第54話 [半植物人間]
「貴様成敗してくれるッッ!!!!」
そう言って勢いよく立ち上がると、ずんずんと俺の方に近づいてきた。
「ま、待て! 紅羽は正当防衛をしたまでだ……だから、悪い奴らはあの覆面の奴らだ! ……これ以上ビクビクしてたら格好悪いしよぉ……!」
「優流……」
周囲には騒ぎを聞きつけた仲間の強盗たちが銃口を向けている中、優流は俺の前に出て桜丸とやらを静止させた。
惚れそうだぜ。……まぁそんな時は来ないだろうけどな……。
「ふむ……確かにそうだな。では彼奴ら全員を成敗致すか」
くるっと踵を返し、強盗たちの方にテクテクと歩いていく。
「ちょ、ちょっとあれ止めなきゃいけないんじゃない!?」
「ふふ〜ん……大丈夫よ藍。桜丸ちゃんは、大丈夫」
焦っている姉ちゃんとは対極に、落ち着いた様子で傍観する母さん。
母よ、少しは動け。
「桜丸ちゃんはねぇ……紅羽とか、色葉ちゃんとか……そういう〝特異体質〟の類だからねぇ……。
……色々調べてもらったけど、彼の体には植物が共生してる。言ってみればまぁ……〝半植物人間〟……みたいな」
桜丸は自分の右腕での包帯を外し、それを露わにさせる。
腕……ってか、あれ木の幹だな……。真っ黒だけど。
「武蔵野小路桜丸、参る!」
腕をうねうねと動かし、木刀らしき物を生成していた。
……あの腕、手が届かないところにあるリモコンとかとるのに便利そう。俺も欲しい、切実に。
「はっ!!」
三人いる中の一人に一瞬で飛びかかり、木刀で斬り伏せて気絶させていた。
「く……! 撃っちまえ!」
「おう!!」
――ドンッドンッドンドンッ!!
「はむっ! あむっ、んむっ!! う〜む……あまり美味くはない……」
「………食べてる」
弾丸を口で受け止め、全部咀嚼して飲み込んでる……。化け物か、こいつ。……ん? なんかブーメランが。
「こんなものか……まぁ良い。ならば、後は任せるぞ――〝
木の腕は一気に肥大化して、二人の強盗を絡め取って無力化させた。ミシミシという音と文字に書き写せない悲鳴を漏らす声が聞こえてくる。
……なんか、恍惚とした顔で舌なめずりしてる……。
もしかして人間も食べようとしてんのか……? 流石にやばい気が……。
「いただきま――」
「――……桜丸ちゃん、それはダ〜メ」
母さんが懐からなぜか水鉄砲を取り出し、木に向かって噴射していた。
一瞬何してんだと思ったのだが、その水に触れた途端に木は悲鳴を上げてもがき苦しむかのような動きをし始める。
「ぐぅっ……! な、何をした……!!」
「君の体の植物のサンプルを仕事仲間が研究してね〜……作ってくれてたんだ。……〝除木剤〟を、ね……」
「ぐぬぬぅ……!」
「……ま、殺すことはできないけど、苦しませることはできる……」
「すごい……って思ったけど……母さんの仕事仲間がすごいね……」
「我が息子、そこは『ママすごい』って素直に言うのが親孝行だと思うわ……」
本当のことを言ったまでだ。
まぁ、母さんがいなかったら目の前で特殊なカニバリズマーの生態を見せつけられることになってそうだったから……よかったよかった。
…………救いようがない優流は、果たしてこういう性癖を持ってるのかな……。
「……なぁ紅羽、お前、今何思った」
「…………。別に。眠いなっ、って、思た、よ?」
「なんかカタコトじゃねぇか。ぜってぇなんか変なこと考えてるよなぁ……!!」
無駄に察しがいいな……優流……。
ほんと、無駄に。
色々あったが、なんとか事なきを得たイベントだった……。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
大罪人の共通点はもうお分かりですねッ。
桜丸くんは『白桜』っていう黒い幹に白い花の桜と共生関係を結んでいます。髪についてる桜の花、実はあれついてるんじゃなくて、生えてるんだよね。
なんで共生してるかはまぁおいおいわかります。
そして書き溜めてた分が無くなって大ピンチだぁあああああ!!!!!!!
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