第9話 街中デート。今日だけ、あなたのシンデレラ

友志先輩と付き合って1ヶ月。


デートというデートをしていない私達。


私が憧れていた恋人同士の学校ならではの一緒に登下校の通学デートもなく、


お互いバイトしているのもあってか、休日のデートをするにも、お互い休みの日程を決めてからでないとデートが出来ない。


これは付き合っているといえるのだろうか?


私が憧れていた夢のデートは全くと言って良い程、実現していない。




そんなある日、お互いの都合がつき、初めてと言って良い、デートをする事になったんだけど ――




待ち合わせ時間になっても先輩は現れないのだ。





一時間……




二時間……



と、待ち合わせ時間から過ぎていく




空から雨が降り出す。




もう少し待ってみようと思い待ち合わせ場所にいるものの全く現れる様子もなく、



連絡するものの連絡がつかず ―――




しばらくして、雨は多少小降りになったものの私は傘を持たない為、そこそこ濡れている状況だ。




「もうっ! 帰るっ! 待ちぼうけなんて最悪だよ!」



ショートメールで帰る事を告げ、その場を去った。



その直後、再び雨が降りだし、私は雨の中、走って帰る。





その途中 ―――




「それでねー……友志……」

「うん」



そういう会話が聞こえ、声のする方に視線を向けると、女の人と相合い傘をしていて、女の人は友志先輩の腕に自分の腕を絡めているという、2つの人影に遭遇した。



「……友志……先……輩……?」

「悠羽ちゃん? あっ! いや……これは」

「友志? 誰?」


と、女の人が先輩に尋ねた。



「……彼女……」

「えっ!? 彼女!? 友志、また可愛い子に告白したの!?」

「……ああ……」

「もうっ! 駄目じゃんっ! ごめんねー、友志、私いながら可愛い子にすぐ告白しちゃって……もう何回もこういう事あって……」


「何回も……?」


「………………」


「本当にごめんね。ちょっとっ! 友志っ! また、こんな可愛い子傷付けてっ!」

「……ごめん……」

「全く! ……ていうか……今まで、一番可愛いじゃん!」

「だろう?」

「だろう? じゃないから!」



「……私を待ちぼうけさせて……先輩は……私以外の女の人とイチャイチャぶりですか? 本カノ(彼女)いたなんて……」



「……ごめん……悠羽ちゃん……」


「……もうっ! 良いですっ! こっちから別れてやりますからっ! もう2度と今後一切、私に近付く事も顔も見せないでっ! 本っ当っ! ……馬鹿みたい……雨の中……待ちぼうけなんて……」



私は走り去る



「あっ! 悠羽ちゃんっ! 危ないっ!」




ブッブーー




道路に向かって信号を確認する事なく走り去る私の前に一台のダンプカーが ――――





ビクッ




大きいクラクションの音が響き渡る中、驚く私は足がすくんで、その場から動けずにいた。




グイッと誰かが私の腕を掴み安全な場所に移動させる人影。



「傘、持ってな」



そう言うと私に傘を渡すと、私の前から離れた。



≪……誰……?……≫



顔の確認も出来ないまま、後ろ姿を見つめる。



「悠羽ちゃんっ!」


と、私の元へ駆け寄る先輩の前に立ち塞がる人影。





「本カノ(彼女)いながら、彼女に告白したんですか?」



「……君は……」


「雨の中何時間も待ちぼうけさせたあげく、あなたは他の女の人とデート……酷くないですか?」


「………………」



グイッと先輩の胸倉を掴む人影。



「俺が通らなけければ……もしかすると彼女は

……あんた自分のやってる事分かってんのかよ!……本当はすっげー殴りたい所だけど立場上そういう訳にはいかねーし……運が良かったですね! 先・輩」



掴んだ胸倉を離す。



「一体どれだけの女性傷付けてるんですか? これを機に、その癖辞めた方が良くないですか? そのうち本命の彼女からも愛想尽かされて相手されなくなりますよ! ……あんたみたいな男(ヤツ)に彼女を……悠羽を渡せるかよ!」



ドキン

私の名前を言われ胸が大きく跳ねる。



「………………」


「知ってたら……最初から悠羽の事、任せる事なく止める事出来たっつーのに……マジムカつく……」



ドキン




「本当……悪い……」

「俺に謝られても困りますよ……謝るなら悠羽にだろ……」


「………………」



先輩達は去り始め、私を助けてくれた人影が振り返る。



ドキン



≪えっ!? 嘘……≫




まさかと思ったけど、そこにはいつも顔を合わせている隼人の姿があった。



「………………」



私から傘を受け取る隼人。


そして傘を閉じた。


気付けば雨はあがっていた。



「……隼……人……」

「今日から、またフリーだね。藍上 悠羽さん」



優しく微笑む隼人。





ドキン



こんな時に……


隼人の笑顔はズル過ぎる……


本当は今すぐ泣きたい位なのに……




私は下にうつ向く。




「ねえ……本物?」

「ドラマの撮影?」

「えっ? でもカメラなくない?」



周囲がざわつき始める。



「………………」



「やっぱり俺が悠羽の事を幸せに出来る男なんだろうな」



頭をポンとする隼人。



ドキン


私の手を掴む隼人。



ドキン


「なあ悠羽」

「な、何?」

「俺とちょっとスリル感味わね?」

「えっ?」



「デートしようぜ!」


「えっ!? デートぉぉっ!」



つい大声を出してしまった。




「キャー!今デートって言わなかったー」



笑顔を振り撒きサービス精神全開の隼人。



「嘘ーっ! ヤバーイ! 本物だよーっ!」



徐々にざわつく周囲。



「隼人君だ!」

「加賀 隼人君だよ! キャー」

「マジ本物?」


「ごめん! 今日はみんなの相手出来なくて。今日は彼女限定なんだ。飛んでもない彼氏のせいで彼女傷ついちゃってるから」



「キャー」

「ヤバーイ!」

「マジ本物だよー」

「話しかけられたー」



「今日限定、特別に選ばれた、たった一人だけ。たった一人のみデートが出来る…だから…みんな内緒な♪」



グイッと私の手を掴む隼人。



「ごめん! 通して!」



そう言いながら、そこから走り去る。




「なあ、悠羽。泣きたいなら泣いても良いけど、どうする?」

「泣く所か…驚く事しか出来ないし…」

「胸貸そうか?」

「だ、大丈夫だから」



バサッと羽織っていた洋服を脱いだかと思ったら私達を隠すようにすると、キスされた。



ドキン



「元気になるおまじない…悠羽は、今から付き合ってもらうから」

「えっ?」


そう言うと再び手を掴み街中を走る。





雨あがりの後


手を繋いで走る時間(とき)



人気あるあなたと


手を繋いで街中を走る


どれだけの人間(ひと)が


求めてる?


憧れてる?




この時間


この瞬間


この手が離れるとき


またお互い


別の道を歩き出すのかな?





私達は、隼人が常連で行く店に洋服を買いにショッピング


濡れている洋服から着替える為だ




「ちょっと隼人! 私持ち合せないよ」

「お前は出さなくて良いの」

「えっ? いや……それは…」

「俺がお前にプレゼントするんだよ。今日限定の俺だけのシンデレラだから」



ドキン



「……隼人……」


「俺、雨の中、お前見かけて放っておけなくて正直声かけようと思ったけど、彼氏と待ち合わせかな? と思って様子を見てたけど……」




「…………」



「あんな事なるの分かっていたら早く声をかけてあげるべきだったなぁ~って……お前が笑顔になるならと思ってデートに誘った。どうせ帰ったら泣くだけだろうし」



隼人はバレないように出来る限り変装し、そんな私もさっきの大騒動により変装させられた。


私達はゲーセンに行ったりして1日を楽しんだ。



マンションに帰り。



「後でこっちに来な」

「うん、分かった」



私は加賀家に行く。


テーブルを囲み話をする私達。



「今日は、ありがとう」

「別に。お前が笑顔になって元気になれば良いし」


「そっか……」

「また、イイ男(ヤツ)見付けろ! 何回も、何回も恋して最終的にはお前の居場所は俺になるだろうし」


「何それ! 相変わらずだね。隼人」

「いや、絶っ対! 俺の隣は悠羽だから」

「何処から、そんな自信が?」

「それは……」



グイッと引き寄せキスをした。


ドキン



「俺の人生には、お前が必要だから」




ドキン

至近距離で言われ私の胸が大きく跳ねる。




「いつか必ず、お前に言える時がくれば良いんだけど……人生も運命も……未来も分かんねーからな」


「隼人……そうだね」


「それにもし俺が真面目に言った所で、お前は演技としてしか取らねーし。マジ難しいんだけど」


「うん、そうだと思うよ。私の心(ハート)に突き刺さる言葉で信じ込ませなきゃ。例え好きだったとしても」


「そうだろうな……お前にマジ告する時、一苦労しそうだな」




私達は話題を変え色々と話をしていた。





















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