あの時は、雹だった

雷がなる。

それから、雨がふる。

雨のザーッと言う音から

固いものが地面に叩きつけられる、鈍いおとに変わった。


小さな氷の粒が、空から降ってきた。

雹だ。





初めて雹を見たときは、本当に驚いた。

初めて雹を見たのはおそらく幼稚園に通っていたころ。


その時はたくさんの人に囲まれていた。

兄、兄の友達、同じマンションに住んでいるお姉さんとお兄さんたち。

同じマンションに住んでいるお姉さんは、4人ぐらいいた。

お兄さんも4人くらい。

だだっ広いマンションの駐車場が私たちの遊び場で、私はその時最年少だった。


最年少なものだから、遊びをすると私は必ずビリになる。

鬼ごっこやかけっこはどう頑張ってもお兄さんたちには勝てない。

鬼ごっこをしていて鬼になっても、なかなか追いつけない。

最終的に、私はなきべそをかいて鬼ごっこは中断。

優しいお兄さんやお姉さんたちは、「ごめんね。てかげんありにしようね。」と言って手を差し出し、私がそのお兄さんやお姉さんの手に手を重ね、タッチをしたことにすると、再び鬼ごっこは再開される。


そんな優しい人にばかり囲まれていたから、私は我が儘に育ってしまったのだろうか。

誰かがそばにいないと、不安で仕方がない。

年上と仲良くなるのは早くて年下と仲良くなるのは遅い感覚があった。


雹を見て、昔のことを思い出してしまった。


「なーにボケっとしてんの?外なんか見ながら。」


「うん。雹見てたら、なんか思い出したんだよね、昔のこと。」


あの時から、まわりの人がいなくなることをおそれた。

同じマンションに住んでいた子たちは、みんな少しずつ他の場所へと引っ越してしまったのだ。


それから遊んでくれる人はいなくなってしまった。

そして私もそのマンションを引っ越した。


あの時から、私の人に対する気持ちはあったのかもしれない。


もう、仲の良い人を失うのは嫌だと気持ちが―――――。

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