第8話

第8話




黒装束の男1「よせ!殺す気か!?」




黒装束の男の一人がセイラン腕を掴み止めにはいる




男に止められ、我に返ったセイランは、よろめきながら立ち上がり寝台の上に疲れたように座り込む

黒装束のもう一人の男が床に倒れて動かないマリの腕を取り生死を確認する




黒装束の男2「脈はある、気を失っただけのようだ」




黒装束の男1「協力者を殺したな??誰が女の面倒を見るのだ??」




女中の死体を見て呆れるように話す黒装束の男達




セイラン「その女は僕を裏切りマリをそそのかしたのだ、たとえ生かしていたとしても役には立たない。また家族を人質にして他の人間を連れてこればいい」




黒装束の男の嫌味に苛立ちながら吐き捨てるように答えるセイラン




黒装束の男1「その女はこの家に代々仕え、幼少期よりお前の面倒を見ていた…お前への義理や情もあったように思うが…そのような者を手にかけるとは。」




黒装束の男2「家族を人質にとったとしても従順で口が硬く、裏切らない人間を探し出し用意するのは面倒なのだぞ?お前がこの国の王に即位するために我々は手を貸してやっているんだ。それにはその娘が必要だと説明したはずだが?」




黒装束の男達は特に反論もする事なく黙って苦言を聞き続けるセイランをみて、ため息をつき諦め、今後について試案し始める




黒装束の男1「新しい監視役は我々が何とかしよう…それまでは女が勝手に逃げ出さないよう出入り自由なこの部屋ではなく牢などに閉じ込めておく必要がある。」



黒装束の男1「お前(セイラン)は新しい監視役を見繕い次第、女の記憶を再封印をしろ。」








わかったなとセイランに念を押し、彼の返事を待つ事なく倒れたマリを抱きかかえ、部屋の外へ出ていく黒装束の男達…




月夜に照らされた廊下をマリを閉じ込めるため牢へ向かって歩きながら、マリを抱えた黒装束の男の一人が愚痴を漏らす




黒装束の男2「また俺は医者に扮してあの三文芝居をやらなければならないのか…まさかここまで物分かりの悪い男だったとは…」




黒装束の男1「気持ちはわかるが我慢しろ、それも我々の任務の内だ」




黒装束の男2「現王は生まれながらに天上人の力を持ち、初代同様、堕ちた天女を妻とし善政を敷く、民にとって文字通り太陽のごとき王だが…」

黒装束の男2「それに比べ奴はまるで月…領主としての結果はある程度残せてはいるのだろうが、器の大きさも、人としての輝きも太陽とは比べるまでもない」




黒装束の男1「かつて我が国との戦で、この国の王は戦場の最前線に立ち、天上の力を使って自軍を支援した。我が軍は王を追い詰め生死の境を彷徨う程の大怪我を負わせる事はできたが、結局のところ逃し大敗した。その時以来、我が主はなんとしても、この国の王の力を欲しがっている…」



黒装束の男1「いや、わが国だけではない…今や世界がこの国の王の血肉を欲しがっている」






天上の力…その力を手にした者は、巨大な岩山を破壊し、時には海を割り、あらゆる怪我や病を治癒し、人の心や記憶をさえ操る事ができるという…




世界は古から地上に堕ちた天女を捕え、あらゆる実験を繰り返してきた…




ある国は何度も天女に子を産ませ、ある国は殺してその血肉を調べあげた…




だが子は全て力を持って生まれず、血肉からも何1つも得られなかった…




そして仮定した…力の秘密は天女ではなくこの国の王そのものにあるのではないかと…






黒装束の男1「我が国が誘拐など非合法にこの国の王を捕え連れ帰れば、第三国が決してその行いを見過ごしはしないだろう…」


黒装束の男1「我々の行いを諸外国は非道と責めたて、それは諸外国がわが国を侵略する事への大義を与えてしまう事になる。だから合法的にその肉体を手に入れる必要がある。」




黒装束の男2「我々は半端者であるあの男(セイラン)に手を貸し、その戦勝の見返りとして現王の肉体を求め手に入れ、我が国へと持ち帰る手はずだったのだが…」


黒装束の男2「あの男が王位に就けばこの国や民は終わりだな」




黒装束の男1「だがそれは、我々には関係のない事だ」




嗤う黒装束の男達…




黒装束の男1「この国の王の肉体さえ手に入るのならこの国がどうなろうが我々の知った事ではない…その先は奴(セイラン)とこの国自身の問題だ」




黒装束の男1「だが…奴が王位に就き、この国に招いた禍の責を負う事になる頃には、力を手に入れた我が主がこの地を平定し新たな王として君臨する事になるだろう」

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