第13話 自分の想い
そんなある日の事。
隼人のいる加賀家に訪れた。
撮影も終わり、しばらくは休めそうだと言っていた為、藍上家から加賀家に繋がるドアを開けた。
ズキン
私の胸の奥を締め付けられるように胸が痛んだ。
私は自分の部屋に戻る。
≪確か……今の……aya さん?≫
共演者であった彼女とキスしている所に遭遇してしまった。
≪どういう……事……?≫
彼女は隼人の首に両手を回しキスをしていた。
隼人は、後ろ姿でしか確認取れず
正直
キスを受け入れてしていたのか…………
彼女が勝手にしてきたのか……
色々な事が頭の中を駆け巡る。
私は背中でドアに寄り掛かりズルズルとゆっくりと体を崩していく。
「………………」
私は複雑な心境になる。
≪……隼人……≫
私は泣きそうになった。
――― だけど ―――
私の胸の中の想いは
誤魔化せなかった
次から次に溢れてくる涙が
止まらなかった
そして気付く
私は……
隼人が……
好きなんだと ――――
更に私には信じられない出来事が別の日に起こった。
ある日、バイトから帰ってからの出来事だ。
私の前で稔兄と真理絵さんが、テーブルを囲み会話をしている所に遭遇した。
何となくただならぬ雰囲気。
「何? 話って」
「お前、この前の日曜日、誰といた?」
「日曜日? 友達とショッピングよ」
「友達?男とか?」
≪えっ!?≫
「ええ。彼女のプレゼントを買いたいから付き合って欲しいって職場の後輩に頼まれて付き合ったけど? 相手(カレ)には同じ職場に付き合っている彼女がいるし、私にも彼氏がいる事は知ってるから別にやましい事はないわよ」
「………………」
「…まさか…疑ってるの?」
「………………」
「悪い…信じたいけど、次の日、飲みに行ってるの知ってるんだ。偶々見掛けて…」
「待って! 待ち合わせしてあの後すぐに彼女とも合流したのよ? 二人から食事を奢らせて欲しいって」
「……………」
「悪い…整理がつかないから部屋に戻って欲しい……一人になりたい……」
真理絵さんを追い出すように稔兄は部屋から真理絵さんを出した。
「ちょ、ちょっとっ! 稔紀っ!」
加賀家と藍上家に繋がるドア越から真理絵さんは言う。
「信じてっ!」
「時間が欲しい……」
「………………」
「……信じないの…?」
「悠羽……帰って…」
「真理絵さん、嘘ついてる感じじゃなかったよ!」
私は稔兄の言葉を遮るように口を開く。
「好きな人、信じないの?」
ガシッと稔兄の両腕を掴む。
「ねえっ! お兄ちゃんっ!」
「高校生が大人の喧嘩に口出しするなっ! お前には関係ないっ!」
「…お兄…ちゃん……」
「アイツの事、何も分かってないから、そう言えるんだ!」
バッと私が掴んでいた両腕を離され背を向ける稔兄。
「………………」
私は下にうつ向き話を続けた。
「……稔兄……恋愛って難しいね…好きな人…信じたいけど信じられないなんて…だったら恋愛するべきじゃないね」
そして、顔をあげ、稔兄の前に行き向き合う私達。
「確かに私は真理絵さんの事…何も分からないよっ!そういう稔兄も真理絵さんの事、分かってないじゃんっ! …信じて欲しいから…誤解してほしくないから…誤解解きたくて……なのに…」
再び両腕を掴む私。
「ねえっ! 今ならまだ間に合うし謝ろうよ!」
「………………」
「お兄ちゃんっ!」
「放っておけよ! 俺達に関してお前がとよかく言う必要ないだろ!?」
「………………」
私は部屋を飛び出した。
「あれ? 悠羽?」
前方から帰宅してきたと思われる隼人が私に気付き、すれ違う際に私の腕をグイッと掴まれ呼び止められた。
「悠羽、こんな時間に何処……」
バッ
掴まれた手を払う様に離し再び去り始める。
「あっ! おいっ! 悠羽っ! 一人じゃ危ねーだろっ!」
私は再び腕を掴まれる。
「離してっ!」
振り払おうとする手は離される事なく、もう片方の手を掴まれ、私の体は、ぐるりと半回転し、視界が変わり気付けば壁に押し付けられた。
ドキッ
イライラしている中、私の胸が正直に自分自身にムカつく程、そういう時にも関係なく胸に秘めた想いに反応してしまうのは正直悔しい。
「簡単に逃す訳にはいかねーんだよ! 女の子だって事自覚してんの? 危なすぎだろ?」
「………………」
「で? 何処か行くのか? 何かあったのか?答えろよ」
「………………」
「……黙秘かよ……」
隼人は、ゆっくりと掴んでいた腕をゆっくり離す。
「私の事は良いから彼女の事でも考えなよ」
イライラしている中、一旦引き止められ冷静になる時間をもらい隼人に彼女であろうと思われる相手に対して自分の気持ちを言い走り去る。
「はっ? 彼女? えっ!? おいっ!ちょっと待てよ!! 悠羽っ! 彼女って誰だよっ!」
彼女?
誰の事だ?
当てはまる相手がいない
そんな疑問を抱きつつ
俺は渋々、部屋に家に帰宅する事にした。
「…ただいま…」
「あっ…おかえり……」
姉貴の様子もおかしい。
「姉貴? どうかした? 悠羽の様子もおかしかったけど。まさか姉貴と悠羽喧嘩でもした?」
「しないわよ」
「だよな?二人本当の姉妹みたいに仲良いし」「そうよ」
「じゃあ……」
「稔紀となんじゃない? 私が稔紀と色々とあった後だし。その後、二人に何かあったならつじつま合うんじゃない?」
俺は部屋を飛び出した。
「隼人!? ちょっと何処……本当、悠羽ちゃんの事となると一生懸命で傍にいたいのね」
俺は悠羽を探しに出た。
悠羽が近くの公園のブランコに腰をおろしている姿を見付ける事が出来た。
「悠羽っ!」
「隼人っ!? 私の事は良いって言ったじゃん!」
「良くねーよ! 何かあったら遅いだろう? 理由は話さねーし! 放っておける訳ねーだろ?姉貴の話だと、姉貴と稔紀さんが色々あったって事だから、お前が修羅場に遭遇して、稔紀さんと喧嘩した。そんな所だろう?違うか?」
「………………」
「……真理絵さん……誤解解いているのに、稔兄全然信じてくれてなくて……真理絵さん嘘ついてる感じじゃないのに……」
「……悠羽……」
「……恋愛しない方が良いのかな? 悩んだり、泣いたり、笑ったり……信頼関係あっての恋人同士なのに……どうして好きな人を信じないんだろう? 好き合ってんのに……愛し合ってんのに……」
私の隣ブランコに腰をおろす隼人。
「楽しい事ばかりじゃないんだよね……恋愛も……隼人は幸せ? 楽しい?」
「えっ?」
「ayaさんと以前キスしてたから」
「……aya…? ちょっと待てっ! お前…まさか…彼女って……」
「えっ? だって…しばらく休みって言ってたから隼人の所に行ったら、ayaさんとキスしてるの見掛けて…」
「あれは、向こうが勝手にして来たんだよ!」
「………………」
「でもっ! 噂になってたから、最初は何とも思ってなくても結局意識して……」
カラン
隼人はブランコからおり、私の手をグイッと掴み私をブランコから引っ張るようにおろしキスをした。
ドキン
胸が大きく跳ねる。
「好きでもねーのにキスなんてしねーよ!」
ドキン
至近距離で言われ胸が大きく跳ねた。
「…隼人…」
「キスだけに真実なんてないかもしんねーけど、これだけは信じて欲しい…俺はお前が……」
「あっ! いた、いた。隼人! 悠羽ちゃん!」
「………………」
真理絵さんが駆け寄ってくる。
隼人は向き合っていた体を横向きに体を向けた。
「隼人…? 何?」
「…いや…何でもねーよ」
「………………」
≪何を言おうとしてたんだろう?≫
「……帰るぞ」
「…うん…」
隼人は帰り始める。
後に続いて真理絵さんも帰り始める。
正直、私は帰り辛いけど……
仕方がない事だと思うから ―――
先に帰り始める二人の後を追う私。
私は隼人の隣に駆け寄る。
「………………」
俺は悠羽の手を握った。
ドキン
私の胸が大きく跳ねる。
「…隼人…?」
「彼女、ayaって子とは事務所の後輩なだけだから誤解すんな」
「…うん…」
「悪かったな」
「えっ? どうして隼人が謝るの?」
「誤解させたから」
「…隼人…」
「なぁに? 何の話?」
と、真理絵さんが尋ねた。
「あー…コイツ、俺が aya って子と付き合っているって誤解してたみたいだから」
「あー、なるほどね~。悠羽ちゃん、大丈夫よ」
「えっ?」
「隼人は悠羽ちゃんしか見てないからと、いうより見えてない?」
ドキッ
真理絵さんに言われ胸が大きく跳ねる。
「えっ!?」
私は隼人を見る。
「何だよ」
「べ、別に」
私は目を反らす。
「つーか…いつも言ってんじゃん! 悠羽への想い。姉貴、コイツ俺から言った所で演技してるとしか思わないから、しっかり言ってやって!」
「クスクス…それはそうよね~? 相手は国民的人気の芸能人だもの。信じろって言うのが難しいわよね~?」
「………………」
「隼人、もっと気合い入れて悠羽ちゃんに言わないと伝わらないと思うわよ」
「マジヘコむんですけど」
確かに隼人に言われると演技してるとしか思えなくて、真理絵さんに言われると、信じてしまいたくなるのは……第3者だからなのか…………
姉弟だからなのか、お姉さんである真理絵さんから見ても、それが分かる位なんだろうか?
……なんて思えてしまうのが不思議だ。
私は隼人が好き
そんな隼人は?
隼人の想いが
届く事あるのかな?
正直
もう少し確信しなきゃ
私は多分
自分に自身がない
だって相手は
たとえ同じ人間で
同じ時間過ごしてるけど
業界の人間なのだから
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