第5話 [何このだるい人……]

「おい、ちょっと起きろ」


 ……誰かが俺の心地いい睡眠を妨げ始める。俺は反射的に答えた。


「だる……むりぃ…」

「おい! いい加減にしやがれ!」


 目をぐしぐしと擦りながら、目の前の男に顔を向けたを


「……何ですか……。眠いんです寝たいんですけど……」

「お前、こんな堂々と寝るだなんてよぉ……なぁんか調子乗ってんじゃねぇだろうなぁ? あぁ?」


 モヒカン頭にパンクファッション……あれ? ここって世紀末だったっけ?


「またやってるぜ……あいつ」

「例の初心者狩か」

「誰かあいつに勝てるやついないのか?」

「なんせ俺たちはまだ始めたばっかだぜ、勝てねぇぜ」


 周りがヒソヒソと小声で話しをし始めていた。


「俺が調子乗る? ないですないです……なんせ眠いし……。ってか寝てたらダメ? ……よくわかんな……すー……」

「寝るな!」

「ん〜〜。だるい、無理」

「んだとてめぇ! 調子に乗りやがって……決闘だ!!」

「くぇmjp☆♪%〒」

「寝ながら話すんじゃねぇ! てめぇ……じゃあ、決闘しないと永遠に耳元で叫び続けるぞ」


 なんて嫌がらなんだ。俺の最高の睡眠を邪魔するとは……。


「ええ、何この人……だるい……。まあいいや、これとっとと終わらせて寝よ」


 再びあの半透明の板が目の前に現れる。そこにはこんなことが書かれてあった。


《ガットさんから決闘の申し出がありました。引き受けますか? はい/いいえ》


「ふぁああ、『はい』で……」

《では勝者が貰う物、契約を決めてください》


 貰うもの? 俺が欲しいものは安心安全な熟睡だな。そのためには、こいつがいらない。


「んじゃァ俺は所持品全てでいいぜ!」

「じゃあ俺は……今後一切俺に関わるな……」

《承諾しました。三十秒後に決闘を開始します》


 互いに少し距離を取る。相手はでかい剣を構えているが、俺はクッションを抱きながらフラフラと揺れている。


「ちなみに俺ァβ版からやってっからお前に勝ち目はねぇんだよ!」

「さいですか……よくわかんない」


 そうこう言っているうちにカウントダウンが始まる。


《3……2……1……スタート!》

「うぉぉぉぉお!!」


 スタートの合図とともに、男はでかい剣を構えながら走り出した。俺は手をかざしてスキルの名を唱える。


「【念動力サイコキネシス】」

「ぐっ! くそっ、体が動かねぇ!?」

「潰せそうにない……じゃあ」


 男から剣を【念動力サイコキネシス】で奪い取り、それを操作して男をズバッと切る。


「ぐっ、がぁぁぁああ!!!」


《勝者:クレハ。勝利したことにより、掛け品、賠償金、経験値を獲得。レベルがアップしました》


よし……寝よう。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

基本的に時間があれば寝るんで、こいつ。

あれ?なんか頭にブーメランが突き刺さってる…。


怖っ。

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