第4話 最悪なバイト先

「やったぁぁー! バイト決まったーっ! 念願のバ・イ・ト。ラッキー♪」


「ただいま」

「あっ! 稔兄、稔兄!おかえり、おかえり! 聞いて、聞いて、聞いて!」

「帰って早々どうした? 落ち着け悠羽。おかえりも、聞いても、一回で良いから」


「さっきバイトの採用が決まった! 連絡あった所なんだ!」

「おっ! そうかぁー、良かったな!」

「うんっ!」

「で? どういうバイトなんだ? コンビニか?」

「コンビニじゃないけど、ファーストフード店」

「へぇー良いじゃん! 頑張れよ!」

「うんっ!」




そして、バイトを始める事になり、その日のバイト終了後の事だった。




「君、可愛いし相手してくれればバイト料倍にしてあげるよ」


「えっ!?」


「面接の時から可愛いなって思ってたんだよ。やっぱり今の子はお金いるだろうし簡単に平気で相手してくれるだろう?」


「えっ? こ、困ります……私はそんなつもりで……」



グイッと肩を抱き寄せられた。



ビクッ

肩が強張る。



「や、やだ……離して……下さい……」

「バイト料倍になるんだから、こんな良い話はないだろう?」



太ももを撫でるように大きい手が這う。



「や、辞めて……下さい……」



私は押し離すようにするが力が入らない。



「そんなに怖がらなくても良いだろう? 初めてじゃないんだろうし」



「わ……私は……た……例え……倍になろうと……むやみに体を……あ……預けません……」


「チッ! 話しの分かんねぇ高校生の子供(ガキ)だなぁ!」



「………………」



グイッと力強い力で両手を押えつけられ、気付いたら壁に押し付けられ、相手からべったりと下半身を押し付けるように体を密着させられ、身動きが取れない状態にされたかと思うと、唇を押し当てるようにキスされた。



「……っ!」



そのまま唇が首スジを這う。



≪や、やだ……≫



すると、再び押し当てるようなキスをされ、私の口の中に割って入る熱(舌)がある。



≪やだ……気持ち悪い……≫




私は暴れ抵抗し、私が偶然に相手の股間に当たったのか、うずくまっている。



「今日限り辞めさせてもらいますっ!」



私は頑張って声を振り絞り言うと足早に店を飛び出した。




「信じらんないっ!」




私は、マンションの近くの公園で口を洗う。

未だに感触があるような感覚が嫌で仕方がない。



「………………」


「まだ……違和感がある…最悪だよ……せっかく……バイト決まったのに……」



私は悔しさと腹立だしさに涙がこぼれる。




そこへ ――――




「悠羽」

「……隼……人……」

「なにしてんの? お前」



私は隼人の胸に飛び込みたかった。



「……隼人……こそ……」


「俺? 俺は小腹がすいてコンビニ行った帰りなんだけど、公園にある人影に気付いて、ちょっとドキドキしながら近付いて、お前だって分かって声かけた所」


「……そうか……」



私は背を向けた。



「どうかした? 」


「………………」


「何かあった?」


「………………」


「まあ、言いたくないなら無理に聞かないけど」



話したいし、むしろ聞いて欲しい位、ヘコんでいる私。



「……バイト…」

「バイト? バイトがどうかした?」

「……辞めちゃった……」

「えっ!? まだ一ヶ月も経ってないじゃん!」

「稔兄も心から喜んでくれてたのに……」


「……悠羽……」

「女子高生って……良いものじゃないね……」

「えっ!?」

「君可愛いし相手してくれればバイト料倍になるって……」

「えっ!? ヤっちゃったの? もしくはヤられた?」



私は振り返る。



「ヤってないですっ! むやみに体を預けませんって……今日限り辞めますって言ってきたよっ!! だけど逆ギレされてキスされたっ!」


「キスされたぁぁぁっ! 何だよそれっ!」



グイッと私を引き寄せるとキスされた。



ドキン

そのキスは長かった。



「消毒」




ドキン


至近距離で言われ胸が大きく跳ねた。


そして、体を離す。



「飛んでもねぇ奴だなっ! でもヤられなくて良かったーっ! マジ焦ったし! もし強制的にされてたら俺、芸能人なんて忘れて、芸能界辞める覚悟でマジギレしてたかも」


「隼人……」


「でもキスされたのは許せねー! 悠羽、駄目だからな。俺以外に体を預けたら」


「いや……それは……問題発言……」

「キスした仲じゃん!」


「それは……で、でも、最初のキスはジコだよジコ。さっきのは消毒してくれてちょっと嬉しかったけど……」


「可愛い♪ でもちょっとって事は物足りない感じ?」

「ち、違っ……」



≪確かに相手にあんなキスされたんじゃ正直、まだ物足りなさはあるけど……≫



「言っておくけど最初のキスはジコじゃなくて誓いのキスだから」



「だって俺……」



私の耳に唇を寄せると耳元で言った。


ドキン



「えっ?」



『お前は俺だけの女であって欲しいら』



耳元で、そう言われた言葉がこだまする。


私達は向い合う。



「本当マジな話。一先ず今はこんな感じだけど将来的に? 俺、お前が傷ついて泣くのとか嫌だし。今のままのお前であって欲しいし、お前の全て俺が受け入れたいかな?って思うわけ」


「隼人……嬉しいんだけど信じろっつーのが難しいような気がするんだけど……」

「今はまだ、お前の人生楽しめば良いんだよ。俺自身の想いだから付き合うとかじゃねーし」


「……隼人……」


「好きな人出来たら、それはそれで良い。彼氏が出来たら出来たで良いんだよ。だけど、お前の事を本当に手放したくないと思ったら、俺、お前にマジ告するから」



ドキン

胸が大きく跳ねた。



「………………」


「まあ言った所で演技してるみたいな感じでからかってるって思われるんだろうけど……」


「うん、多分信じないと思う。でも、私も隼人が好きだったら信じるかも? 戸惑いながらも隼人に確信求めて」


「悠羽……」

「隼人、約束だよ。お互いの想いが1つになる時が来ると良いね! そうしたら隼人と同じ人生歩んであげれる自分がいるから」


「悠羽……そうだな。でも何かあったら俺の隣は悠羽の為にすぐ開けてあげれるように鍵かけとく」


「分かった。じゃあ、必要な時に開けて貰おうかな?」


「良いですよ。藍上 悠羽さん。……なあ……悠羽……」

「何?」

「もう一回キスして良い?」



ドキッ

改めて言われると胸が大きく跳ねる。



「えっ?」


「いや……さっきのキスだけじゃ消毒仕切れてないと俺の中で思って……お前も物足りない感じだったし……まだ何かされた感じだったんじゃ……お前、泣いてるみたいだし……」



ドキン



「だ、大丈夫だよ……キスしかされて……」



私を抱き寄せキスされた。


唇が離れ、もう一度キスされた。



オデコ同士をくっつける隼人。



「……いきなりキスしてきて……気が済んだ?」

「悠羽は?」

「私は……別に……」



私は隼人を押し離し背を向ける。



正直、物足りなさはある。



好きでもないのにバイト料倍になるから。

それだけの為に、私の唇は奪われた。

プライベートでもあんなキスされた事ないのに、あの感触は考えるだけで嫌になる。

正直あの事を忘れる程キスしたい位だ。



「だ、だいたい私達は恋人同士でも何でもないよ」

「そうなんだけど……」



ちょっとイジケ気味で御不満気な隼人が可愛く見える。



「ほら! 帰るよ!」



私は帰り始める。



グイッと引き止め背後から抱きしめられた。



ドキン


「ラスト一回……大人のキスしよ♪」

「えっ!? お、大人のキスっ!?」



グイッと振り返らせ、後頭部を押し、私の唇に押し当てるようなキスをされたかと思うと何処か優しくて私の唇の中に割って入る熱(舌)があり、濃厚で深いキスをされた。


相手にされたキスをまるで忘れさせてくれるように…………


唇が離れ再び優しいキスをされ角度を何度も変えて…………



「消毒完了!」

「は、隼人が満足するキスしただけじゃん!」

「それ位の勢いがないと駄目だし! 悠羽の唇を奪っておいてマジ許せねーんだけど!」



私は隼人に抱き付いた。


「悠羽?」

「だけど……嬉しかったよ」

「えっ?」

「隼人にされたキスで一気に嫌な事が吹き飛んだ。バイト辞めたのはイタイけど……隼人と似たようなキスされてかなりブルー入ってヘコんでたから……」


「マジかよっ!! クソ親父(おやじ)マジムカつく! 」



私は隼人に自分からキスをした。


正直恥ずかしい。


恋人同士じゃないって自ら言っておきながら、キスしてしまった私。



「隼人のお陰で少し、ううん凄く気持ちが落ち着いた。ありがとう♪ 隼人!」



隼人はキスをした。



「悠羽……可愛すぎだから」

「えっ?」

「だけど、お前が嫌な思いしていた事が聞けて良かった。帰ろうぜ! 悠羽」

「うん!」
























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