第5話 カップルなりきり作戦!?

――― 次の日 ―――



「あ・さ・み・ちゃ~ん」



ゾワゾワ~

聞きなれない呼び方に嫌~な感覚が体全身に頭まで駆け抜けた。



「な、何? その気持ち悪い呼び方すんの誰?」



グイッと肩を抱き寄せる人影。




「俺で~す♪」

「亘希ぃっ!?」

「昨日、公園でイイ男と抱き合っていたじゃ~ん?」


「えっ!? 抱き合ってた? 私が? 誰と?」

「それが分かんねーから、今、事情徴収してんじゃん?」


「じ、事情徴収って……」


「公園で抱き合う二人。つーか、バックハグされてたし。こ~んな感じで……見た所によると親密な関係!?」



シミュレーションをする亘希。



≪えっ!?公園!?バックハグ?≫



スッと離れる亘希。



≪……それは……もしや……岾下君との事なのでは……?≫



「なあなあ、誰? 何処の人? お前見掛けによらず彼氏いたの? バックハグってさ普通の関係じゃないよな?」


「見掛けによらずって……悪かったな! つーか、彼氏じゃないから! あの人は知人で……えっと……」




≪……どうしよう??≫

≪岾下君って言った所で信じないだろうし岾下君に迷惑かかるよね?≫

≪前に話そうとしたら口止めされるし≫




そこへ ―――



「おはよう。なあ麻魅、昨日、平気だったか?」


と、劉史が尋ねてきた。




「えっ?あ、おはよう」と、私。


「あ、おはよう。劉史。あっ! もしかして相手、劉史だったのか?」


と、亘希。


「えっ? 相手? 何の話?」と、劉史。


「いや、昨日、公園でバックハグされてたから、コイツ!」と、亘希。


「バックハグ? えっ!? いやいや、俺がコイツにバックハグなんてしねーし! つーか、俺が家帰って荷物置いて後追ったら既に男と良い雰囲気だったし。お前じゃねーの?」と、劉史。


「いやいや、俺は違う!」と、亘希。


「……じゃあ誰!?」と、劉史。


「やっぱ男?」と、亘希。


「見掛けによらず、お前彼氏いんの?」


と、劉史。


「いないってば!」




そこへ ―――



友美を見掛け、友美の元に駆け寄る。



「おはよう!友美」

「あっ! おはよう!」


「おいっ!話はまだ終わってねーぞ!」


と、劉史。


「終わったってば!」


「強制に終わらせんなっ!」と、亘希。



二人に責められる。



「どうしたの?」

「友美、コイツに彼氏いるの知ってる?」


と、亘希。


「彼氏!?」


「やっぱ、友美も知らない感じなんだ!」


と、劉史。



私達は騒ぐ中、学校へ向かうのだった。




その日の昼休み時間。


私は学校の屋上にいた。



「良い天気。つーか……今日は疲れた……」

「珍しい来客」



ビクッ

突然の声に驚き振り返る私。



ドキッ

眼鏡を外している彼の姿。



「岾下君? 何してんの?」

「日向ぼっこ」

「えっ? 日向……ぼっこって……まるで猫……」

「別に良いじゃん!」

「まあ……」


「そういや今朝、お前ら騒いでたなぁ~」

「えっ?」

「まさか、昨日見られてたなんて、キス位しときゃ良かったかな?」



ドキッ



「な、何言って……大変だったんだよ! キスなんてしてたら、もっとややこしくなって大騒動だから!」


「無理もねーよな? つまり幼なじみは俺達をカップルと勘違い」

「眼鏡かけてないから尚更でしょう? あんたの事バラす訳にはいかないし! 口止めされたし」

「へぇー、かばってくれてんだ」

「かばってるつもりはないしっ! 余程、言いたかったけど……」


「まあ、言った所で信じねーだろうな?」

「当たり前じゃん!」

「いや~今朝は後ろから楽しませてもらったけど」

「楽しむのは辞めて!」



クスクス笑う岾下君。



「邑基は、心配してたみたいだったし、 間渕は情報聞き出そうとしてたし、何だかんだいって仲は良いけど、本当、弱味は見せれないってやつ?」


「そうだよ。それが私だから。ワイワイ騒ぐのは好きだけど自分の弱味は見せたくないの!」


「幼なじみなのにな」


「幼なじみだから!ところで岾下君は、あの近辺に住んでるの?」


「あー、お前らの住んでるマンションとは違うけど、他のマンションの住人ではある」


「そうだったんだ」




次の瞬間。



「……ちょっと来い!」



グイッと私の手を掴み、突然走り出す岾下君。



ドキッ


「きゃあ、な、何?」



私を抱きしめるようにすると身を隠す。

ドキドキとうるさい程、加速する私の胸。



「そんでさー、友達の彼女が誘惑してきて」

「嘘!? ヤっちゃったの?」

「押し倒されて、ヤった」


「ええ……っ!」


叫ぶ私の口を手で塞がれた。



「馬鹿っ! 静かにしろっ!」


と、小声で言う岾下君。



「何か声しなかったか?」

「いや……つーかさ彼女もやるよな?」

「だろ?」



私は岾下君に注意をされ、何度も上下に頷くと、岾下君は私の塞いだ口を解放した。



「……ごめん……」

「別に」

「つーか、どういう状況?」

「何が?」

「つまり彼氏のいる彼女は、友達を押し倒してヤったって事だよね? えっ? ヤるって……つまり、あんな事やこんな事?」


「あんな事やこんな事って?」

「えっ? それは……ほらアレだよアレ」

「ハッキリHって言えば?」


「Hぃぃっ!」

「うわっ!馬鹿っ!」


「おいっ! 誰かいんのか?」



グイッと私を抱きしめるようにバレないように隠れた。



「気のせいか?」

「明らかに声がしたよな?」

「カップルでもいんじゃね?」



抱きしめられた体に私の胸がドキドキ加速する。


彼らは再び話を続けた。



「でもさ、それって彼氏知ってんの?」

「さあ、でも、あれはかなりのやり手だと思うけど?」

「やり手?」

「そう!」



「ねえ」

「何?」

「あんただったら、どうする?」

「何が?」




ドキーッ

至近距離にある顔に胸が飛び出す勢いで大きく跳ねた。



私は、押しのける。



「ち、近い」

「そういうお前は顔真っ赤だけど?」

「う、うるさいなっ!あんたみたいなイケメン目の前にしたら……」

「ふーん……で? 何が?」

「あ、いや、彼女がそういう子だったら」


「即、別れる」

「そうだよね。まともな答えだよね。だけど……彼氏いて押し倒すとか凄くない? 私なら絶対無理!」


「お前には無理だろうな? だけど、色々な人間いるし、正直俺も、過去にあったからなぁ~」


「えっ!? 押し倒されたの!?」

「ああ、押し倒されてヤられた」



「えええーっ!」

「おいっ! 馬鹿っ!!声っ!」

「あっ!」


「やっぱり誰かいやがる!」

「おいっ! 隠れてねぇで出てきやがれ!」


「ヤバっ!」



逃げようとする私の手を掴む。



「えっ!?」

「何、勝手な事してんだよ!」

「いや……」

「1人だけ逃げるなんて抜け駆けしてんじゃねーぞ! 逃げたら逆効果なんだよ! 全く! 予定変更だ!」


「えっ!?」

「黙って目閉じて、じっと我慢しろ!」

「な、何?」

「キスするしかねぇだろ!カップルなりきり作戦だ!」


ドキッ

「えっ?キスっ!?」


グイッと立ち上がらせ、心の準備も出来ないまま、私の唇に岾下君の唇が重なった。



≪キスされたぁぁっ!?≫



私は慌てて目を閉じた。



「すっげー、カップルだったんだ!」

「大胆にキスしてるし、お、おい、行こうぜ」

「あ、ああ」




彼らが去って行き、屋上のドアが閉まる音がした。


唇が離れる。



「………………」



≪ファーストキスが……まさか……こんな形で奪われるとは……≫



「全く!過剰に反応しすぎなんだよ!」


「………………」


「おいっ!」


「わわっ! ご、ごめん……いや……だって……そういうの縁がないから……し、仕方ないじゃん!」


「だったら、その相手、俺がなってやろうか?」



ドキッ

意外な言葉に胸が大きく跳ねた。




「どう見たって、お前の場合、幼なじみ以上は進展しねーだろ? 幼なじみって、どちらかがってあるけど、お前らには微塵も感じねぇし」


「当たり前じゃん! 色気ないし。私達には幼なじみから恋愛には進展しないよ」


「色気あるとかないとかよりも、遊び盛りだからな? 恋愛所じゃねーんだろ? 俺はどちらかというと両方楽しみたい人間だし」


「両方って……女の子なら誰でも良い感じ?」

「別にそういう訳じゃねーけど」

「本当に?」

「本当だし!」



私達も、教室に戻る事にした。























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