知り合い

 スーパーで買い物を終えてから、おれ達は近くのファミレスで昼ご飯を食べることにした。

 中に入ると、週末ということもあってか、店内はそこそこ混んでいた。

 おれ達は店員さんに案内され、窓際の近くのテーブル席に座る。


「買い物も久しぶりだったけど、二人で外で外食ってのもこれまた久しぶりだね」


「たまには悪くないだろ。こういう時間も」


「まぁね」


 おれは返事をした後、ドリンクバーで取ってきたオレンジジュースの入ったコップに口をつける。


「それより、最近どうなんだ?」


「どうって?」


「学校のこととか。最近、あまり話出来てなかっただろ?」


「ああ、まぁそうだね」


 まるで親に聞かれるような質問だなと思ってしまう。まぁ兄貴が親代わりな部分もあったりはするけど。


「相変わらず、学校の勉強に付いていくのは大変だけど、それ以外は順調だよ」


「昔から勉強だけは苦手みたいだな。しかし、今は勉強だけが全ての社会じゃ無くなっているからな」


「国立の大学に行ってる兄貴に言われても説得力ないよ」


 言って、苦笑する。


「確かにそうかもしれないが、それはたまたま僕の得意だったのが、勉強だっただけって話だ」


「やっぱり勉強が得意だったから、起業したいとかって思うようになったの?」


「いや、それだけじゃない。僕は人の役に立つ仕事がしたいんだ」


「役に立つ……?」


 なんか兄貴にしてはアバウトな感じだな。

 しかし、人の役に立つって、どういうことなんだろうか。


「今の世の中にはまだまだ不自由な、不都合な部分が沢山ある。僕達の目に見えない部分もだ。そういう弊害を無くすような仕事をしたいんだ」


 はっきりとおれの目を見て、兄貴はそう言った。そこには確かな覚悟が現れているように見えた。


「相変わらず、すごい人間だよ。兄貴は」


 20のセリフとは思えないな。

 父さんじゃないけど、本当におれの兄貴か?って思ってしまう。


「すごいかどうかはやってみてからの話だな。言うだけなら誰にもできるからな」


 謙遜したように言う兄貴。

 そういうところがすごいって言ってるんだけどな。


「それより、帰ったら早速、料理の準備に取り掛かるからな。あまり食べ過ぎて、動けないなんてことはないようにしてくれよ」


「わかってるって」


 おれは苦笑いを浮かべた。


「お待たせしましたー」


 と、そのタイミングで注文した料理が運ばれてきた。


「あ……」


 おれは料理を運んできた店員さんを見て、思わず声をあげてしまった。

 おれと同じように店員さんも気づいたようで、軽く目で合図を送ってくる。


「なんだ、どうした?」


 去っていく店員さんをみながら、兄貴が聞いてくる。


「いや、なんでもないよ。ただ、知り合いだっただけで」


「ほお……?お前はこんなところにも女性の知り合いがいたのか」


 疑わしげにじろっと見てくる。

 その目がまるで何かを疑っているような感じがして、すごく嫌だ。


「いや、たまたまだって……」


 おれは居心地が悪くなって、それをかき消すように、おれは運ばれてきた料理にがっつくのだった。

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