第4話 弱味、本音
「あなた! これは何ですか?」
「あーそれは同僚の女の子が、バランス崩して支えた時に付いた口紅の跡だろう?」
「……そうですか?」
「疑ってんのか?」
「別に誰もそんな事は思っていませんよ?」
≪喧嘩≫
「そういうお前は見ない間に色気づいてきてないか?」
「何を言ってるんですか?」
「男でも出来たんだろう?」
「違います!」
「辞めてよ!」
「麻魅……」と、母親。
「久しぶりに顔を合わせたかと思ったら、この様! つーかさ私から見ても色気づいているの一目瞭然だからっ! 母親だけじゃなくて父親も!久しぶりに見たら二人の雰囲気違う事分かるし!」
「………………」
「一層の事、離婚しちゃいなよ! どうせ二人共、不倫でしょう? それともW不倫?」
「まあっ! 何て事を!」
「おいっ! お前、教育がなってないんじゃないのか?」
「何言って……あなたの子供でもあるのよ! あなたは父親なのよ!」
「……呆れた……良い大人が実の子供を擦(なす)り合い? 私はあんた達二人の子供なんだよっ! 最近、家族もバラバラだし家族崩壊も遠くはないんじゃないの? マジ離婚しなよっ!父親も母親も顔を合わせた途端喧嘩なんてさー、こっちが恥ずかしいよ!」
私は部屋を飛び出した。
「麻魅っ!」
「待ちなさいっ! 麻魅っ!」
「………………」
その途中。
「うわっ! 麻魅? どうしたんだ?」
と、劉史に遭遇した。
「放っておいて! 何でもないから!」
私は走り去る。
「麻魅っ!……何でもないって感じじゃねーし……」
幼なじみでも見せれない弱味
本当は
話したくて淋しくて
仕方がなかった
――― でも ―――
どうしてだろう?
平気なふりして
本当は誰かの胸を借りて
抱きしめて欲しいのに ―――
私は近くの公園に行きブランコに腰をおろす。
誰もいない公園は
不気味なくらい静かで
淋しくて
違う世界に迷い込んだみたいだった
普段は賑わい
騒々しい公園も
今日は一段と
寂しく感じた ―――
その時だ。
「そんでさー、アイツときたら馬鹿でさー、可愛い奴なんだけど、憎めなくてさー、そうそう。お前も、そう思うだろう? ……あっ! 悪い充電切れるかも……またな」
携帯を切る人影。
「霞賀?」
ビクッ
突然、声をかけられ驚く私。
視線を向けると眼鏡をかけていないクラスメイトの彼がいた。
ドキン
「……岾下……君?」
こんな所で会うとは意外だった。
「どうした?」
「……別に」
「別にって雰囲気じゃねーし」
そう言うと隣のブランコに腰をおろす岾下君。
ドキン
私の胸の奥が小さくノックした。
「大丈夫だよ。ちょっと、親と喧嘩して頭冷やしてるだけだし」
「女1人で危な過ぎ」
「優しいんだね? だけど多少の護身術、武術は嗜(たしな)んでるから大丈夫だよ」
「バーカ、こういう時が一番危険なんだよ! つーか幼なじみ呼び出すか家に押しかけりゃ良いじゃん! それって幼なじみの特権じゃね?」
「幼なじみ……か……出来ないんだ……」
「えっ?」
「自分の弱味見せれなくて……」
「幼なじみなのに?」
「幼なじみだからこそ知られ過ぎて……」
「………………」
「曝(さら)け出す事が出来なくて……」
「そういう事もあるんだな」
「うん……つーか……今まで見せた事ないし」
「………………」
「お前の場合、見せた事ないじゃなくて
見せたくないだろう?」
「………………」
「今日だって連絡するなりすれば良いわけだし」
「……それは……」
「………………」
ブランコから立ち上がる岾下君。
「岾下君、帰る感じ?」
「ずっと一緒にいると夜が明けて朝になりそう」
「えっ?」
「だから、お前も帰れ!」
「帰りたくないのが本音だけど……」
「だったら幼なじみでも呼び出せば?」
私も立ち上がる。
「呼び出しませんっ! 誰が呼ぶかっつーの! 頑張って帰るし! すぐ部屋に行く!」
私は帰り始める。
グイッと背後から抱きしめられた。
ドキーン
私の胸が大きく跳ねた。
「えっ!? や……岾下っ!?」
「元気出しな!」
そう言うと私を抱きしめた体を離し帰って行く岾下君の背中を見つめる私。
ドキドキと加速する胸
私は今までにない
胸のざわめきがうるさいくらい起こる
――― 好きになりそう ―――
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