第52話 [ハプニングとかいう面倒事。嫌い]

 やってきたのは家から一番近いファミレスだ。

 それなりに混んでいるが、ちょうど空いている席があったらしいので、疲労困憊しながら俺はその席に向かった。


「ではごゆっくり!」


 ファミレスとかで働いてる人って元気だよなー……。いや、疲れてても元気に見せてるのか。

 俺が働いてたらクレーム殺到するだろうなぁ……。


「はむ……うむっ……もぐもぐ……。うむ、美味!」

「…………」


 隣の席の人、とんでもない量の食べ物を机の上に置いてる。しかもそれをノンストップで胃の中に流し込んでる……。

 チラッとその人のことを見てみた。


 見た目はお世辞にも今風とはいえない、古風なものだ。侍のような着物に身を包んでおり、右腕には包帯がぐるぐる巻きにされている。

 真っ黒な髪をポニーテールにしており、頭には真っ白な桜の花が咲く枝が二本、ツノのように生えている。そして、右目は黒、左目は白というオッドアイを持っていた。


「……姉ちゃん」

「紅羽、目を合わせちゃダメ。あれは多分見たらダメなタイプよ。多分」

「……そうかなぁ……? いや、でもそっちじゃなくてさ……」


 ステーキにハンバーグ、スパゲッティにアイスクリームなどなどの和洋様々な食べ物を食べる侍(?)の向かい側に、見慣れた顔がいた。


「桜丸ちゃんさぁ〜……ちょっと食べすぎじゃない……? ま、止めるのめんどいからいいけど……」

「…………母さん」

「ん〜……? あれ、みんないる……」


 ポテトを口に咥えている母さんの姿があった。


「お母さん? そっちの人が紅羽に連絡してた仕事の人?」

「んぁー……まぁそうね。……面倒だから、はいっ、自分で自己紹介」

「承知した! それがし武蔵野小路むさしのこうじ桜丸さくらまる! 侍である!!」


 ……なるほど、中二病のお方か……。

 コスプレっ娘ってわけか。まぁ……人の趣味にとやかく言うのはご法度だろうな。


「ちなみに……ちょーかわいいけど桜丸ちゃんは男だよ〜……」

「俺知ってるぜ! それ〝男の娘〟ってやつだ!!」


 思った以上に食いつきが良い優流。……まさか……お前のへきなのか……?


「なぁ律……優流のベッドの下見たことある……?」

「ある! お兄ちゃんは救いようがないよ!」

「おまっ! テメェ何言いやがる!? ってかいつ見たんだ律ゥーーッッ!!!」


 顔真っ赤にして涙目で慌てふためくの優流の姿……。

 愉快愉快(笑)。


「律……い、言うなよ? 絶対だからな!」

「あははっ! 愉快愉快☆」

「俺ん妹が悪役みたいなこと言ってる!」


 律……なんか俺に似てきてないか……? いや……もともとちょっと俺に似てたかな……。


「其方らは仲が良いのだな。見ていたら腹が減ってきた!」

「いや……どんな理由で腹空かせてんだ……」


 なかなかくせのあるキャラがまた出てきたなぁとボケーっと思っていると、突如として怒号が店内に響いてきた。


「テメェら動くなァ!!」

「こっちは拳銃持ってんだ……」

「大人しくしてねぇと撃つぞ!!」


 覆面をつけている謎の集団がレストランに侵入してきて、店内にいる客などの理解が追いついた途端、


「キャーー!!」

「ご、強盗!?」

「こ、こいつらもしかして銀行強盗したやつらか!!?」

「や、やばいじゃんか!!」


 阿鼻叫喚とはまさにこのこと。

 そして、また当たったようだ。


「…………はぁ。本当に……良い加減にしてほしい……」


 いつもこうなるんだ。

 面倒ごとがどんどん俺に引き寄せられてくる……!


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


……男の娘は僕が好きです。大好きですとも。


ちなみに優流はちょ〜っとだけね、特殊性癖です(暴露)。

ま、ご想像にお任せします☆


優流「も、もうやめてくれぇぇええ!!!!」

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