ギルド結成!⑥
「焼きマシュマロを作るです~」
「いいね!」
天音は両手から零れんばかりのマシュマロを取り出すと、それをそのまま焚火の中へ放り込んだ。
まさか直接放り込むなんて思わなくて、止める間すらなかった。
「いや、これどうやって取り出すんだ?」
「ほぇ? こうやって、一瞬なら熱くないです~」
天音は何の躊躇いもなく焚火の中に手を突っ込むと、きつね色の焦げ目がついたマシュマロを取り出してみせた。
「天音ちゃんは炎属性耐性を持っているの」
「出鱈目だな」
「美味しいです~」
焼きマシュマロを頬張って、天音は頬っぺたをとろけさせていた。
そうして、天音が二回目を焼きマシュマロをおかわりしたところで、怪奇現象が発生した。しゃぼん玉のような水玉が無数にふわふわと漂っていた。
「何だこれ?」
「水の精霊が出現した表徴」
「あ、あれじゃない?」
穂波の指差す先に、人の列ができていた。
列の先には、羽衣を身にまとった水色の肌の美女が浮かんでいた。
「イベントの順番待ちか。俺たちも列に並ぶか」
俺たちの前には十人ほど並んでいたが、列はあっという間に消化された。
どうやらそれほど長いイベントではないようだ。
「おや、其方ら、天使の涙を持っておるな?
システムがそう認識させているのか、実際に俺がそう感じているのか、目の前に立つと、水の精霊は物凄い存在感があった。
「ええ、いいですよ」
俺たちは素直に天使の涙を渡した。
「ありがとう。これで里にやって来る魔族を撃退することができる。そうじゃ、アイテムをくれた代わりに、其方らに水の加護を授けよう」
ちょっとしたストーリーを挟みつつ、俺たちは水の精霊の加護を受けた。
ノーヴィス湖限定ウンディーネの祝福
永続補助
ノーヴィス湖内を地上と同じように動けるようになる。
これでノーヴィス湖中庭園へ行く準備が整った。
加護を受けた他のプレイヤーたちは、ノーヴィス湖へ飛び込んで行ったので、俺たちもそれに
光源も何もない夜中の湖に飛び込んだので、一瞬視界は暗転したが、すぐさまグランブルーの景色が広がった。
ノーヴィス湖はつぼ型の構造となっており、俺たちは壺の底へと向かった。泳いでもいないのに、水中では上下左右自由自在に動くことができた。
「まさしくゲームならではって感じだな」
「楽しそう」
「別に冒険を楽しんだらダメだとは、リーリアにもいわれていないしな」
「その通り」
感情をほとんど表に出さない栞も、心なしか楽しそうに見えた。
ノーヴィス湖中庭園に到着した。
庭園全体が巨大な気泡に包まれており、ダンジョン内へ入るには湖底から歩いて行かないといけない仕様となっていた。
「うわあ、絵で見るより色合いが綺麗ね」
「あたし、ここに住んでもいいです~」
ダンジョン内は淡い暖色系の色鮮やかな色彩でまとまっており、そこへノーヴィス湖から差し込んだ月明かりが静かに照らしていた。
水中ならではの織り成す幻想的な色味は、地上では決して拝むことのできない、噂に違わぬ絶景だった。
「ダンジョンは四六時中モンスターが発生するので、居住には不向き」
「あはは、栞ちゃんってば~」
俺には栞が本気なのか冗談なのか判別が付かなかったが、穂波はころころ笑った。
観光もほどほどに、早速ダンジョンを攻略していくことにした。
今回の目的は、ノーヴィス湖中庭園のそこら中に居る貝の中から『黒真珠』を見付けることだった。
黒真珠をシティウェルにある商会へと持ち込むと、スキルポイントをもらえるのだそうだ。
ダンジョン攻略に関して、俺たちの間で一つの取り決めがあった。前回の反省を踏まえて、仮に隠し部屋を発見したとしても、マップに印を付けておくだけで、無暗に立ち入らないことになっていた。
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