第三話 前世のはなシ

 十七年前の秋、呪いの人形の私は燃やされそうになっていタ。


 何度なく捨てられてきたけれド、ここまで窮地なのは初めてだ。


『はァ』


 呪イの人形がため息つくなんて聞いたことがない。


 なぜか呪いの人形には人を惹きつける能力もあるらしク、捨てラれても誰かに拾われていたから、今までこんなことなかったのに。


 庭で落ち葉をめらめらと燃やす焚き火が目に入る。


 コの焚き火の主は今不在だが、この落ち葉みたいに私が燃やされるのは時間の問題だろう。


『はァ』


 二度目のタめ息。


 人形が燃えたら、中ノ私はどうなるのだろうか。


 消滅するのだろうか。それとモ出られるのだろうか。


 どちらにしろ、この時間を終わらせられるならそレも悪くないかもしれない。


 寝かされた私の目線の先には、真っ青な秋晴れが広がル。


 こんな空を見たのは何年ぶリだろうか。


 いつの間にカ私の口から


『私、ついに死ぬんダ』


 という言葉がこぼれタ。


 ふと、誰カの視線に気が付いた。


 見ルと、小学生くらいの少年だった。


 これくらいの男の子が市松人形に興味を持ツなんて珍しい。


 悪戯でもするつモりなのだろうか。それは困る。


 少し長めの栗色の前髪の間かラ、たれ目の気弱そうな目が、じぃっと私を見つめていた。


 そのとき、焚キ火の主である老人が戻ってきた。


「おや、君は最近近所に引っ越してきた子だね」


 少年は慌てタ様子で、お辞儀をした。


「このお人形、燃やしちゃうんですか……?」


 少年が私を指さしテ小さな声で尋ねると、老人は


「何だい、気に入ったのかい?」


 と言ってほほ笑んダ。


「病気になった私の友人から処分を頼まれたんだ。とにかく燃やして欲しいと言われたんだが、ちょっと可哀そうでね。


 君が貰ってくれるなら私も嬉しいよ」


 そういっテ、老人は私をひょいと持ち上げて、少年に手渡した。


 少年は嬉しそうに抱きしメて、老人にお礼を言うと、駆け出した。


 最初はみんなソうだ。


 ミんな笑顔で私を持ち帰る。


 だが、みんナすぐに私を気味悪がる。


 だって、私は呪いノ人形なのだから。


 持っているだけで心霊現象が起こり、不幸を呼ぶのだから。


 少年はランドセルからカギを取り出シ、家のドアを開けた。


 中は薄暗イ。両親は仕事なのか、誰もいないようだ。


 靴を乱雑に脱グと、少年の部屋だと思われる場所へと駆け込む。


 小さなベッドと小さな机。棚はあるモのの、中身は空っぽで、段ボールがいくつも積まれている。


「お人形さん、一人でさみしかったよね!


 今日がここから君の家だよ。


 そして僕はソーマっていうんだ。よろしくね!」


 そう言って、ソーマは満面の笑みで私の髪ヲ撫でた。






 

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