!じゃあ今日もがんばってこ~!」
「マイペースだな…。今日はもう一度図書館に行く、でいいか?」
「うん!昨日はあんまりよさそうな情報手に入らなかったからね~。」
「情報を絞るべきだな…。歩きながらちょっと整理しよう。」
自身の頭を整理するためにも、廊下を歩きながら目的の情報についてメルに話す。
「災厄が起こったのは一週間前。まだ文献はほとんどでておらず、新聞も被害状況の報告が大部分を占める。だけど、僕たちが欲しい情報は被害者たちについてだ。」
「ふむふむ?」
「例えば隕石の直撃を食らったのに生きていた人だとか、隕石の落下を偶然観測していてそのデータを公表している人だとか、そういうのが必要だ。」
「それは、新聞というより週刊誌に近い気がする…」
「昨日は雑誌系に目を通す時間が無かったから、今日はその辺も見てみよう。」
「おっけー!」
方針が決まり、先程よりややしっかりした足取りで僕たちは図書館に向かった。
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すっかり作業に没頭し、気がついたらもう夕方になっていた。
「疲れたー!」
隣でメルが大きく伸びをした。
「ずっと座ってるとお尻が痛くなってくるな…でも昨日よりずっと色々わかった。」
「おっ!じゃあ成果報告会だね!」
僕たちは向かい合い、各々の調べた内容を報告した。
「まず…僕たちみたいに、友人や家族、知人が目の前で跡形もなく消えて困惑してる人は世界中にいっぱいいるようだ。」
「みんなかわいそう…」
「不思議なことに、隕石が直接ぶつかった人は死体が残らず、爆風などで間接的に被害を受けた人は死体があった。周囲の壊れ具合から見ても到底人が完全に消滅するほどの衝撃ではないのに。」
「そのへんになにかカギがあるのかな」
「かもしれない。そして、消えた人の元居た場所には必ずこのかけらが残されていた。僕もメルも持ってるこのかけらだな。一部では星のかけらって呼ばれてるらしい。」
「へえ~、かわいいね!」
予想外の反応に一瞬詰まってしまう。が、すぐに持ち直し話を続けた。
「あ、ああ…。まあとにかく、この星のかけらについてが次の話だ。どうやらこれを使って超常現象を起こす人がちょくちょくいるらしい。」
「超常現象?」
「ああ。雑誌に書いてあった話だから本当かどうかは分からないが。たとえばこの記事。」
16、17
僕は机にあった一冊の雑誌を取り出し、付箋を貼っていたページをメルに見せた。
そこには「神子」と称された美しい少年の写真と、彼の成した事が載っていた。
「おお?綺麗な人ー!」
「この人は生きる神として人々に神託を下しているらしいんだけど、この首から下げてる宝石の一部が星のかけらなんじゃないかって言われている。」
「んー?…たしかに、言われてみればサイズとか質感?みたいなのは近いかも。」
メルが記事を覗き込み、自身が首から下げているかけらと比較する。
「実際神託を見た人によると、彼が祈りを込めるとこの真ん中の宝石が光ったんだそうだ。星のかけらは超常現象を起こすとき光る性質があるらしい。」
「そうなんだ…」
「首都に近い街にいるようだ。明日にでもいってみよう」
「おっけー!」
元気よく返事をして、勢いよくメルが立ち上がった。
僕も机の上の資料をまとめつつ、立ち上がった。
その時、資料と一緒に無造作に置いていた僕の鞄から一冊の分厚いノートが滑り落ちた。
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「おっと、しまった。」
「なにそれー?…ノート?」
僕はノートを拾い上げ、ぱらぱらとページをめくる。
「日記だよ、晴希の。何か手がかりになるかもと思って持ってきたんだ。」
「小さい字でびっしり書いてある…!几帳面な人だったんだね。字も綺麗。」
「ああ。晴希はなんでも記録するのが好きで、その日の天気も出来事も全部このノートに書いてたんだ。」
「すご…メル1日で飽きちゃいそう。」
「もし晴希とメルが会ったら、面白いだろうな。全然違って。」
ふと晴希を思い出して、笑みがこぼれた。
「えーそうなんだ!会いたいなあ、晴希さん!雨彦もシエルと会ったら絶対面白いよ!シエル、メルに負けず劣らずぐいぐい行くタイプだから」
「そ、それは…僕は苦手なタイプかもしれない」
「そんなー!」
「まあ、とにかく行こう。日が暮れたら歩きにくい。」
「首都なら大丈夫だと思うけど。」
「!!そ、そうか…灯り、いっぱいあるもんな。」
「雨彦の故郷、よっぽど田舎だったんだね!」
にっこり笑いながらメルが言う。悪意は全く無いのだ。
「うるさいな!ほら、行くぞ。」
またも田舎者が露呈した僕は恥ずかしくなり、少し速足で歩いた。
…晴希に、友達に会いたい。一日も早く。そのためにも僕たちは、進まなければ。
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夢を見た。満天の星空の中、澄んだ空気に一人たたずんでいたのは晴希だ。僕は声を掛けようと近付いた。が、声が出ない。晴希にどんどん近付く。僕の頬に雨粒があたる。雨粒?晴れているのに?
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