第8話 史上最強の魔王。竜王の残した財宝を手に入れる

 俺はヨルムの財宝を見て回る。


「これを全部ヨルムが集めたのか?」

「ちがうよー。僕が集めたのはこの辺かなー」

「ほ、ほう。ヨルムはこういうのが好きなのか」

「かっこいいよね。特にこの形とかー」


 キラキラしているし、変な形をしているが、ガラクタである。

 魔道具でもなければ、ミスリル、オリハルコンなどでもない。

 宝石や黄金、白金ですらなかった。


「そうか。ヨルムはこういうのが好きか」

「うん!」


 好みは人、いや竜それぞれだ。

 そもそも、ヨルムは財宝集めが好きなタイプの竜ではないという。

 だから、形とかそういう見た目で選んだのかも知れない。


「他はヨルムンガンドの物なのか?」

「父ちゃんが置いていったんだよ」

「それなら残しておいた方がいいかもな」

「大丈夫。父ちゃんは、僕が渡したい人が来たら渡しなさいっていってたし」

「……そうだったのか」


 ヨルムは昔を思い出すように上を見ながら、語り出した。


「ここに巣を作ったのは父ちゃんなんだけど……」


 五百年前から住み始めて、三百年ぐらい前に消えたらしい。


「僕が二つ名を手に入れた後に消えたんだ」

「ふむ」

「そのとき、僕がここにずっと住んでいたら、きっと面白いことが起こるって」

「面白いことか」

「そのときに、きっと父ちゃんの残した財宝の使い方がわかるって言ってた」


 そして、尻尾を振った。


「きっと、面白いことって、陛下に出会えることだったんだよ。使い方もわかったし!」

「まさか、と言いたいところだが、竜王ヨルムンガンドは本当に賢かったからな」

「父ちゃんは頭いいんだ!」

「ああ。そこまで読んでいてもおかしくはないかもな」

「うん!」


 俺の墓所を守るように巣を作り、子供であるヨルムが育ったら財宝を残して旅だったのだ。

 そんなヨルムンガンドが今なにをしているのかすごく気になる。


 きっと何か大きなことをしているのだろう。


 そんなことを俺が考えていると、ヨルムがヨルムンガンドの残した財宝に向かって飛んだ。

 そして、一つの首飾りを取り出して持ってくる。



「あ、陛下! これ見て。父ちゃんが、これは特に大事にしろって言ってたんだ」

「…………こ、これは!」


 それを見て俺は、驚きのあまり目を見開いた。

 お守りとして養女フィルフィに与えた首飾りと対になる物だ。


「父ちゃんが大事にしろって言うだけあって、面白いよね。中で光が揺れているんだ」

「……そうか、光が動いているのか」


 これは前世の俺の持ち物だ。

 フィルフィが迷子になっても、すぐ見つけ出せるようにする魔道具である。

 光の色によって。状態、つまり魔力の量がわかるようにもなっている。


「ヨルム、もっとよく見せてくれ」

「はい、どうぞ」


 ヨルムに手渡されたそれをよく調べる。

 青い光が確かに揺れていた。

 青は魔力が全快に近いことを示す色だ。

 魔力が減るにつれ光は赤に近づいていき、死ぬ、つまり魔力が消えると光も消える。


 そういう機能があるのだ。


「確かに青い光が揺れている」


 つまりフィルフィは生きているのだ。

 だが、居場所を知らせる部分が靄のようになっていて、わからない。


「どういうことだ?」

「壊れているの?」


 ヨルムにそう言われて調べて見たが、壊れてはいなかった。


「ねえねえ、陛下。この魔道具ってなんなの?」

「ああ、そうだな。説明した方がいいな」


 俺はこの魔道具とフィルフィについて説明する。


「そっか、陛下の物だったんだ。だから父ちゃんも大事にしろっていったんだね」

「ヨルムンガンドは、フィルフィについて何か言っていたりしたのか?」

「父ちゃんは、何も言ってなかったよ」

「……そうか」

「陛下悲しい?」

「いや、悲しくはない。場所はわからないが、生きていることがわかったんだからな」


 俺がそういうと、ヨルムは元気に尻尾を振った。


「フィルフィを見つけ出そう。魔神を探すのと同時にな」

「そうだね! ヨルムも頑張るよ」

「頼りにしているよ」

「うん!」


 そして、俺とヨルムは財宝を回収していく。

 ヨルムンガンドが残してくれた財宝の中には「魔法の鞄マジック・バッグ」と呼ばれる魔道具があった。


 魔法の鞄は、外見に比べて内容量が大きい。

 その内容量の多さは、魔法の鞄の品質にもよるのだが、数倍から数百倍あるのだ。

 そのうえ、いくら中につめても重くもならない。

 戦略兵器と言うべき魔道具だ。


「さすがはヨルムンガンドの魔法の鞄だな」

「そだねー」


 外見に比べて、数万倍の容量があった。

 俺はヨルムンガンドの残した財宝を全てその魔法の鞄へと詰め込んだ。


「さて、ヨルム行こうか」

「うん!」


 そして、俺はヨルムを連れて、山を下りたのだった。

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