第8話 離婚と心と身体の傷

「麻魅、私達、離婚する事にしたの。あなたは、どちらにつく?」


「………………」


「すぐに返事は無理だろうけど」

「どっちにもつかないよ」

「何言って……」

「そうだぞ!」


「二人にしてみれば私は邪魔でしょう? 相手いるんだし」

「……麻魅……」

「連れ子なんて邪魔なだけなんだから! うまくいくわけないじゃん! こっちから御断りだよ!」



私は家を飛び出した。



「麻魅っ!」





【離 婚】


その言葉が


私の頭に過る


愛し合って


好き合って


結婚したのに


どうして離婚なんてするのだろう?


大人には色々と事情があっても


子供には何の罪もない


子供を巻き込むのは


正直


いい迷惑なのだから ―――






「あー、飲み過ぎたかも?」



ドン

誰かが私にぶつかってきた。


ドサッと地面に転ぶ私。



「って! 何処見て歩いてんだよっ!」



しかし私は何の返事もせず、すぐに立ち上がりそのまま歩いて去り始める。



「………………」


「おいっ! ちょっとっ! 待てよっ!」



グイッと振り向かせる。



「何ですか?」

「あんたぶつかって来て詫びなしか?」

「酔っ払いのあんたからぶつかって来といて、あんたこそ謝るべきでしょう?」


「おいっ! 女っ! テメェ」


と、連れの人が私の胸倉を掴む。


「どう見たってフラッフラのフラフラじゃん!」

「何? この女、女子高生だからって……」



グイッと相手から掴まれた胸倉の手を捻り返した。



「いてて……」

「普通の女子高生と思わないで!」

「……ちょっと待てよ。お前……何処かで……」



酔っ払っている人が私の顔を見て何かに気付いた様子だ。



「あー……」



アゴをグイッと掴まれ、私から離れる。



「おいっ!」



もう一人の連れを呼びコソコソ話をしている。



私は何となく嫌な予感がし、もう一人の別の連れの捻り返している手をゆっくり離し、逃げる事にした。



「おいっ! 追えっ!」

「捕まえろ!」



グイッとすぐに腕を掴まれ捕まった。



「や、やだ離してっ!」



グイッと肩を抱き寄せられ、視界に入ったのはナイフだ。



「以前の分と纏めて頂こうかなぁ~」

「えっ?」



ドスッとお腹を殴られ、私は意識が遠くなる。



≪……ヤバイ奴等に……捕まった≫

≪逃げなきゃ≫



私は力を振り絞るも逃げようとするものの体がいうことを利かないのと三人の力には逃げる事が出来ず口までも塞がれ、ズルズルと引き摺られるように路地裏に連れて行かれた。



ドサッ

地面に転がるように押し倒されかと押えつけられ抵抗するもかなわない。



「や、辞めてっ!」



バシーッ



頬を打たれた。



「静かにしろっ!」



ビクッ

頬を打たれ怒鳴られる声に強張る。



「前回は、男に邪魔されて渋々帰ってやったけど」



「………………」



≪やっぱり……≫



「今日は邪魔者もいないし、大声出しても無理だから!」


「つーかさ……今日は逃す訳にはいかねーんだぁ~」


「俺達の相手してもらうからな。女子高生さん」



「や、やだ……」



バシーッ

再び頬を打たれた。



「おいっ! しっかり押さえてろっ!」



「や……」



口を塞がれ、グイッと更に押えつけられ、私の身体を引き裂くような痛みが全身に広がる。



「……っ!……」


「あー残念」

「ごめ~ん、初めてだったんだぁ~」

「運が悪かったなぁ~バチが当たったんじゃねーの?」



私は、ただただ痛いだけ辛さに涙が溢れた。




「………………」



どれくらいの時間が経ったのだろう?



気付けば、もう誰もおらず


一人取り残されていた…………




私はボロボロになった身体の痛みを感じながら、その場から動けずにいた。



「……っく……」


「………………」





行く宛なんてないのに


私は


何処に行けばいい?


また同じ目に遭ったら?


そう考えると


怖くて


そこから動けなかった




「……稔樹……に……会いたい……」



「なあ」



ビクッ

突然の声に驚く私。



「こっちに一人の女子高生が拉致られたんだけどさ……」



≪……えっ…?……誰…?≫



「俺の知ってる子に似てたんだけど……」


「………………」


「……そっちに行って良い?」

「…や……や…だ……来ない……で……」

「確認したいから」

「やだ……こっちに来ないでっ!……お願い……」


「じゃあ……ずっと……ここにいる気か? 霞賀 麻魅……」


「えっ…?」



≪……稔樹……? ≫

≪まさか……ね…違うよね……?≫

≪それとも……幼なじみの誰か?≫



「………………」





次の瞬間。




ふわりと優しく抱きしめられた。




ビクッ

肩が強張る。



「何もしないから」



私はゆっくりと顔をあげるとキスをされた。



両頬を優しく包みこむようにすると唇が離れた。




「……稔……樹……」



私は涙が溢れた。



再び抱きしめられ、私は抱きつくように稔樹の胸に顔を埋めた。



「大丈夫か?」



私は首を左右にふる。



「……だろうな……助けられなくて……ごめんな……麻魅……家帰ろう……俺が傍にいてやるから……」



そう言うと抱きついた私の体を離し、もう一度キスされた。


私は稔樹におんぶされ帰る。



「シャワー浴びてきな。着替え出しとく」

「……うん……」



私はシャワーを浴び脱衣場から出る私。




「今日はもう疲れたろ? もう寝な」

「……うん……」



頭をポンポンとする稔樹。



「シャワー浴びて来る」

「……うん……」


私は稔樹のベッドに横になる。




だけど眠れなかった


瞼を閉じれば


さっきの光景が


蘇るから…………




再び泣きたくなる私。


脱衣場から出て来る稔樹。



「麻魅……? 眠れないのか……?」

「……うん……瞼閉じれば……さっきの光景が……」


「………………」



頭を撫でる稔樹。




「俺が傍にいるから」

「傍にいるだけじゃ……駄目だよ……」


「………………」



稔樹はキスをすると私の上に股がり両手を押え私を見下ろす。



ドクン

不安と恐怖と好きの入り交じった感情が私の胸が跳ねる。



「……稔樹……お願い……私の不安を……解消して……」



「……麻魅……」



優しく何処か切なそうに見つめる稔樹。



「好きじゃなくてもいいから……」



稔樹は、手を緩め私から降りると

ベッドに腰をおろす。



「……ごめん……やっぱり……無理だよね……汚(けが)れちゃったから……」



私は体の向きを変え稔樹に背を向けた。



「………………」


「……っく……」



グイッと肩を掴み、稔樹は私の上に股がり両手を押えつけた。



「さっきの事は忘れろ!」



そう言うとキスをし、何度も何度も角度を変えキスをする稔樹。



「俺だけを見てろ! 何も考えんな!麻魅っ!」



稔樹は私の様子を見ながら、優しい眼差しをしながら何度も何度もキスを繰り返す。


時々、深いキスをし首スジから鎖骨胸元に唇が這い、徐々に下に唇が這う中、大きい手が這う。



「………………」



「……稔樹……」

「……怖いか?」



至近距離で見つめ合う私達。


稔樹はキスをする。



「麻魅……そんな顔すんな。俺に全て身を委ねろ!」


「………………」



私は稔樹に抱き付くようにすると気付けば私達は身体が重なっていた。



「これでお前は俺のものだから」

「……稔樹……」



私は涙が零れ落ちた。


零れ落ちる涙にキスをされ、唇にキスをし深いキスをされた。


私は、あの恐怖から安心したように、いつの間にか眠っていた。




「コイツの人生の半分以上の幸せ……奪い過ぎだろ?」



稔樹は、眠っている私にキスをした。




俺は……


コイツの為に


何が出来る?


傍にいる事だけ?


これ以上……


コイツの幸せを


奪わないで欲しい……





次の日……




麻魅は……




いなかった…………






置き手紙だけを残して


俺の前から去っていた


そして学校も休んでいた


だけど


長くは続かず




その次の日……




彼女は……




俺の前に現れた……




何事もなかったように……





その日の昼休み私は屋上に行き、金網を背後に寄り掛かってぼんやりとしていると、



「麻魅」



名前を呼ばれ視線を向けると、そこには



「……稔樹……あっ! 一昨年はありがとう。あんな事になったけど……」

「あんな事ってどんな事?」

「えっ? それは……つーか分かっていながら意地悪するの辞めてよ」



微笑み歩み寄ると、キスをされた。



ドキン



「お前……無理してんだろ?」



ギクッ



「な、何言って……」

「俺にまだ隠してある事あるんだろう? 」


「………………」



私は下にうつ向く。



「稔樹にはかなわないや……誤魔化してもバレちゃうね」

「気になるからな」

「えっ?」



顔をあげる。




「俺は幼なじみじゃねーけど気になるから。つーか放っておけないから違う意味で気になんだよ」


「稔樹……」

「で? 話してみな」



私は家庭の事情を話した。



「こんな時こそ幼なじみと言いたいけど、お前には無理そうだな……俺の所にしばらくいれば?」


「えっ?」


「仕方なく面倒見てやるよ。勿論、H付きで」

「えっ!? 何言って……」

「嘘だよ」

「本当……そうやって、すぐ意地悪する!」



クスクス笑う稔樹。



「一人位、大丈夫だから遠慮すんな」



私は稔樹の住んでいるマンションにしばらくいる事にした。












































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