第4話

 ホームルームが終わり、クラスメイトたちは次々と伸びをして席を立っていく。


 長いホームルームだったな。


 副担任が新任の先生で若くてイケメンの男性だったようで、クラスの一部の女子が沸いたのが主な原因なんだけど……。


「撫子ぉー」


 明るい髪色のポニーテールを揺らしながら、一人の女の子が私の机の前にキラキラした目をしてやってきた。


 幼馴染の千紘ちひろだ。


「副担任の黒日部くろかべせんせー、超イケメンじゃない? もうドキドキしちゃったよ!」


 千紘も先ほど騒いでいた女子の1人だ。


「うーん、興味ないな」


「相変わらず、男の子に興味なさすぎだよ! ねぇ、龍樹」


 と、私の斜め前に座っている龍樹に言った。


 が、龍樹は「いいんじゃねえの」とぶっきらぼうに言って、荷物を持ってそのまま教室を出ていった。おそらく部活だろう。


「もう、龍樹ったら無理しちゃって」


 そう言って千紘はいたずらっぽく笑った。


 千紘とは小学校から付き合いがあり、龍樹と3人で何をするにも一緒だったけど、まさか高校まで一緒になるとは思わなかった。


「ようやく終わったんだし、帰りにどっか寄ってかえらない?」

 

「ごめん。今日お爺ちゃんから、お使い頼まれてるの」


「そっかー、残念。じゃあ、駅まで一緒に帰ろ!」


 私は静かに頷いて、バッグを持ち、千紘と一緒に教室を出ようとした。


 教室の扉近くには、クラスの女子が3人集まって何やらコソコソと話している。


 確か1人は去年も同じクラスの子だった気がするが、えーっと、名前は何だっけ?


 近づくと、甘ったるい香水の匂いがきつくなる。


 三人のうち、化粧の濃い子がこちらをチラチラとみながら、ニタニタと笑っている。厚い唇の子は興味なさそうに携帯を覗き、日焼けした子はこちらを睨みつけている。


 彼女たちに何かしたことはないけど、なぜか私が気に食わないらしい。


 気にしないのが一番。

 

 彼女たちを横目に通り過ぎるときに、ボソリと女の子たちが呟いた。


「この年でお爺ちゃんのお使いってなんだよ、ウケるw」


「男に興味ないとか、ピュアぶっちゃってw」


「ってか、表情なさすぎてお人形さんかよwww」


 その言葉に、千紘が振り向いて睨むが、私は肩を叩く。


 こういうのには関わらないのが一番だ。


 私たちのこの態度が気に食わなかったようで、その後も3人は何やらぶつぶつと何か言っていたようだが、私は振り向かずに、千紘が熱く語り始めた最近お気に入りのスイーツ屋さんの話に耳を傾けた。

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