隣人～２つの部屋がつながる扉～

第11話 私達の関係

「悠羽、今日残業になりそうなんだ。だから俺の夜の分は要らないから適当に済ませて構わないから。お金は大丈夫か？」

「うん、大丈夫。夜、適当に済ませるね」

「ああ」

一方、加賀家でも ―――

「隼人、今日仕事は？」

「ない！」

「そう？私、残業になりそうだから、ご飯適当に済ませてもらって良いから」

「了解！」

そして、学校に行く前に隼人と八会う。

「おはよう、悠羽」

「おはよう、隼人」

「なぁ、今日のお前の予定は？」

「学校に行って、バイト行っての、いつもと変わらない１日かな？ 隼人は？」

「俺？ 学校に行って遊んで帰る。今日は仕事ないから」

「じゃあ、バイト変わる？ 絶対売れ行き倍だよ」

「おいっ！」

「アハハ…嘘、嘘。今日は、お兄ちゃん残業だから、ご飯も適当なんだ」

「俺の姉貴も残業らしい。適当に食えって言われた。なぁ、お前バイト何時頃に終わりそう？」

「バイト？ 大体定期的ではあるんだけど、はっきりとした時間は分からないかも？」

「そうか…俺、時間潰すからさ一緒に帰らね？」

「えっ？ でも……」

「たまには良くね？ バイト終わったら連絡しな」

「分かった！ じゃあ連絡する」

そして、その日の、夜7時を廻った頃。

「悠羽ちゃん、後は大丈夫だから、あがって良いわよ」

「分かりました。お疲れ様です。お先に失礼します」

私はバイト先を後に隼人に連絡する。

「只今、電源が入っていない為……」

そういう定番のアナウンスが流れる。

するとメールが隼人から入って来た。

私達は合流し帰る事になり ―――

「なあ、夜ご飯自炊すんの？」

「いや…多分…コンビニ弁当とかで済ませようかと……」

「コンビニ弁当？ じゃあ、俺の奢りで良いからテイクアウト弁当にしね？」

「えっ？」

「ちょっと付き合って！」

私は隼人に連れられ店に寄り私達は帰る事にした。

既に隼人は二人分を予約注文していたらしく時間はかからなかった。

芸能人でも滅多に食べる事が数少ない裏メニューともいえる限定商品の有名なお弁当屋らしくて ―――

その日の夜、美味しく頂いた。

そんなある日の学校での昼食時間。

「ああっ！ ちょっと、私の玉子焼きっ！」

玉子焼きを目で追う視界の先には隼人の姿。

私が食べようと思った玉子焼きは隼人の口の中に吸い込まれるように消えてなくなった。

「信じらんないっ！」

「玉子焼きが食べてって言っていたから」

「言ってないから！ 超能力者じゃあるまいしっ！玉子焼き代っ！」

「いくら？」

「100万円っ！」

「桁多くね？ どんだけ高級な玉子焼きだよ！金粉でも埋め込んであんの？ もしくは稀少価値のある金の卵、三大珍味入り？」

私達の会話のやり取りの度にクラスにクスクスと笑いがおこる。

「稀少価値の金の卵から作った金粉と三大珍味入りの玉子焼きだからっ！」

「うわっ！全部当てはまってるしっ！それじゃ100万じゃ足りなくね？」

私達の会話のやり取りに笑いが更におこる。

学校では滅多にしない私達のやり取り。

「100万じゃ足りない？」

「足りないっしょ？ それに相当する分の対応しなきゃなぁ～」

「相当…する分の……対応？」

「そう。例えば……俺と一週間限定の恋人同士になれるなんてどう？」

「えっ！？」

「一ヶ月でも良いよ。勿論、俺とのキスのオマケつき♪」

「キャー♪」

「おーーーっ！」

「大胆発言っ！！」

頭をポンとする隼人。

ドキッ

不意打ち過ぎる！

「玉子焼き、ごちそうさま♪」

そう言うと私の前から去る。

「本当、二人って面白いよね？ 普通に会話が成り立ってるから凄いと思う」

「私は至って普通だから。隼人が芸能人でもムードメーカーだからじゃない？ 飾らなくて、ありのままだろうから」

「確かにそうかも。誰にでも対等な感じだし。だけど、二人に勝るものはないと思うよ」

「そうかな？」

「そうだよ」

私達は話題を変え色々話をする。

そう言ったものの

確かに余り変わらない隼人だけど

プライベートでしか見れない姿もあったりする

ちょっとクールだったり

普段よりも優しい隼人

良く意地悪もしてくるけど

だけど

学校では滅多に意地悪はしてこない

稀に学校で意地悪をしてくる時は

プライベートの隼人が

学校の姿に見え隠れしている

二人きりの時に見せる

隼人の行動は

正直

私の胸を狂わせる

それにドキドキしたり

トキメいたりしている自分がいること

ズルすぎ！

業界キャラで役作りでもなく

本音でぶつかっていると思われるけど

私はそこをまだ受け入れきれなくて

演技って事にして終わらせてるけど

多分

隼人の中では

俺の全てを受け入れてもらうように

本音でぶつかっているんだと ――――

付き合ってもいない私達

キス止まりの関係だけど

この関係を

どういう関係というのだろう……？

それから一ヶ月が過ぎ、私は好きな人が出来た。

だけど、別にアピって仲良くしていた訳でもなく見ているだけで精一杯だった。

その後、しばらくして彼女と思われる人と一緒にいる所を見掛け、私の片思いの恋は幕を閉じた。

私はバイト先の奈津季さんに話をした。

「私に恋愛できるんですかね？」

「まだまだ沢山の出逢いはあるから焦らなくても良いわよ。必ずタイミングはあるから」

「タイミングかぁ～……」

「そうよ」

想いは大切で

失うことになっても

きっと勇気というものは

出るということ

結果が

YES でも NO でも

想いは伝えない限り

何も変わらないし

始まりもしないのだから…………