昼休み
待ちに待った昼休み。
授業が終わったと同時に、教室内がガヤガヤと騒ぎ出す。
学食を食べるために食堂へ行ったり、弁当を持って、違う場所に移動したりと、その動きは様々だった。
かくいうおれもイスから立ち上がり、穂花と共に教室から出ていく。穂花の両手には弁当箱が一つずつ握られている。
さて、今日のメニューは何かな。
おれは期待に胸を膨らませる。
言わなくてもわかると思うが、昼休みには毎日穂花の手作り弁当を食べている。
これがまた美味いのなんのって。
毎日、こんな美味しい弁当を食べられるなんて、おれはなんて幸せ者なんだろうか。
なんかバチが当たりそうだよ。
そんなことを思いながら、中庭へと向かう。
中庭は背の高い木がいくつかあり、その周りに花壇がある。校長先生の趣味らしく、落ち着いたこの空間で、昼休みを過ごす生徒も多かったりする。
おれ達はまだ空いていたベンチに座る。
「今日も愛情沢山込めたから、しっかり味わって食べてね……米粒の一つ一つが私だと思って……」
そう言って、穂花は弁当箱をおれに差し出してくる。
「逆に食べづらいわ」
この弁当箱に何粒、あると思ってんだ。
ツッコミつつ、弁当箱を受け取る。
そして、早速、蓋を開ける。
「おおお……相変わらず美味そうだ……」
蓋を開けるとそこには一口カツにきんぴらごぼう、卵焼きにほうれん草の胡麻和えという最高のラインナップが。
二段重ねになっている弁当箱の下の段にはぎっしりとご飯が詰め込まれており、上には昆布が少し乗っかっていた。
最高じゃないか、今日も。
「それじゃあ、早速……」
言って、手を合わせる。
「「いただきます」」
そうして、二人揃って弁当を食べ始めていく。
おれはまず、カツを箸で掴み、それを口に入れる。
「うん……!相変わらず、美味いな」
噛み締める度に旨味が口の中に広がっていく。そして、同時にご飯も口の中に運ぶ。
「ん、あ、あん……優君、いきなり、激し……!」
おれがご飯を口に運んだ瞬間、穂花はやけに色っぽい声で身悶えし始める。
「って、おい!!いきなり変な声出すな!」
周りが何事かと騒ぎ始めているじゃないか!
ああ、もうどこかに電話かけてる奴とかいるし!やめて、まだ未遂だから!!
「ん、ごめんね。優君がいきなりがっつくから」
「お前はいつから弁当と感覚をシンクロさせるようになったんだよ」
そもそも、弁当と感覚をシンクロってなんだよ。自分で言っておきながら、わけわからんわ。
と、おれがそんなことを思っていると。
「ん?」
ポケットに入れていた携帯が震える。
おれは弁当箱を横に置き、携帯を開く。
そこには満からのメッセージが来ていた。
「お前……昼休みになったからって、いきなり始めるなよ!」
と書かれていた。
何やら、盛大に勘違いしているようだ……
というか、もう満にまで広がったとか、この学校の情報伝達率、エグいな……
これは教室に戻ってから、とても大変なことになりそうだ……
おれはそのことを想像し、ため息を盛大に吐くのだった。
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