あの日は、雪だった




彼女の心に、ようやく春が来た――――。


人間不信っていうのは、人間の中でも性が悪い。

自分がどんなに相手を信じていても、相手は人間を信じることができないわけだから、私は相手にすごく気を使うことになる。


「なんで空ちゃんはずっと私のそばにいるの?」


彼女は、わけもなくそう聞く。


「どうしてそんなこときくの?」

「だって、私、空ちゃんのこと信じてあげれないんだよ。」

「関係ないよ、そんなこと。」

「なんで?」

「私が一緒にいたいと思うからだよ。」


そんな会話を、一週間に一回くらいは必ずする。

めんどくさいと思ったこともあった。

それでも、彼女がそれで納得してくれるなら別にいい気がした。


「今日、雪が降ってるね。」


学校の教室から外を見ると、運動場は真っ白だった。


「あとで雪だるまつくりにいこっか。」


私は彼女に笑いかける。


「・・・・うん。」


すると、彼女は私に初めて笑ってみせた。

そんな彼女の笑顔は同性からみても可愛らしく、顔が赤くなる。


「・・・空ちゃん?」


嬉しかった。

これまで人に気を赦して笑うことなどなかったのに。


「ううん、なんでもない!!」


彼女の心に積もった雪は、きっととけはじめたのかもしれない。

真っ白な彼女の心に、違うものが見えたのかもしれない。


「雪だるまなんて、小学生ぶりだなぁ」

「空ちゃんは、そうゆうのやってそう。」

「海かいは、ないの?」

「小学生の頃は、いい思い出無いから」

「そっか。」


初めて聞いた。

彼女の昔の話。


雪の後には、春が待っている。

彼女の心にも、もうすぐ春が訪れるだろう――――――。

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