男性愛の結晶の護り手
克全
第1話:守護者
軽い眠りの中にいたクヴァールがゆっくりと目を覚ます。
頭も身体も完全に眠っていたわけではないので、何時でも万全で動ける。
ここで動けないように者に、大切な護りを任せるる事はない。
まだ少し遠いが、明らかに魔獣の気配がする。
しかもその魔獣の気配が桁外れに大きい。
外周部を護っている者達では、とても撃退できそうにない個体だ。
「ギャアァアアオオオオオ!」
魔獣が大好物の香りに食欲を刺激されたのだろう。
飢えの気配が混じった雄叫びを上げる。
クヴァールは巨大なハルバートを片手で軽々と持ち上げ、何時でも魔獣を迎え討てるようにしたが、その場からは一歩も動かない。
クヴァールが母なる竹林を出て迎撃すれば、自警団の連中が傷つき殺される事はないのだが、それでは万が一の時に大切な母竹が喰われてしまう。
「ギャアァアアオオオオオ!」
また強大な魔獣が飢えに耐えかねて雄叫びを上げる。
こいつの気配があまりに強烈なため、弱い魔獣の気配を見逃す可能性がある。
弱いと言っても魔獣は魔獣だ。
気配は薄いが足の速い魔獣がいれば、クヴァールが母なる竹林を出たスキに、子供の宿る母竹を喰ってしまうかもしれない。
「ギャアァアアオオオオオ!」
二〇〇センチを越える巨体のクヴァールだが、その身体を超える巨大な二股の尻尾を持った虎型の魔獣が、一直線に一番育った母竹に向かってくる!
もう母竹がはじけて中の子供が生まれる寸前だから、一番生命力に満ちている。
愛し合う男同士に、神の世界から人の世界に下される、もっとも神気に満ちた状態の新生児、それを喰って更に強大な力を手に入れようというのだろう。
根源的な飢えに満ちた魔獣の目は、狂気さえ孕んでいた。
「ギャアァアアオオオオオ!」
魔獣にとっては、クヴァールは己を飢えを満たす邪魔をするモノでしかない。
これほどの力に満ちた魔獣から見れば、人間など虫けら同然だ。
普段なら永遠に癒される事のない飢えをしのぐため、獲物として喰らうのだろうが、すぐ近くに極上の新生児がいるのだ。
不味い人間に喰らいつく気にもならないのだろう。
一気に爪でクヴァールを切り裂こうとした。
「ギャフン!」
魔獣はクヴァールに騙されていた。
クヴァールが自分の魔力を一切身体の外に漏らさなかったので、魔力のない人間だと思い込んでいたのだ。
強力な魔獣に対抗できる唯一の存在、それが魔力だった。
その魔力を真銀のハルバートに流したクヴァールが、たった一撃で二股虎の心臓を刺し貫いたのだ!
「キュルルルルッル」
その瞬間、狡猾な魔獣が素早い動きで反対側から侵入し、新生児が生まれる寸前の母竹を喰らおうとした!
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