第44話:バトロワ⑥怠惰を極めし者




 俺は全身に力を込め続けて【紅稲妻】が解けないようにしていた。


 さっきは一瞬緩んでしまって危うく解けてしまうところだった…。



「“決着”かぁ…いいぜ!ここで俺の全てをぶつけてやらァ!!【全魔力解放フル・リリース】!!」


「熱っ…」



 そう言った途端、男の全身に纏わり付いている炎の威力が数倍になり、俺の皮膚が焼け焦げそうであった。


 この男が唱えた謎の言葉。

 俺にもワンチャンできるかもしれない…というかできなかったら負ける気がする。


 やってみるか



「【全魔力解放フル・リリース】……」



 そう唱えると俺の周りの地面に散らばっている石は宙に浮き、全身から紅稲妻が飛び出した。



「お、できた」


「テメェもそう来るか……いいぜぇ!上等だァァ!!」



 男が俺の方へ両手を向けると同時に、体にまとっていた炎がこちらに押し寄せてきた。

 俺も両手をかざし、体にまとっていた雷を炎にぶつけた。


 炎と雷がぶつかると同時に周囲の地面、建物などが溶けたり崩壊していた。



「オラァァァァ!!!」


「ぐ……ゔぅう!!」



 力は同格。ぶつかった時からどちらも動きがなかった。

 ただただ周りが崩壊して行くだけであった。



(くそ……どうする?どうすれば勝てる?このままじゃ魔力不足………って、あれ?)



 ここで紅羽のなかで疑問が生じた。



(なんで俺ってこんなに怒ってる……?別に苦労して手にした枕じゃないし……愛着はあったけどまた優流に取らせれば……———)



 俺は手をかざすのをやめた。

 その瞬間、雷はは無くなり、俺の体は黒い炎に包まれた。



「ワハハ!どうやら勝ったのは俺のようだなァァ!」



 男はそう言っていたが膝を地面について息を切らしていた。



「………」


「おいおい……冗談だろ……?」



 俺は無言で土煙からスタスタと歩いて出てきた。



「さっきの【全魔力解放フル・リリース】でお互い全魔力はねぇはずだ……ここは男らしく殴り合いと———」


「……なんか……ごめんね」



 男が目をキラキラとさせてそう言っていたが、俺はすーんとした顔で一言そう謝った。



「ん?え?どういうことだよ!」


「いや……なんっていうか……はぁ、もう眠いしめんどくさいや……」


「あぁん!?」



 俺はクッションを取り出し、地面に置いてそのままクッションに倒れ込み、そして———



「———zzz……」



 寝始めた。


 さっきまで俺じゃなかったみたいだ。

 うんうん、やっぱこれこれ。睡眠最高。

 復讐とかめんどくさいや。



「てんめぇ……舐めてんじゃ———あっ」



 男は紅羽の元に走って文句を言おうとしていたが、石につまずいて転んでしまった。

 そしてポリゴン状になり、死んだ。


 そして転んだ時に跳ねた石が紅羽の元へ飛んでいき、頭に当たった。



「んん……いたぁい……」



 それを遺言とし、紅羽も死んだ。



『バ…バトルロワイヤル終了ーー!!優勝は……“みなみん”です!!ってなんなんだ今のはぁぁ!?』


「えっ?えっ??わ、私!?」



 なんと優勝者は紅羽ではなく、色欲の大罪スキルを持った美波塚 色葉みなみずか いろはであった。


 彼女は極力というか、一切戦闘をせず、敵対しても半泣きになることで相手が自決していったのだ。



『なんなんだよ最後の二人!!めっちゃあっけなかったんですけどぉ!?』


『でも逆に面白かったですよね〜!っと、ゆーーことで!もう今から表彰式しちゃいまーーす!!」



〜〜



「ということで!第三位から第一位まで発表するぜ!」


「他は発表しないの〜?」


「んぁー、それはめんど…ゲフンゲフン!色々と都合があるんだ!」



 ライとラックは場所を移動し、表彰台の前で話していた。



「まず第三位!ドゥルドゥルドゥルドゥル〜ジャンッ!“イラ”選手でーーす!!」



 そう言った瞬間、三位の場所に紅羽と死闘を交わした男が煙と同時に現れた。



「ではでは今の感想をどぞっ!」


「……にくわねぇ……」


「んぇ?」


「気にくわねェェェ!!最後のあれなんなんだよ!!舐めた真似しやがってくそ野郎!!出てきやがれェェ!!ぶっ殺してやる!!」


「ど、どーどー。落ち着きなさぁい?」



 足踏みをして表彰台を壊そうとしていたのでライが静止させた。



「えー……今から呼ぶのはなんだか危険な気がしますが、行きましょう!続いて第二位は〜〜〜“クレハ”選手!!」


「すー……すー……」



 続いて紅羽が第二位の場所に煙と同時に現れた。

 だがしかし眠っていた。



「あ、あの…もしもーし、聞こえますかー?」


「ずー……ふがっ……ずー……」


「だめだこれ」



 紅羽は一向に起きる気配がなかった。



「おぉい!さっきはよくも———」


「くっ、このままでは俺たちまで被害が……悪いけどイラ選手は一旦退場!」



 すると男はポフンっという音同時に消えた。



「ふぃ〜、助かった助かった。さて、まあこの人起きないしもう一位行っちゃおっか」


「了解!第……一位は!」


「「ジャラジャラジャラジャラジャン!“みなみん”選手でーーす!!」」


「え、えっと……その……」



 煙と同時に色葉が出てきた。



「さてさて!それじゃこのバトルロワイヤル、どうでした?」


「え、その……怖かったん、ですけど、皆さんとても優しくて…その、楽しかったでしゅ!ぁ…噛んじゃった……」



 色葉の顔はみるみる赤くなっていったが、両手で顔を抑えた。



「か、可愛いッ!なるほど、可愛いは正義、これ絶対ね」


「色葉ちゃん可愛い〜!あとで私と一緒にお茶でもしない〜?」


「俺より先にナンパをすなっ!」


「あ痛っ!!」



 ライがラックにチョップをした。



「ゔー……まあいいでしょう。一位から十位の方はその順位に合った景品が選べるから是非もらっといてね〜」


「そしてそして!第二回のイベントも近日発表しちゃいマーース!」


「「楽しみにしていてねっ!!」」


「ぐー……」



 堂々と後ろで眠る紅羽であった。


 だが無事(?)に第一回のイベント、バトルロワイヤルは幕を閉じた。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


はいっ!ということでここで一区切り!



【お知らせ】

この『めんどくさがり屋のVRMMO物語』を大幅修正したいと思っています。

まあ大幅修正といっても名前とか設定、話の内容をちょっとばかしいじるだけですので安心してください

修正が完了した話はタイトルを“第○話:○○”だったものを“第○話 [○○]”という形にします。

わかりにくいかな……?



修正した点などは次の回で全部書きます。


多分時間かかっちゃいます……(^^;)



ですがこれからもめんどくさがり屋のVRMMO物語をよろしくお願いします!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る