第6話 間一髪

それから、数か月が過ぎ ――――



ある日の学校帰り。



ドン

誰かに背後からぶつかられた。



「きゃあっ!」



バシャ

私の手に持っていた飲みものが近くの人にかかってしまい



「す、すみません!」

「あーあ……嬢ちゃん、これどうしてくれんの?」

「す、すみません」

「クリーニング代、もらおうじゃねーか!」



二人の男の人に歩み寄られた。



「クリーニング代!?」

「汚した責任取って貰おうじゃねーか!」


「あはは……」



私は乾いたような笑いをすると、言葉を続けた。



「クリーニング代って高校生にお金せびる大人ってどうかと思いますけど? わざとじゃないし謝ったじゃん! つーことで失礼します」



私は去り始める。



「待ちやがれ!」



ビクッ

グイッと手首を掴まれ引き上げられた。



「……っ!」



≪ヤバイ……コイツら……その辺の奴等と違う≫



「女子高生だし、やる事やってんだろうし相手してくれたらチャラにしてやるよ!」


「ふ、ふざけんなっ! あんたらの相手するかっつーの!」


「だったらさぁ~クリーニング代、ちょ~だい」

「しつこい!警察沙汰すると立場悪くなるくせにっ!」

「女子高生な割りには言ってくれるねぇ~」

「だったら黙らせた方が良い感じ?」

「暴力ですか?」

「まさかっ!」



グイッと肩を抱き寄せる。



プチッ……


プチッ……



ナイフで脅すように、私の制服のボタンがちぎられる。



ビクッ


「相手してよ?」



耳元で言われた。



「だ、誰が相手……」



口を手で塞がれた。



「静かにしろ!」

「突っ掛かる女子高生ってさ、そういないからさぁ~黙らせてやらなきゃ」



私を路地裏に連れて行こうとする。



≪や、やだ……コイツら≫



「強姦(ごうかん、レイプ)して犯罪大きくする気? 警察呼ぼうか? お兄さん方」



ビクッ

背後から声を掛けらる人影。



「あぁ?」

「何だテメェ。ふざけた事してんじゃねぇぞ!」



1人の人が私から離れ歩み寄り、相手の胸倉を掴んだ。


振り返る私。



≪……岾下君……≫



「クリーニング代とか、女子高生だからって、その考え方ってあんた達の汚いやり方」


「テメェは黙ってろ!」

「関係ねぇだろ!?」


「ああ……勿論、関係ねぇけどさぁ~……汚いやり方する、あんたらに彼女を傷付けられたらかなわねぇんだよ!」



ドキン

私の胸が大きく跳ねた。


私に特別な感情がある訳でもないと分かっているけど、私の胸は高鳴ってしまった。




グイッ ドカッ

相手の手首を捻りあげ蹴っ飛ばした。



ドサーッ

一人の人が地面に転がった。



「テメェ」


もう一人の人が岾下君に襲いかかってくる。


岾下君は簡単に交わし、相手を殴った。

二人の様子を見ながら、私の元に来る岾下君。



「岾下君……」

「麻魅、俺から離れんな!」



ドキン

名前を呼び捨てにされ胸が高鳴る。



「うん……」



「野郎……っ!」



ゆっくりと起き上がる中、相手側の手元にナイフがあるのが見えた。



「そんなもんに頼んねーと、いけねー程、世の中も怖くなったよなぁ~……拳銃とかナイフとか……命いくつあっても足りねぇよな? 麻魅、下がってろ!」


「うん……」



そう言われるのと同時に、相手は、こっちに向かって襲いかかって来た。




ドカッ カラン

相手を蹴っ飛ばし、地面に転がると同時にナイフが地面に転がる。


ガリッ

ナイフを足で踏み押さえる岾下君の姿。



「タチの悪ーいあんたらがいるから世の中も腐れてんだよ! これ以上痛い目遭いたくないならとっととっと失せろっ! それとも……警察に連絡した方が良い? お兄さん方」




男の人達は悔しそうに走り去りながら



「覚えてろよ!」



ありきたりな捨て台詞を言って私達の前から逃げるように去った。




「………………」


「岾下君……ありが……」



グイッと抱き寄せる。



ドキン



「お前は心配させんなよ!」




ドキン

意外な言葉に胸が高鳴る。




「……ごめん……」

「下手すりゃお前病院行きだから」

「さらっと言わないでよ!」

「あれは根に持つ相手だから、もし今度同じ奴等に遭遇したら……多分……お前狙われる」



ドクン……

恐怖で胸が大きく跳ねる。




だけど、普通の奴等じゃない事は私自身も感じた。


不良とは違う、本当にタチの悪い奴等。

裏組織というか闇社会の人間というべきか……



「……そうだね……」

「忠告しとく。俺が助けられたら良いけど……正直……保証出来ない……」

「何かあったら……岾下君が……私の傍にいてくれれば良いよ」

「えっ!?」



抱きしめた体を離す。



「な~んて……そんなの分からないからね。それじゃ」



別れ始める私達。



「麻魅」



ドキン



「何?」

「本当は送ってやりてーけど、送れねぇんだ……一人で大丈夫か?」

「うん……大丈夫。心配しないで真っ直ぐ帰るから」


「だったら良いけど……」

「ねえ岾下君」

「何?」

「岾下君の事、下の名前で呼んでいい?」

「えっ? 駄目!」

「だって自分私の事……」



クスクス笑いながら



「気付いてたんだ!」

「気付くよ!」



頭をポンポンとする岾下君。



ドキン




「良いんじゃねーの? 特別に許可してやるよ。霞賀 麻魅さん。じゃあな」

「うん」



そう言うと私達は別れ、稔樹は一旦足を止め振り返る。




~ 稔樹 side ~



「何もなきゃ良いけど……」




麻魅と別れ、俺はただならぬ胸騒ぎがしていた。


麻魅とは、また会う気がしてならなかった。





















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