第17話 少女、冒険者になる

 ここはとある町。

 どこにでもあるような、ごく普通の町。

 そんな町の冒険者ギルドで、今日新しく冒険者になろうとする一人の女性がいた。


「冒険者登録がしたい」


 血のような赤い髪と赤い目を持ち、そこらの男と比べても遜色ないほどの背丈、町を歩けばそこらの人間が振り返るほどに美しい顔立の女性だった。

 身体も、女性的な特徴には乏しいものの、よく引き締まっていて無駄な肉はどこにもついていなさそうだと思わせる体つきをしていた。


 ギルドの受付嬢は、周りにいた冒険者たちと一緒に見惚れるようにしていたが、すぐに正気に戻ると受付としての仕事を果たすよう動き始めた。


「冒険者登録ですね! お名前と年齢、得意なことをこちらの紙にお書きください! 代筆が必要でしたら、言って下さったら代筆いたします」


「代筆はいらない」


 その女性は端的に言葉を返すと、渡された紙にさっさと情報を書き始めた。

 数分もしないうちに情報を書き終えると、すぐに受付嬢に紙を渡した。


「はい、確認させていただきますね。……えっと、アンジュさん、17歳ですね。得意なことは……特に無し、ですか? 何かこう、冒険者をやっていくうえで主武器になるようなものとか、そう言ったものはあります?」


「主武器はその時々で変えていくつもりだけど……それなら、剣と魔術で」


「分かりました、登録自体は今の情報を冒険者証に書いて、ギルドで登録するだけです。次に、冒険者についての説明は必要ですか?」


「お願い」


「はい、それでは説明させていただきますね。まず、冒険者はⅩランクからⅠランクまで、十段階になっています。ランクが上がるごとに数字が小さくなっていって、Ⅰランクが冒険者の頂点となっております。アンジュさんは登録したばかりですので、Ⅹランクからのスタートですね」


「ギルドで受けられる依頼にもそれぞれランクがございまして、自分のランクと同じ、もしくは一つ上の依頼までしか受けられません。自分のランクよりも下のランクのクエストは基本的には受けられなくなっているのでお気をつけください。また、依頼としては受けることは出来ませんが、魔物の素材や採取してきた薬草だったりはギルドで買い取りをすることは出来るので、是非ともお持ちより下さい」


「次に、魔物の等級についてですね。魔物にはそれぞれ等級がございます。こちらも十段階に分かれていて、ⅩからⅠまでございます。基本的には、魔物の等級で依頼のランクが決まります。冒険者のランクに関しても、倒せる魔物の等級でその冒険者のランクが大体決まりますね」


「魔物の等級の詳しい内容については、ギルドに併設されている書庫で閲覧できますが、ざっくりとお伝えすると、Ⅹは適当な武器を持っていれば倒せる、Ⅸは戦闘職の人間が安全に倒せる、Ⅷはある程度の訓練を積んだ人間であれば、適切な武装を持ってかかれば倒せる、Ⅶは訓練を積んだ戦闘職の人間が辛うじて倒せる、Ⅵは普通の戦闘職の人間が五人集まれば倒せる、Ⅴは訓練を積んだ戦闘職の人間が五人がかりで辛うじて倒せる、Ⅳは英雄や勇者と呼ばれるような、才気に溢れる人間が何とか一人で倒せる、Ⅲは英雄、勇者と呼ばれる人間が豊富な支援を受けたうえで辛うじて倒せる、Ⅱは英雄や勇者が策にはめて、複数人でかかってようやく相討ちをとれるかも、Ⅰは実質的に人間では倒せないと思われる存在のためにある等級になります。とはいっても、冒険者ランクについては順に昇級していきますので、一足跳びに昇級することは基本的にはありません」


「ギルドの設備に関してですが、併設されている酒場、訓練場、書庫に関しては冒険者証を呈示して頂ければ自由に使っても大丈夫です。酒場での食事も冒険者証の方で登録されて依頼料から引いて支払いとするので、自由に食べても大丈夫です。ただし、冒険者証を呈示されなかった場合は現金でお支払いしてください。その他のギルド内の施設は、職員専用の施設ですので、こちらから指示がない限りは立ち入らないようにお願いします。……説明に関しては以上になります。また気になることがあったら、その都度聞いて下さい。申し遅れました、私、これからアンジュさんの担当をさせて頂く、マリーです、宜しくお願いします!」


 少し長い説明ではあったが、赤髪の女性、アンジュは聞き漏らすことなく説明を全て記憶した。

 そして、最後に言われた一言に少し気になることがあったので早速マリーに質問をした。


「冒険者ごとに担当につくの? それって担当以外では依頼を受けれないってこと?」


「新しく冒険者となる方には必ず担当の受付が付きます、これは最初の頃に分からないことを聞きやすくするためや、担当がつくことで適正な依頼を割り振るための処置になります。私以外の受付だと適正な依頼を割り振れない可能性があるので、出来るだけ私のところに来てくれると嬉しいですね。あと、高ランクになってくると担当がいたほうが面倒が無くなると言いますか……。高ランク冒険者ともなると顔と名前が売れてくるので、それによる面倒をこちらで対処しやすくなるので、担当がついていることが多いです。中には、担当を決められることが嫌だという事で担当受付を決めずに活動する方もいらっしゃいますけどね」


「なるほど、ありがとう。それで、早速依頼を受けていきたいんだけど、何かある?」


「初めての依頼ですので、この辺りはどうですか? ゴブリン駆除や薬草採取とかは、初依頼でしたらおすすめです。付近の環境の確認も兼ねて依頼を受けられるので、この辺りで冒険者をやっていくなら損は無いと思いますよ」


「じゃあ、ゴブリン駆除にしておく。色々とありがとう」


「はい、それでは承りました! 気をつけて行ってらっしゃい!」


 そうしてアンジュは、冒険者として初めての依頼を受けてギルドを出ていくのだった。



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 今回は冒険者についての説明回です。

 正直そこまで重要な内容では無いので、軽く読み飛ばしてもらって大丈夫です。

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