声劇台本2人用「タイトル」

コペル

「タイトル」



男女不問


A:おはようございます!


B:あぁ…おはよう…随分早く来てたって?


A:緊張しちゃいまして、それに竜王を待たせるなんて、失礼ですから


B:なるほど、しっかり敬意は払って貰えてるんだね


A:勿論…ここまで来れたのも、たまたま、運が良かっただけですので


B:運ねぇ…


A:そうです、自分の中では、負けるのは自分の実力ですけど、勝てるのはその時の運です


B:…そうかもしれないな、今日も運が良ければ良いけど


A:やめて下さい、「B」竜王は実力で勝ち取ったじゃないですか!


B:いいや、私もたまたま運が良かっただけだよ、でもまさか、6組からここまで来るとは…ね


A:多分…6組だから、ここまで来れたんだと思います


B:相手が油断してたから?


A:勿論それもあると思います


B:他には?


A:ここまで来る前から、下位クラスのみんなが、応援してくれるんです


B:なるほど、でもその期待が、プレッシャーに感じないか?


A:正直、最初はキツかったです


B:だろうな


A:でも、トーナメントが進んでいくと、それが力に変わるんです


B:じゃあ、応援してくれるみんなの為にも、謝らないとな


A:謝る?


B:この7番、期待させた事だよ


A:竜王…


B:憎いと思わんでくれ、コレが竜王の座に居る、私の責任だ


A:……わかりました、あっ、どうも


B:お?やっと来たか、もうそろそろだな


A:やっぱり取材陣が入ると、余計に緊張します


B:この世界に居れば、そのうち慣れるさ


A:いや…でも、今までずっと6組ですので


B:それが気になってるんだよ、ここまで来れる力があるなら、何故昇給しない?


A:それが…


B:なんだ、気になるじゃないか


A:負け筋が見えると…棋譜汚しになるので打つのを諦めてたんです


B:勿体無い…


A:そうやって師匠にも、ずっと言われてます


B:自分が気付いても、相手はまだ探してる可能性だって、あるんだからな


A:はい…だから今回は、自分が明らかに詰むまで、打ってみたんです


B:そういう事か


A:粘って粘って、根気強く打っていると、ここまで辿り着きました


B:ここまで「は」、だけどな、まぁ長い戦いだ、今日から7番、宜しく頼むよ


A:はい!こちらこそ、旨を借りるつもりで、全力で戦わせて頂きます


B:望むところだ、じゃああちらの準備も、済んだみたいだから、並べよう


A:はい!お願い致します


B:先手は?…ん?あぁ「A」さんか、じゃあ適当に撮って


A:え?あぁ、そっか…


B:そんなんじゃ、これから8時間持たないぞ?


A:そっか…トーナメントと違って、今日と明日の2日掛けて打つんだ…集中しないとっ


B:じゃ、改めて


A:宜しくお願い致します


B:宜しく、さて、どんな将棋を指すのかな…てっきり名人が、来るとばかり思ってたから、あまり研究してないんだよな…


A:竜王がこれまで採用して来た戦法は、「アレ」だから…多分今日も使って来る、だから組ませちゃダメだ…序盤の序盤、ここからの10手が重要なんだ


B:7、6歩…角道を開けて来たって事は…角交換を誘ってるな…挑戦者の誘いに乗るのも悪く無いが…私はいつもの、勝てる将棋を打つよ


A:8、4歩、やっぱり誘いには乗ってくれないか…居飛車党に居飛車で対抗出来る程、まだ研究出来て無いし、ましてや竜王だ…ここは


B:6、8飛車…四間飛車か…急戦にしようとしてるのか…組まれるのが嫌なのか…両方だろうな…なら


A:3、4歩、角道を開けたって事は、誘われてる…いや試されてるのか、焦るな、これまでやって来た事を思い出して、考えろ


B:6、6歩…なんだ角交換しないのか、じゃあ遠慮なく


A:6、2銀、棒銀も匂わせつつ、竜王の得意戦法「居飛車穴熊」に、組みに向かうのか


B:3、8銀…なるほど、よっぽど私の「居飛車穴熊」が怖いのか、でも


A:4、2玉、動き始めた…もたもたしてると、勝ち目が薄くなる


B:4、6歩…振り飛車と棒銀か、それじゃ少し遅いんじゃないか?


A:3、2玉、どんどん向かってく、でも、まだイケる


B:3、6歩…そうだろうな、銀を上げて、角道を通し、3手1組で、拠点を取りたいんだろうけど


A:3、3角、むやみに動けない…でも、だからここなんだ


B:1、6歩…手抜いて来たか、そうすると飛車先が、ぬるくなるぞ?


A:8、5歩、さすが竜王だ…痛い所ばかりついてくる


B:7、7角…最悪、飛車角交換もやむを得ずって所か


A:2、2玉…香を上げれば、あとは金を寄せて穴熊か、でもまだ、まだ戦える


B:7、8銀…角の防御と飛車が守り少し固くなったか、でもいつまで、居玉でいるつもりだ?


A:5、4歩、そろそろ怒らせたかな?でもコレは居玉が良いんですよ、竜王


B:6、7銀…本当に居玉で戦う気か?居玉で私に勝てると思ってるのか?…やっぱり6組だな…


A:5、2金右、さすが竜王、手堅いな…それでもこの10手で追いついた!


B:3、7桂!?コイツ…もうここまで形は出来てるんだぞ?なのに急戦を仕掛けて来るのか?


A:1、2香、揺らがず穴熊か…このメンタルは見習わないと


B:5、6銀…居玉の脆い所を固めて来たか…じゃあ…ん?待て…そろそろ昼か、このままみすみす手番を、渡してやる事も無いか…時間はまだ、じゅうぶん残ってる…


A:随分考えてるな…ここからなら、3、3の角の効きを活かして、攻めて来るか、1手抜いて出方を見るか、穴熊をもっと固くする事だって出来るけど、選択肢が多いから悩んでるのか?あの竜王が?


B:困った顔をしてるな、悩んでるな…まぁ初タイトル戦だから仕方無いか…こんな時間の使い方だって、出来るんだよ


A:ダメだ…集中しろ、のせらせるな、まだ序盤が上手く行っただけなんだから、落ち着け…時間だってまだまだあるハズだ…


B:さて、昼は何にしようか…盤上の、この局面はまだ無理する必要も無いし、次はココだと見えている、大丈夫だ


A:竜王…もしかしてこのまま休憩に行く気か?でも、なんでわかるんだ…


B:不思議そうな顔してるな、多分なんでわかったんだ…って思ってるんだろうな


A:手番を渡さない為に、あえて打つ手も確定してるのに打たないのか…


B:まぁ持ち時間多少使っても、こっちの方が有利と見たからね


A:タイトル戦ともなると、盤上以外の駆け引きも重要なんだ…勉強になるな…


B:良し…そろそろ良いか、(咳払い)あと10分足らずで時間でしょう?昼食にしたいんだが、良いかな


A:…はい、わかりました


B:食事場所はわかるかい?


A:えぇ、ありがとうございます


B:じゃ、また


A:うーん…今の所どうなんだろ…おおまかには予定通りだけど、ここで安心すると、一気に持って行かれるよな…


B:なかなか面白い序盤だったな、棋譜を汚したくないって言ってたが、居玉のままここまで運ぶとは


A:でもいつまでも居玉だと…さすがに竜王に失礼なのかな…


B:さすがに6組でも、将棋指しなら「居玉は避けよ」の格言を、知らない訳でも無いだろうしな


A:あーー、いつまでも考えたって仕方無い!今はしっかり食べて、ブドウ糖を補給しておかないと


B:ここでの昼は、やっぱりうなぎで正解だな…さて、これから「A」はどう攻めて来るか…


A:ここの天ぷら…美味しかったな…夜も同じ物にしようか…いや、でもなぁ


B:このまま四間飛車で来るのか、美濃囲いで自陣を厚くするのか…私の穴熊がもうすぐ完成するが…間に合うかな?


A:良し!あんまりダラダラしてても仕方無い、気持ち作る為にも、早めに戻ろう


B:さて…食事も済んだし、この1本吸ったら戻るか


A:「B」さん遅いな…もうそろそろ、40分経つんだけど…やっぱりタイトル保持者は違うんだな


B:ふぅ、おやおや…あんまり気張ると後でバテるよ?


A:「B」さん…あ、すいません竜王


B:気にするな、緊張もほぐれて来た証拠なんだろ?別に、好きに呼んで良いから


A:ありがとうございます、ではタイトル中は「B」さんと、呼ばせて頂きます


B:わかりました、そろそろ時間だね


A:そうですね、続きもお願い致します


B:こちらこそ、私の手番だったね


A:はい!


B:じゃあ……


A:5、5歩、やっぱりそこか…角道まだ開けて無い分、仕掛けるのはまだ早いか


B:4、5銀…急戦から仕掛けて来ないのか、まぁ長引くと、自陣を固めてる分、こちらが有利だが?


A:8、4飛車、4スジがまた厚くなるのか、右で展開させてるからこそ、左からも、ゆっくりプレッシャー掛けてくるのか


B:3、5歩か…なるほど銀で角を狙いに来たか、何を狙ってるかわからんが面白い、試してやろう


A:同歩、これは試されてるのか…


B:どうした?来ないのか?将棋はビビったら負けるぞ?


A:他に…何かいい手は無いか…他に…


B:一度打つと決めてから考える事と、探しながら考える事は、似てるようで全く違うぞ?


A:ダメだ…でも、もう行くしかない!


B:2、5桂…歩の前進を嫌うか、居玉だから仕方無いか


A:やっぱり自陣の弱い所を痛いぐらいついてくる


B:さぁ…コレならどうだ?


A:4、4角、相手が角道閉じてる今がチャンスだな


B:6、5歩…なるほど、この機会を伺ってたのか、でもそんなのは、読んでるぞ?


A:多分…バレてるなコレ…対居飛車穴熊用に、研究してきたんだから、大丈夫、イケる…ハズ


B:どんな研究して来たかは、わからんが…その辺のプロやアマと違って、今戦ってるのは「竜王」の私だぞ?


A:2、4歩、角を逃がさず、桂馬を取りに来たのか…


B:この局面じゃ角は遅かれ早かれ、見切らないと後々響いて来るのが、目に見えてる


A:枚数は確かに多いけど…


B:こちらの角と銀、桂馬で交換するなら、くれてやるぞ?


A:駒得だけど…本当に良いのかな


B:6、4歩…まぁ少し駒損だが、枚数はこちらの方が多い分、コレでいいんだ


A:この戦法じゃ角が何より必須…そこまでは、まだ読まれてないのか?


B:狙いはわかってるが、誘いに乗るのも「竜王」の務めだよ


A:2、5歩、ここまで伸ばして来た銀だけど、仕方無い…ここで角を取る!


B:すまない、少し甘いものが欲しいんだが?いいかな、フルーツ盛り合わせで


A:あっ…すみません、自分もショートケーキ貰えますか?


B:じゃ、宜しく頼むよ


A:もうすぐ、中盤戦だからな、判断ミスしないようにしないと


B:4、4銀…2枚捨ての角取り、よほど角が必要だったんだな、とりあえずこの銀は、貰っておこうか


A:当然の同歩、さてここから忙しくなるぞ、ミスだけはするなよ


B:5、5角…角を上げるか、序盤はこちらの方がやや良かった分、少し焦ってるのか?


A:3、2桂、遊んでる歩をしっかりカバーしつつ、玉の囲いをもう1枚厚くか…それなら


B:3、3歩…ここで持ち駒を使うか、桂の頭なら玉を上げて、囲いから少しでも上げようと…考えたな


A:同玉、良し!玉が浮いたなら、香取りも匂わせつつ、ここに


B:4、5角…角スジの歩の頭にもう1枚の角だ?コイツ、この角並びを狙って銀を捨てたのか


A:5、4歩、さすがに狙い過ぎたか、「B」さんも少し苛立ってる気がするな…ここは1度引いて、立て直すか


B:6、6角…ここは引くしか無いだろ?せっかく取った角をこんな所で、渡したく無いよな?


A:2、2玉、ここで玉を下げたい気持ちもわかります…でもこの角、飛車取りに掛かってますよ?


B:8、4角…そういう事か、右で展開させつつ左の急所からも攻め立て、駒得していくのか


A:飛車角交換にはなりますけど、1度盤上から2枚落とさせて貰いますよ


B:受けの将棋で、ここまで来た私に、その攻めが何処まで続くと思ってるのか、楽しみだよ


A:4、5歩、コレで盤上に両駒がある分、優位になって来た、さらにコレで!


B:6、3歩成り…飛車が抜けた途端、イキイキと動かして来たか…今日の所は、ここまでだな


A:アレ…「B」さん、また昼と同じで、指す気が無くなってる


B:そろそろ、封じて貰いたいんだが?


A:え!もうですか!?


B:あぁ、ここまで来たら封じようと、決めてたからね、それに、そろそろ時間だと思ってね


A:昼の時も思ったんですが…何故そんなに時間がわかるんです?


B:「A」さんと違って、私はタイトル戦が長いから体感的に、わかるようになってるだけだよ


A:経験ですか…


B:そういう事だ、さ!今日はこれから夕食を済ませて、ゆっくり休もうじゃないか


A:せっかく乗って来たのに…


B:だからだよ、ただ向かってくる挑戦者と違って、こちらは防衛戦になるからね、慎重に考えてるんだよ


A:重さが違うと?


B:わかりやすく言えばね、タイトル防衛してこそ真の「竜王」だ、と言う事だよ


A:わかりました


B:だから、そうやすやすと、1つの勝ちも譲らんよ、相手が6組だろと、タイトル保持者だろうとね


A:ありがとうございます


B:じゃ、続きはまた明日


A:はい…では失礼致します


B:さて…どうするか……形勢は明らかに分が悪い…しっかり研究と対策をして来たと見よう


A:このまま行けば…この1番は取れる…ハズって浮かれてると、足もと掬われるから、まだ安心するのは早い、もう少し部屋で、この後研究するか…


B:この後、「A」さんはどうするか…今更だが研究してみるか…勝ちスジもまだ残ってるかもしれん


〜翌日〜


A:どうしよう…寝たり起きたり繰り返して、全然休めて無い…今日でこの1番決まるのに…


B:なんとか、このままペース乱さず進めば、すぐに詰むなんて事には、ならないな…


A:序盤がぴったりハマったからこその、左側の拠点が作れた訳だから、これからしっかり読んで行かないと


B:ただやはりこちらの攻めの起点が、やや薄いのが難点だ…


A:時間も近づいて来てる…うん、それじゃ…そろそろ行くか


B:まぁ、ここからは、1手、1手集中力切らした方が負けると思った方が良い…行くか


A:手番は「B」さんの封じ手開けて、こちらか…この後は…あ、おはようございます


B:おはよう、夜はゆっくり出来たかな?


A:それが、全然休めて無くて…


B:だろうね、でもそれが理由で負けた、なんて思わんでくれよ?


A:勿論です!負けるのは、自分がまだまだ弱いからです


B:弱い…ね、昨日は上手く、してやられたよ


A:こちらの誘いに、「B」さんがノッて頂いたからですよ


B:でも、今日はそう上手くいかんよ?


A:覚悟しております


B:良し、定刻が来たようだから、開けて貰おうか


A:お願い致します


B:あぁ、宜しく


A:同銀か、コレで2スジの金が浮いた!狙うはココ


B:6、1飛車…金、桂の両狙いかつ、飛車成り、か


A:4、2金上がる、桂取りから左の拠点を作れる!


B:8、1飛車成る…厄介なのが居るが…まぁ想定内だ


A:3、4角、ここで守りの角打ち…竜を作らされたんだ…


B:4、5歩…よっぽどさっきの角が嫌だったんだな…


A:同角、守りの角スジに竜、攻めなら桂…やっぱり少し急ぎすぎたかっ


B:7、8金…飛車の横付けなら、金も活きるか


A:6、4銀、今度はこっちが誘われてる、どうする…乗るか?いや、ここで余計な事は出来ない


B:9、1竜…残念、香取りを選ぶか、角は退いてくれないか


A:5、5銀、左は取れた分、右がまた厚くなって来たな


B:6、7桂…手駒が減ってくれるのは、ありがたい


A:8、6歩、角の効きを活かしての左攻めか


B:同歩…遊んでた歩のおかげで、少し左が緩んだな、次は…来てくれるか?


A:6、4銀、竜を上げたいのか…良し…ここならやれる


B:おお、6、1竜…銀の誘いは断われ無いよな?


A:8、8歩、桂、金狙い…クソ飛車の守りが裏目に出た


B:6、4竜…結果的に銀、桂交換になったが、居玉相手に、と金が出来たなら、詰めろも近いぞ?


A:8、9步成り、自陣も薄くなって来たな…でもここまで来たら攻め続けないと


B:6、1竜…手抜いた訳でも無さそうだが…その打ち方は、少し遅くないか?


A:3、3銀、堅い…玉隣の金も3組1手で重い…


B:4、7香…角、金の両狙いか、本命は金だろうが、ここで角はもう渡せん


A:3、4角、金より角なのか…さすが受け師の「B」さん


B:4、3歩…足りないのに気付いて、叩きに来たか


A:同金右、良し!ここから玉横崩しに行ける!


B:同香成り…金を上げて下から角狙いか…くっ仕方無い…


A:同金、ここから角を仕掛け…え?時間…お昼ですか…わかりました


B:思わず打ってしまった…いや打たされたのか…


A:「B」さん…


B:あぁ、わかってる、気にせず行ってくれ


A:失礼致します


B:相手は居玉なんだぞ?何をやってる、ここからなら、展開出来るだろ


A:大丈夫…かな…いや、でもここまで来るのに、こっちだって沢山背負って来たんだ…勝たないと


B:このままじゃダメだ、食事して切り替えよう


A:さて、終盤戦に向けてしっかり食べるか!今日は豪勢に、うな重!


B:今日は天ぷら定食にしたんだったな…


A:えっ…美味し!?何この絶妙な焼き加減、タレもクドく無いし…うわぁ昨日も、うな重にすれば良かった


B:うん…やっぱり美味い……


A:はぁ…満足満足、この1番最後の終盤戦も、これで頑張れる!


B:良し…行こう、なんとかペース戻さないと


A:そろそろ戻らないとっ


B:ふぅ…この局面だと……やっぱりここに…


A:あっ、遅くなってすみません


B:ん?あぁ…まだ規定の時間過ぎて無いだろう


A:でも、「B」さんを待たせてしまって…


B:気にするな、どうする?少し早いが始めるか?


A:用意出来てるなら、始めたいです


B:じゃあ…宜しく


A:お願い致します、えーと…この局面、やっぱり角で合ってる


B:7、5角…そのまま馬で仕掛けて来たいよな、私だってそう思う…だからここなんだ


A:4、1歩、底歩か、これで竜を止めて、取って、取ってにするのか


B:3、1角成る…平気で突っ込んで来るか…まぁ攻めの手が少し落ち着くなら…良し


A:同玉、王手の1手だから、取るしか無いですよね


B:5、2銀…さっきから迷いなく打ってくるな…詰めろには……まだなってないぞ?ここはチャンスかもしれん


A:4、2金、ここで下がってくれたら、この銀がうるさいかな?


B:4、3銀打ち…ここで角、金の両狙いか…玉横には角より金だ


A:5、2金、角銀交換ですか、ここでの角が居なくなると、こっちも安心です


B:3、4銀成らず、まぁこの銀もすぐ取られるからか、玉の囲い崩すのに、何枚捨てるんだ?


A:同銀、やっと…ようやくこの金が浮いた


B:5、2竜…そこの金が抜けると、この角がまた効いてくれるからな


A:7、4角、ここからなら玉頭が抜ける


B:3、3歩…崩しに来たか…持ち駒も含めるとこちらも攻めれる、まだ、まだ負けんよ


A:同桂、右が開いた…あの堅い囲いがやっと緩んだ!


B:6、3角…やっぱり竜は取らせてくれんか、角交換で竜が上がれば、まだスキは作れるな


A:同角、少し緩んだのか…もう少し、もう少しなんだけどな…


B:同竜…良しこれでまだ粘れる、薄くとも、また囲えない訳でも無いんだ


A:4、2銀、横面がまだ空いてるならっ


B:5、2金…と来たか…2枚1組からまだ厚くするぞ?


A:4、3角、竜が効いてるとは言え、金、銀交換か


B:4、2金…この交換は甘いんじゃ無いか?油断したな!


A:同歩、底も見えた、ここで急所の1手!


B:5、3銀だと!?…成り捨てか?いや…もしかして…詰めろなのか、だとしたら…何処だ…そうか…もう…この局必至なんだ…


A:4、4銀、銀交換を誘ってる?焦ってる?いや今詰めろなのか…この形…どうしたら…


B:5、5桂…見つけたのか…「A」さんは、もう気付いてるのか…形は確かに難しいが…どうなんだ?


A:6、7歩、やっぱり詰めろなんだ…「B」さんは見つけたのか…だから飛車を止めに……


B:どうした?何を迷ってる…


A:あの…すみません……お菓子頼んでも良いですか、ハイ、プリンとバニラアイスで、お願いします


B:まだ気付いて無かったのか…


A:時間も…そろそろヤバそうだな、でも考えろ…考えろ


B:すまないが、私にもチーズケーキを頼むよ


A:えーと…えーと……あ、ありがとうございます


B:まだ気づかないで欲しいが…どうだ?


A:こうで、こうなって…うん…ん?…ヤバい…コレじゃ頓死になる…違う、考えろ、攻めてるのはこっちだ


B:ん?どうしたんだ…


A:最善手を探すんだ…大丈夫、少し落ち着け、糖を取れ、持ち駒は!?


B:そんなに慌てて、そこまで危ういのか…何処だ?何処に答えがある?


A:コレもダメだ…クソ…ここまで来たのに…投了するしか……いやでもこの1番ここで落とすなんて…


B:何をそんなに悩むんだ…このまま詰めろの必至じゃないのか?


A:諦めるな…まだ負けた訳じゃない、「B」さんだって苦しいんだ…ちゃんと最後まで打つんだろ?…あっ…時間が…秒読みになった…もういい、行け!


B:4、3桂成らず…王手か…やっぱり気付いたか…でも私にだって意地がある、しっかり最後まで詰ませてみなさい


A:同銀、とにかくこの歩だけは、なんとかしないと、頓死だけは避けないと


B:6、7飛車…腹を括ったようだね、ここからどう攻める?


A:5、3銀、ここは同竜で合ってるハズ…クソ考える時間がっ


B:同竜…そうだな、玉横からジワジワ滲み寄って来なさい、ただ飛車は自由にさせないがな


A:6、6歩、コレも単に取って、展開させて良いんだよ…な?


B:同飛車…どうした…時間が無くて焦ってるのか?じゃコレならどうする?


A:6、5歩、大丈夫…ここは銀で仕掛ければっ


B:2、3銀…そう、そこから詰みまでは、もうすぐだ


A:2、2金、うん、合ってる…大丈夫コレで足りてるんだ


B:4、1金…そのまま玉を左に逃がすんだぞ?間違えるなよ?


A:同玉、右の拠点も見つつ…コレだっ


B:2、2銀成り…この手は、まだ逃げ道が出来るぞ?良いのか


A:5、2金…甘かったのか?でもコレで寄るハズ…


B:3、1金…この金は取れないか、さっき金が良くなかったか…


A:5、1玉、「B」さん…ここまで来てるのに、詰ませるまで打ってくれるんだ…6組の私相手に…ちゃんと最後の最後まで、投了せずに…ありがとうございます


B:6、2角…そうだ、このまま間違わないでくれよ?棋譜汚したく無いんだろ?


A:6、1玉、ここでもう1度、角を並べればっ


B:7、2角…ここは単に取る手だね


A:同玉、なんだろう…この大事な1番で、指導までして貰えてるなんて…皆ちゃんと観てるかな


B:7、3竜…さぁ、あと2手で詰みだ、考えてみればこの1番、序盤からずっと圧倒されたな…


A:8、1玉、竜の頭に馬を作ればあとは、9、2に寄って、竜で詰みだ!


B:7、1角成り…ちゃんと間違わずにここまで来たね、ありがとう…この2日実に楽しかったよ


A:9、2玉、良し…勝った…勝てた……


B:93竜…詰みだな……(咳払い)ありません


A:ありがとうございました


B:ありがとう


A:実は途中…頓死になって……頭真っ白で…投了しそうになりました


B:頓死!?詰んでたのか


A:ハイ…


B:何処で?


A:桂馬跳ねた所です


B:やっぱり…あそこか…


A:気付いてません…でしたか


B:何かあるとは思ったが、自陣が脆くなって来て、手薄だったんだよ


A:そうなんですね…良かった諦めずに打ってて


B:その粘りが、私にとっては厄介だったがね


A:すみません…あっ最後まで打って頂いて、ありがとうございます


B:いや、こちらこそ、少し見苦しかったかな?


A:いえ…「竜王」の意地を感じました


B:そこまで伝わってるなら良かったよ


A:タイトルを持つって事が、どんな意味か改めて感じました


B:そうだね、「名人」と「竜王」の2つは、特別なタイトルだからね


A:ハイ…本当に勉強させて頂きました


B:それにしても…良く研究したね


A:実は…実戦で使ったのは…今日が初めてなんです


B:なんだって!?


A:どうせ試すなら、1番強い人に向かおうと…


B:嬉しい事言ってくれてるが、まんまと乗せられた訳だ


A:そんなっ、実はこれまで「居飛車穴熊」には、ことごとく負けて来たんです


B:今は居飛車党が牽引してるから、辛かったろう


A:そうなんです…でも振り飛車でも、ちゃんと戦えるってわかって欲しくて、ずっと1人で研究して来たんです


B:1人で!?それはさぞ、時間掛かっただろう


A:師匠に相談しても、矢倉対策で忙しいと言われて…


B:なるほど…それで1人か


A:そうなんです…でも、「B」さんと、振り飛車で戦えて良かったです


B:今回の戦法は、なんて名前なんだい?「四間飛車」の1つだとは思うけど、それだと味気無いじゃないか


A:名前ですか…どうなんでしょう…この戦法は今までと違って、駒の特定の動きはあまり考えず、自陣全体の駒組を考えるものなので…


B:将棋と言うか、打つシステムを、作ったと言う感じだね


A:そうです!だから名前は…ありません


B:作ったのは「A」さんなんだから、そのままで良いんじゃないか?


A:そのまま…ですか?


B:えぇ、「A」さんの名前を取ったシステム…「藤井システム」で、これからの居飛車党を、将棋界を変えてみて下さい


A:出来るでしょうか…


B:さぁ、それはこれからの「A」さん、次第ですよ


A:そうですね…やってみます、頑張ります


B:ま、私もまだ、7番ある1番を、落としただけですから、この「竜王」の座は譲らんよ


A:そうです…ね…この長い「竜王戦」最後まで宜しくお願いします!


B:こちらこそ、この2日楽しい将棋だったよ!


fin

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声劇台本2人用「タイトル」 コペル @gadomoroha

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