第8話 [グランドスケープゴート]
「ふぅー…結構レベル上がってきたわね…」
「すー……すー……」
藍は寝ている紅羽とは正反対に、マグロのように動き続けていた。
「ここからはちょっと手分けして冒険……って寝てるか…フレンドのところにメッセージが…あったわ」
「これでよしっ、と!」
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「……うーん……ん? なんかある……」
寝ぼけ眼に映るのは、半透明の板に書かれてあったメッセージだった。
《INA:手分けしてなんか探すわよ!》
「……んー、いい睡眠スポット探すか……」
運動は嫌いだ。だがちょっとした旅的なものはいい。いい睡眠スポットが見つかるから。
そういうことで、移動しますか。浮いて……ね。
そして数分探索を続けていると、黒い丘があった。周りは緑の草なのに、そこだけが不自然に真っ黒になっていた……。
「変な丘だなぁ。丘……だよな……?」
《裏ボスが出現! 討伐せよ!》
「……?」
【悲報】適当にぶらついてたらボス出てきた件。
『グェェェエエ!!!』
「うわっ、うっさ……」
そこには漆黒の毛を持ち、山の如く大きく、紅蓮の角と眼を持ち、響く音を鳴らす巨大なヤギがいた。
これがボスとやらか? とりま鑑定してみるか。
「【鑑定】」
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
【裏ボス】グランドスケープゴート
(種族:罪被山羊)
体力/104
魔力/29
攻撃力/12
防御力/87
速さ /6
幸運/-21
[スキル]
【贖罪】【紅稲妻】
説明:生贄にされ、怨みによりこの世へ舞い戻ってきたヤギ。速さはないが、防御力がピカイチ。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ボスだけど、裏……? 幸運なのか不幸なのか、いや、不幸だ。
まぁここでの俺の答えは決まっている……。棄権だ。面倒この上ないからな。
「えぇーと、棄権、あったが…、『棄権するとログインするまでインターバルが用いられる』……?」
は……? まじか。
まだ寝たりないんだが??
『グァァァァアア!!』
裏ボスは雄叫びを上げ、こちらはと突進してきた。
「おっと……速さはないから余裕だな……」
『ガァァァァ!!』
バチッ……バチチ……!
「ん……? 角から赤い電気……?」
『グェェェェェ!!』
突如として紅の稲妻を角に纏わせ、こちらへと向かって撃ってきた。
「うわっと……危なっ。これが【紅稲妻】ってスキルか……。中々強力……地面に穴空いてるし」
ここで棄権してもいいが、そうすると今の今までの俺の頑張りが全て水の泡……。現実世界での睡眠時間よりもっと寝ていたい。
「今日の消費エネルギーに釣り合わない……。だったらあの野郎をやるしかない、かぁ……」
ここで倒して存分にだらけるしかない。
俺は寝ぼけ眼を擦り、半目だった紅の瞳を顕にする。
「さぁて……久々によく〝見て〟みますか…」
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
明日から平日なのでペースが下がります。
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