カレー
翌日の土曜日。
朝の十時過ぎ。
「ふわーあ……」
おれは大きくあくびをしながら、部屋を出て、階段を降りていた。
週末はゆっくりできるからいいな……
それに今日は珍しく、穂花と一緒じゃないからな。今日は家でゆっくり過ごすとするか……
一日のスケジュールを考えながら、おれは洗面所で顔を洗った後、リビングへと入る。
そこにはソファに座り、携帯で何かを調べている兄貴がいた。
「おはよう」
「おはよう。もう起きてたんだ」
「まぁな。気になることがあって」
言いながら、携帯に目を落とす。
気になることか……
兄貴のことだから、くだらないことではなさそうだな。
そんなことを思いながら、おれはカップにインスタントコーヒーを注ぎ、口をつける。
「今日も出かけるのか?」
「ああ、いや、今日は穂花とは別なんだ。だから家にいるよ」
「ほお?珍しいな。ケンカでもしたんじゃないだろうな?」
「いや、そうじゃないよ。穂花が友達と遊ぶんだってさ」
「そうか。ならいいんだ」
今の言い方。兄貴なりにおれ達の事を応援してくれてるのかな。
「そういえば、父さんは?」
「まだ寝てるよ。久しぶりにゆっくり寝れるって昨日言ってたから、まだ寝るんじゃないか?」
「そうなんだ」
それだけ激務ってことだよな。
本当に尊敬するよ。
昨日、あんな感じだったけど……
「それより、今日暇なら少し付き合ってくれないか?」
「え、いいけど……」
兄貴から何処かに行こうなんて、珍し過ぎておれは返事をしつつ、かなり面食らってしまった。
二人で出かけるなんていつぶりだよ……?
「よかった。それじゃあ、準備ができたらまた声をかけてくれ」
「分かった……」
一体、どこに行くんだろうか……
おれは内心、少し不安を抱えていた。
♦︎
「なんだ、一体どこに行くのかと思ったら……」
おれは安堵の息を吐いた。
「なんだ、変な店にでも行くのかと思ってたのか?」
「いや、そうじゃないけどさ。兄貴とどこかに行くなんて、随分久しぶりだからさ。それにしても、まさかここに来るなんて思わなかったよ」
言って、おれは店外に掲げてある文字を見上げた。
おれ達が来たのは、近所のスーパーだった。
かなり意外な場所だった。
「昨日、父さんが帰ってきてから、手料理が食べたい食べたいとうるさくてな。しかし、僕もお前も大したもの作れないだろ?僕ももう大人になる歳になったし、少しくらい料理ができた方がいいかと思ってな」
「なるほど……」
じゃあ、今朝、リビングで調べていたのは大方、料理のレシピってことかな。
兄貴なりに責任を感じてたのかな。
「それでなんでおれを誘ったの?」
「そりゃ、もちろん、お前にも作れるようになってほしいからだよ。作れて損はないだろ?」
「ま、まぁ確かにそうだけど……」
料理かぁ……
やべぇ、全然やる気が起きない……
「とりあえず、今日は初心者にも作れると書かれていたカレーを作ってみようと思うんだ」
「り、了解……」
カレーか……
具材を切って、煮込む……とかだよな。
うん、カレーくらいならおれ達にも作れそうだ。それほど難しいものではなさそうだしな。
そうして、おれ達はスーパーで食材を調達していくのだった。
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