第2話:聖なる竹林
歴戦のクヴァールには一切の油断がなかった。
聖なる竹林を護る役目にも心から誇りを持っていた。
だから日々己を高め、魔獣から母竹を護る方法を考えていた。
こういう状況も想定しており、その為の武器も用意してあった。
「ギャフン!」
少し不格好なネズミ、そんな姿をした魔獣が五頭、母竹に殺到していた。
まだ育ち切っていない母竹も数多くあるのだが、五頭の魔獣は誕生寸前の母竹の神気に惹かれ、先を争っていた。
その頭部が、いきなり弾け、脳漿を聖なる竹林に撒き散らされた。
脳漿の一部は、母竹にまでべったりとかかったが、直ぐに神気によって浄化され、まだ育ち切っていない母竹の栄養となった。
「「ギャフン!」」
クヴァールは、小指の先ほどの真銀製の球を指で弾いていた。
これがクヴァールの隠し武器で、聖なる竹林を護る切札だ。
魔境に近い開拓村では、どうしても魔獣の襲撃が頻繁になる。
貧しい開拓村では、次代を担う子供が生まれる大切な聖なる竹林とはいえ、腕利きの護衛を雇う余裕などない。
村人が交代で自警団を結成するのが精々だった。
「「ギャフン!」」
全部で五頭、クヴァールは瞬く間に狡猾なネズミ魔獣を屠った。
母竹に宿る子供達のために、本来は両親が母竹に栄養を与える。
だが、頻繁に魔獣に襲われる魔境近くの村では、自警団に労力を取られてしまうので、狩りや農作業に使える時間が減ってしまう。
その影響だろうか、五頭のネズミ魔獣は見る見るうちに吸収されていった。
「おお、無事だ、子供は無事だ!
ありがとうございます、ありがとうございます、ありがとうございます!」
男しかいないこの国では、性癖をタチとネコに分ける事などできない。
子供の両親であろう二人の男が、その場で土下座しかねない勢いで頭を下げる。
二人とも多少はケガをしているようだが、クヴァールの指示に従い、無理な迎撃はしなかったのだろう。
クヴァールが「子供が無事でも、親がいなければ子供は育たんぞ」と厳しく言ったので、死を賭してまでの迎撃を自重したのだ。
愛する男同士でも子供が授かる奇跡、それが聖なる竹林だ。
女同士なら、神に願って自分の身体に子供を授かることができる。
だが男の場合は、自分の身体に子供を宿すことができない。
それを哀れに思った神が、愛する男達に下さったのが、子供が宿り育つ母竹だ。
最初は一組の男同士に授かった奇跡だが、徐々に数が増えた。
だが、あまりにも母竹に神の力に満ちていた事で、魔獣を呼び母竹wp喰われてしまう事が頻発したため、愛し合う男達が集まり村を造り、村の中心に母竹を集め、家々で囲って護るようになったのが、聖なる竹林の起源だ。
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