第35話:睡眠スポットと謎の声




 目が覚めたのは夜の八時。


 すでに優流たちは帰っており、リビングからは美味しそうな匂いがしていた。



「今リビングへ行くか……もう少し睡眠をとるか……悩みどころだな……」


「じゃないわよ!ほら、さっさと来なさい!!」


「あーれー………」



 姉ちゃんに掴まれ、そのまま引きずられながらリビングへと向かった。


 今日の夜ご飯は回鍋肉でした。



〜〜



「あー……ご飯食べたら眠くなってきた……」



 ご飯食べた後は眠くなるのは必然的。

 逆に俺が眠くならなかったらなんらかの病気の可能性有り…というか確定演出。



「あ、寝るなら長いほうがいいし、ゲームの中で寝よう…!ナイスアイデア」



 俺は早速ゲームの用意をした。


 勉強はしない。というかしなくても点数が勝手に取れてしまう。


 一度教科書などを見るだけで大体理解できるし、基本的に平均点以上取れるから姉ちゃんも何も言えないのだ。



「起動」



〜〜



 安定の噴水からスタート。


 どうせ寝るなら騒音の少ない快適な環境で眠りにつきたきところだが……。



「いい睡眠スポットがまだ見つかっていない……」



 前はやっと最高の睡眠スポットに辿り着いたと思っていたのに……時間制限があるとか聞いていない……聞こうともしてなかったな……。



「………森で探索するか………」



 俺は安眠を求め、森へと向かった。


 当然クッションに乗りながら足を一歩も動かさずに。

 歩くのめんどくさいんだよなぁ……学校もこれで行きたいけどスキル使えないし……。


 一番現実的なものは俺の家から学校までベルトコンベアを繋ぐ…!


 ………今度校長に言ってみるか。



〜〜



「森の入り口までついた……けど、人多すぎ……」



 森は人で溢れかえっていた。




「うおーー!!大会出場するから今のうちにレベル上げだああ!!」

「おい!そっちに敵行ったぞ!!」

「邪魔だ魔物ぉ、死に晒せぇ」

「うあああああ!!母さああん!!」

「おめっ……敵じゃなくてなんで木に足の小指ぶつけてダメージ食らってんだ!」

「お、りんごある。もりもり食べるンゴ。ぐぁああ!毒入りだああああ!!!」

「りんごで死んだ!」

「この人でなしっ!!」

「りんごは果物だよ」



「なんか……頭おかしいやつらばかりだな……」



 俺は森を諦め、すぐ後ろの始まりの草原へと帰った。



 草原を探索しているとなかなか良さげな場所があった。


 そこは丘となっており、頂上には一本の巨大な木が生えていた。

 周りに木は全くなかったが、そこだけ生えていた。



「いい感じだな……風通り…よし。日陰よし。適度な木漏れ日よし…ここを俺のお気に入りスポット第一号に決定だな…」



 俺は早速木にもたれかかり、そのまま座り、眠りにつこうとしたが……。



『あなたはだぁれ?』


「んぁ……?」



 突然声が聞こえてきた。



「俺の名は………zzzz」



 残念ながら俺の記憶はここで終了。

 誰だかすまんが起きてからでよろしく。



〜〜



『あれ!?みんなどうしよう寝ちゃったよぅ…』


『あ?マジかヨ。でもなんでここに人間が来てんダァ?普通来れないように神竜様が結界張ってるはずだゼ』


『きっと“”なんじゃあないかしら〜?』



 紅羽の周りには赤、青、緑の約十五センチほどの羽の生えた生命体が飛び回っていた。



『うん!この人間さんからは器のにおいがするよ!』


『ほーン。確かに強そうだナ』


『じゃああれを授けなければならないですね〜』



 この三匹は木の中から一つの楕円形のものを取り出した。


 それは赤い色をし、白で模様が描かれている卵であった。



『それじゃあ私たちがここを隠す必要ないね!』


『今渡したことで結界もなくなんだロ』


『じゃあおさらばしましょう〜』



『じゃあ人間さん!聞いてるかわからないけど大事に育ててねー』


『ちゃんと世話すんだゾ』


『任せましたわよ〜』



「———zzzz」



 残念ながら紅羽は全く聞いていなかった。



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


俺もベントコンベアで登校してぇ…。


今度校長に言ってみるか!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る