お風呂

「はぁ、美味かった……」


 一時間後。

 おれは腹一杯になり、幸せの余韻に包まれていた。今日の晩ご飯は寿司だった。

 たらふく食べることができて、大満足だった。ちょうど、寿司が食べたいと思っていた時だったので、相変わらず、兄貴は出前を頼むセンスがある。これ、褒めてんのかなって感じだけど。


「食べ終わったなら、テーブルの上を片付けておいてくれよ?」


 おれより、先に食べ終わっていた兄貴が一言言う。


「ああ、うん。わかってるよ」


「僕は少し勉強してくるから」


 そう言って、向かい合わせで座っていたテーブルイスから立ち上がり、リビングを出ていく兄貴。


 十分、頭が良いのに、何を勉強することがあるんだろうとおれは思ってしまう。

 まぁ、常にストイックなのが、兄貴らしいんだけど。

 全く、おれと違って、よくできた兄である。


「さてと、おれは穂花にビデオ電話するか……」


 そろそろ電話しないと突撃!隣の晩ご飯!をやってくる可能性があるからな。

 現に何回か来てるし。あのいつも冷静な兄貴が、かなり困惑してたからな。

 そのおれに対するラブっぷりに。


 その時のことを思い出しつつ、おれはテーブルを片付けた後、電話をかけた。

 何コールかした後、電話が繋がる。

 珍しく、取るのが遅かったな。

 いつもなら、1コールで取るのに。

 携帯握り締めて、待ってるのかなって思う。


「ん、あれ……?」


 電話は繋がったものの、画面には何も映らない。というか、白いモヤのようなものしか見えない。


 どこだ、ここ?


 おれが疑問に思っていると、ゆっくりと穂花が画面に現れたのだが。


「ぶっ……!」


 たまらず、吹いてしまう。


「あ、優君!やっほー」


「や、やっほーじゃないわ!なんで、そんなところに携帯持ち込んでんだよ!」


 おれは赤面する顔でツッコんだ。

 なんと、穂花は風呂場に携帯を持ち込んでいたのだ。

 今は、風呂に浸かっているようで、湯気のせいもあってか、穂花のその豊満な身体が全身、映っているわけではないが、それでも上半身のほとんどが見えてしまっている。

 最も、胸は風呂に浸かっているので、見えてはいない。少し惜しいと思ってしまったのは、ここだけの話だ。


「いやー、なんかゆっくりお風呂入りたいなぁとか思ってさ。もちろん、優君と一緒にね……」


 言いながら、わざとおれに見えるように胸の谷間を作って、見せてくる。


「……!」


 刺激の強すぎる光景におれはたまらず、ガン見してしまった。もっと、お願いします!!

 そんなことを思っていた。

 思春期の男の子ってツライ。


「うわー、優君、めっちゃ目、血走ってる」


 そして、ドン引きする穂花。


「そ、そっちが始めたんだろうが……」


「うん、まぁそっか」


「それより、携帯を風呂に落としたら大変だから、また後でかけるよ……」


 そう言って、おれは穂花の返事も聞かずに通話を終了した。


 あー、まじでビビった。

 ビビったっていうか、やばかった。その色々と。

 わかってはいたけど、穂花のスタイルの良さはやばいよな……

 もっと見たい。できれば、生で。

 そして、独り占めしたい。誰にも見せたくない。

 こう考える辺り、おれって束縛激しいのかな……?

 まぁ、それは穂花に限っての話だと思うが。


 108どころか1000くらいありそうな煩悩を抱えたまま、おれはリビングを出て、火照った顔のまま、自分の部屋へと向かうのだった。

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