ミルキーウェイ



今日は、一年に一度の織り姫と彦星が天の川を渡って会う日だ。


七夕だ。


七夕の日は、短冊に願いをかいて笹につける。

今年は何をお願いするか、まだ決めていない。

今年は不思議と思い付かなかった。


私も、織り姫と彦星ように一年に一度だけ会う恋人がいればいい。

しかし、ことはそんなに上手くはいかない。


よく考えて見れば、織り姫と彦星はとても律儀だ。

一年に一度だけしか会えない恋人なんて、私だったら嫌だ。

好きな人とずーっと一緒にいたいと思うのが普通だと思う。

それでも浮気もせず、諦めもせず、一年に一度をまつ織り姫と彦星はなんて律儀なんだろう。


結局、私は短冊に願い事を書かなかった。

私は仕方ないので外にでた。

私の住む町では、七夕に合わせてお祭りをやっていたのだ。

かき氷でも食べながら、天の川でも見よう。

そう思ってかき氷を買って、近くの公園の芝生にしゃがみこむ。

その芝生は山になっていて、見晴らしが最高だった。

かき氷をスプーンですくって口に入れた。

口の中で氷がとけて、ひんやりと甘い感覚がする。

すると、人影がこちらに向かってくるのが見えた。


「・・・空?空だよね?」


そう声をかけられて近づいてきた人影を見ると、それは幼なじみの宙人だった。


「宙人!?うわ、なんか久しぶり!」

「そうだね。隣、いいかな?」


私はそう言われてこくりと頷くと、宙人は隣に腰を降ろした。

そして、私たちはお互いの今の生活を語り合ながら、夜空を眺めた。


今日は天の川がくっきりと見えた。

思わずため息がでた。

真っ黒な空に、満天に星が輝いている。

その時だった。

宙人がふと私を見つめた。


「ね、空」


私を呼んだ宙人に、思わずドキドキとした。

そして、にこりと微笑むと言った。


「来年も、来るよね?」


そう言った宙人の顔は、頬をほんのり染めているように見えた。


「好きだよ」


宙人は、私をじっと見つめていた。

――――そして私は一年後、この答を言いに祭へと足を運ぶのだった。




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