第63話 [見通せ。そして穿て]

『我らを』

『舐めるな!』

『喰らい』

『尽くす!!』


 四方八方から声が聞こえてくるが、俺は耳を傾けず、ただ瞳に映ったことだけを信じ続け、姉ちゃんに合図をする。


「4時・a3。10時・f5。6時・d4。7時・h1」

「了〜解っ!!」


 ――ドンドンドンドンッ!!


 四発、姉ちゃんは銃弾を放ち、全弾トマトが寸前まで迫ってくる前に絶命させる。


 俺が送っている合図は、〝アナログ時計〟と〝チェスの盤面〟を使っている。


 時計はまぁ……わかるだろ。

 『○時の方角に敵』とか言うアレ。自分の真正面を12時として、真後ろを6時。右3時で左9時……と見る方法だ……。


 二つ目のチェスも……まぁ簡単なもん。

 時計の方法で方角を決めたら、その向いている面を上から見たチェスの盤面とする。チェスの駒を置く場所を敵がいる場所とし、そこを伝える……。


「ほんと、私じゃなかったらこんなのできないわよ?」

「自画自賛……。ま、事実だしいっか……」


 真っ暗闇の空間にたった一つだけギラギラと煌めく紅と、何十発とある銃口をから発せられる光。

 お互いに信頼しきってなかったらできない芸当だろうな……。



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

閉魔トマト



体力/52→30


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



 体力もかなり削られてきたらしい。


『ウガガガ……!』

『なぜ……なぜわかる!』

『その眼が原因か……!』

『だったら潰す!!』

『『『『『【発光】!!!!』』』』』


 カッとトマトのみが金色に発光するが、俺の右目に光の目くらましは効かない。

 なぜなら元々見えていないから……。見ているのは光からの色彩ではなく、空気の流れなどのモノクロ世界。


 姉ちゃんはもちろん目を瞑ったが……。


「……一瞬だったけど……俺の助けはもういらないよね……」

「当たり前よ! 一瞬だったけど……位置は全部把握したわ!!」


 姉ちゃんは目を閉じながら、弾倉をリロードして全弾一気に放つ。


 一寸の迷い無く、ただ淡々と全7発を放ってはリロードし、放ってはリロードしを繰り返す。

 響き重なる銃声と叫声で、耳を傾けて欠伸をついた。


『グァァアァアァ〜〜ッッ!!! 我が……我が弟と妹たちが……よくもしてくれたな侵入者どもォオ!!!!』

「ん……」


 左目が慣れて開けると、真上から怒号が飛んできている。

 見上げれば、今までのと比べると比にならないくらいの大きさのトマトが山でも喰らうかのような口を開けて降りかかってきていた。


「く、クレハ!? あれは無理そうなんだけど!!」

「うーん……万事休す……?」


《――魔法スキル無効化空間・停止しました》


 …………なんというご都合展開。

 はぁ……。ま、これ終わったら一休みできるし、あとひと頑張りだなぁ……。


 クッションから立ち上がり、右手を銃の形にして巨大トマトに向ける。


「……【全魔力解放フル・リリース】」


 バチッと勢いよく体から紅の稲妻が溢れ出し、白髪に紅のメッシュがかかる。


「……【べに――」

『ヴヴヴヴヴヴ!!』

「――いな――」

『グガァアアアアアアーーッッ!!!!』

「――ずま】……!!!」


 ……耳鳴りがした。

 刹那、鼓膜が悲鳴をあげるくらいの轟音が響き渡る。


 トマトは絶叫すらあげることができずに絶命し、天井から真っ赤な雨がザーザーと降り始めた。


「あ、あんた……とんでもない力ね……。ってかトマトの汁でベタベタする!」

「…………つかれた」


 バタッとクッションに倒れこむと同時に、俺の意識は深いところへ向かったのであった……。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


敵が叫んでる時、こっちが淡々と技名唱えてるの好き。あと真っ赤な雨浴びてる描写も好きです。


ちなみに次話何にも書いてないからやべぇぜ!!どうするんだぜ!?

助けてくれぜ(懇願)

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