第7話 不倫現場

稔樹と別れ、私は真っ直ぐに家に帰宅。



「ただ……ぃ……ま……」



今日もいつもと変わらないと、思った矢先、玄関には見慣れない男の人の靴があった。



「お客……さん?」



私はリビングに行く。


でも、人のいる様子はなく、自分の部屋に行こうとした、その時、とある部屋から微かに話し声がした。


両親の部屋からだ。



私はいけないと思う中、手がドアノブにかかり気付けばドアを開けていた。


隙間から見えた光景は、母親が父親と違う異性とキスしていた瞬間だった。


一旦、離れたかと思ったら、再びキスをし、濃厚と思われるキスを繰り返し、洋服を脱がし合いながら倒れていく姿。


私はドアを閉める。



こういう知識は良く分からないし経験した事がないけど、キスしたり裸になったりする行為は愛し合ってる証拠だと思われる。


場合によっては違うのもあるけど ―――




私は必要な物を持ち外出する事にした。




そして、日も暮れ途方に暮れる中、私は父親の浮気現場と思われる瞬間を目撃した。


父親は、女の人の腰に手を回し、女の人も父親にベッタリと抱き付くように首に手を回す仕草を見せ、熱っぽい視線を父親に送ると二人はキスをし、更に濃厚と思われるキスを交わしホテル街に入っていく二人の姿を見かけた。




「……もう……おしまいだ……」





私は後ずさりし帰ろうとした、その時。



ドン

誰かとぶつかった。



「きゃあっ! すみません」

「いいえ。おっ♪ ラッキー! 女子高生じゃん!」

「何してんの? 一人?」


「……あの……」



グイッと肩を抱き寄せられた。



「ねえ、何処か行こうよ」

「あの……ごめんなさい……」

「何、何? 良いじゃん? 誰かと待ち合わせしてる感じ?」

「いや……」




私を連れて行こうとする。



「や、辞めて下さい! は、離して下さい!」



≪本来の力が出ない≫

≪逃げなきゃ≫



「あの……本当にごめんなさいっ!」



私は、押し退け帰ろうとするが囲まれた。



「なあ、良いじゃん!」

「どうせ、今時の女子高生は遊んでんだし、やる事やってんでしょう?」

「私は違いますっ!」



私は、サッと隙を狙い、無我夢中で、その場から何とか逃げ身を隠すように、体をゆっくり崩していく。



「……っく……」



私は恐怖と、立て続けに起きた両親の浮気現場を目の当たりにし、行く宛てがない寂しさと、幼なじみに見せれない姿に、ただ泣くしかなかった。



しばらくして私は、その場から移動し、歩道橋で足を止め、ぼんやりとしていた。



「………………」



「何、寄り道してんだ?」



ビクッ

突然、声がし驚く私。



振り向く視線の先には―――



「とし……き……?」



私の立ち位置から少し距離を置き、歩道橋に背中を寄りかからせて前方に視線向けている横顔の稔樹の姿。



≪……嘘……全然気付かなかった……いつから?≫



眼鏡を外す稔樹。



ドキン


歩み寄り、顔をのぞき込むようにする稔樹。



「どうかしたのか? 一旦帰った様子ではあるみたいだけど?」



「………………」



私は下にうつ向く。



「何となく今日中に、お前と会う気はしていたけど……まさか本当だったとはな」


「えっ?」




顔をあげると、スッと私の両頬を優しく包み込むように触れた。



ドキン

私の胸が高鳴る。




私の目の下に触れ



「泣いた跡……」



ギクッ



私の両頬から離そうとする稔樹の両手を引き止めるかのように私は自分の両手を重ねた。



「麻魅?」

「今日は……帰りたくない……」


「えっ!? 帰りたくないって……そういう事、俺に言う前に幼なじみの所に行けば良い事じゃん」


「……そうだよね……ごめん……私達は……ただのクラスメイトなだけなのにね……」



私は、重ねた手を離し帰り始める。



グイッと引き止められる。



「行く宛てもない……幼なじみにも頼れないし弱味は見せれない……全く、お前ってやつは何かあったら遅いだろう?」


「………………」



歩み寄り、頭をポンとした。


ドキン



「放っておけるわけねぇだろう? 来いよ! だけど俺は男だって事は忘れんなっ!」


「……それは……」


「嘘だ! でも事実だろう? 一応、一言言っておかないと過ちを犯す」

「知らない奴等にヤられる位なら、そっちが良いよ……」

「バーカ、帰るぞ!」



稔樹は帰り始める。



「ま、待ってよ! 稔樹!」



私は後を追い、稔樹の腕を掴む。



「ねえ、稔樹、手繋いで良い?」

「やだ!」

「拒否られた!」



微かに微笑むと、グイッと私の手を掴み手を繋いでくれた。



ドキン



「たまーに、そういう事言うから調子狂うし!」

「えっ?」

「女の子になるの反則だろ!?」

「私、女の子なんだけど!?」

「ムカつく!」

「だって本当の事じゃん! 女の子なんだから!」


「あーそうだな! 霞賀 麻魅さん。で? 何があったんだ?」


「えっ?」


「話しな。家には帰ったんだろう?」


「うん……帰ったよ。帰ったけど……母親がいて、父親以外の男の人連れ込んでて」


「浮気現場ってやつか」


「うん……両親の部屋から話し声がして、いけない事だって分かってたけけど……キスして裸になっていって……」


「あー完璧アウトだな」


「すぐ家を出て来て、その後、父親の浮気現場と思われる瞬間に遭遇して……女の人といる所見かけた……」


「親密な関係だった感じなのか?」



「ベッタリな感じで……キスもしてたし、そのままホテル街に入って行った」


「あー……Wアウト……だな」


「喧嘩多かったし色気付いてたから薄々気付いていたけど……でも……いざ、そういう所を見ちゃうと一気に引くしショックだよね……」


「お前……ついてねーな」

「離婚しなよって言った事あったけど……時間の問題かな?」

「どっちにつくの?」

「どっちにもつきたくない!」


「えっ!?」


「再婚相手と連れ子って良い話し聞かないし、というより、そういうイメージしかないから……転校とかなったら嫌だし、そんな嫌な思いする前に一人暮らしする」


「麻魅……」


「それに邪魔に決まってんじゃん? 私の親のくせにあなたが悪いって擦り付け合って呆れるよ!」


「………………」


「私って……二人の何なんだろうね? 生まれて来なきゃ良かった……」


「生まれて来なきゃ、俺達は出会ってなかったじゃん。何か理由があるから、この世に生まれてきてんじゃねーの?」


「……稔樹……」



そして、私は稔樹の家に行く。




≪初めて異性の家にあがるんだっけ?≫

≪幼なじみと違って一人の男の子として見てるから緊張する≫



「飯食った?」

「ううん……食欲なくて……」

「パスタ位は入るだろう?」

「パスタ……どうかな?」

「強制的に食わせる!」


「えっ!? 強制的って……」

「だから食え!」

「何それ!」

「あ、そうそう。言っておくけど、俺一人暮らしだから」



ドキッ



「えっ!? 一人暮らし!?」

「ああ、だから心おきなく、ごゆっくりどうぞ!」


「あ……うん……」



私は更に胸が加速していく。



≪ということは二人きり?≫



「一気に緊張してきましたって空気なんだけど」

「えっ!? ……いや……」

「分かりやすっ! おもしれーっ!」

「からかわないで!」

「まあ、一応、キスした仲だしマジ付き合ってあげても良いけど?」


「何言って……私じゃ不つりあいだから!」

「とか言って俺の事気になるくせに」



ギクッ


「つーか付き合ってあげても良いって言い方酷くない?」



ドサッ

押し倒す稔樹。



ドキッ

上から見つめられる体勢に私の胸は更に加速していく中、キスをする稔樹。



ドキン



「ちょ、ちょっと……」

「嘘だ」

「えっ?」



スッと離れる稔樹。



「飯食うぞ!」



グイッと引っ張り起こし起き上がらせる稔樹。


頭をポンポンとする稔樹。



ドキン



「自分の気持ち素直になりな」

「えっ?」

「お前が俺に対する気持ち気付いているつもりだから。俺、それに応えられるようにするから」


「……稔樹……」

「好きになるなとは言わねーし、俺、彼女いないから付き合えなくはねぇけど、嫌な恋愛の過去があるから、まだちょっと踏み込めなくて」




そして、その日、私は稔樹の部屋でお世話になり泊まる事にした。
































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