ギルド結成!⑪
「摩訶不思議」
栞は突風で開いたドアの方を向いていた。
「どうかしたのか? って、何だあれ!?」
栞の隣へ行き、目線を揃えると、空中に半透明の部屋が浮かんでいた。
「確認する」
栞は書物庫の外へ出ると、しゃがみ込んだ。
「うわ、下が透けて見えるね」
穂波は栞の後ろから覗き込みながらいった。
空中へ浮かんだ部屋へは、書物庫から半透明の橋が架かっていた。
「渡れるのか?」
「割れたら真っ逆さまです~」
「正直、命綱がないと渡る勇気は出ないよな」
「でも、天音ちゃん、これくらいの高さから落ちても怪我しないよね?」
「いやいや、いくら天音が頑丈だからって、この高さから落ちたらただじゃ済まないだろ」
俺は穂波の珍しい鬼畜発言を質した。
「だって天音ちゃん、スキル『落下耐性Lv.10』だよ? 私は『落下耐性Lv.2』だけど、結構高い木の上から飛び降りても全然痛くないからさ」
「天音、実際のところ、どれくらいの高さまでいけるんだ?」
「わわ、わからないです~。怖くて、試したこのなんてないです~」
「なあ、栞はどうしたら――」
言いかけている途中で、栞は半透明の橋を渡り始めた。
「この橋は破壊不能の性質がある」
ああ、なんて頼りがいのある。
「そんなことまでわかるんだな」
「と思えば怖くない」
「え?」
「冗談」
少々ひやっとするようなやり取りを交えつつ、俺たちは恐る恐る橋を渡った。
「天音ちゃん、あんまり引っ張らないで、服が伸びちゃうよ」
「ふぇぇ~、だってだって~」
(許せ、穂波)
天音のことは穂波に任せて、俺は橋を渡り切った。
「栞、何か見付けたか?」
先に部屋へ入っていた栞に声をかけた。
「ここが本当の天空の書物庫」
栞は声を弾ませながらいった。
半透明の部屋はそれほど広くはなかったが、四台の本棚が並んでおり、中にはびっしりと本が詰まっていた。
「なるほど、そういうことか」
この半透明の部屋の床は光が屈折するように加工されており、地上がとても遠く小さく見えるようになっていた。
まさしく天空の書物庫だ。
「読んだことがない書物ばかり」
「楽しそうだな」
「うん、満悦」
「そっちの箱はもう調べたのか?」
「箱?」
本棚よりも前に、いかにもお宝が入っていますよと主張している箱の方に目がいくと思うのだが、栞にとっては興味のない物のようだ。
「ふぇぇ~、着いたです~」
「なになに? 宝箱?」
「だと思う。お、鍵はかかっていないみたいだな」
宝箱を開けると、中には指輪が一つ入っているだけだった。
中身の割に箱がでかすぎるだろと思ったが、指輪用の箱が部屋の片隅に置いてあっても誰も気が付かないので、仕方ないのかも知れなかった。
英雄ノ指輪
武器に剣聖を宿し、攻撃力を高める。
パーティーで剣をメインに使用しているのは俺だけなので、英雄ノ指輪は俺が装備することになった。
さらに、アキューストムの謎を解いたということで、人類への貢献度が上がり、スキルポイントも得ることができた。
以前は選択肢に並んでいなかったスキル『剣の達人Lv.2』を会得した。
ノーヴィス湖中庭園、黄金の遺跡ゴールドスパーク、そして、アキューストムの塔を攻略して、俺のパラメータは著しく成長していた。
生命力:15
体力:11
筋力:12
敏捷力:26
精神力:11
魔力:8
知力:0
ま、ランク:2のままなわけだが。
「終生は知力がまったく上がらないから、ランクも伸びにくい。だから、焦らなくてもいい。それに、いざという時には覚醒モードになる」
俺がオリハルコンを守護する者との戦いで見せた異常なパラメータの上昇現象を、栞は覚醒モードと命名していた。
「俺の意思でいつでも使えるならいいけど、あんないつ発動するかもわからない力を当てにするのは危険だぞ?」
「条件を探す必要あり」
「だな」
その後、栞は当初予定していた五日間をぎりぎりまで使って、心行くまで天空の書物庫の本を読み漁った。
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