ギルド結成!⑦
ノーヴィス湖中庭園のモンスターは棘を吐き出すナマコや地べたを走るクラゲなど、奇抜な動きをするものが多かった。
大体、どのモンスターもLv.10前後だった。
擬態しているモンスターも居たが、穂波のスローアイの前では子供の隠れん坊も同然だった。
クレイドルの洞窟での死闘を経験し、ワールドボスとオリハルコン製の装備を手に入れた俺たちにとって、このダンジョンのモンスターは然程脅威でもなかった。
何よりも大きかったのは、天音が普通に盾役として機能している点だった。
どうやら暗くて狭いいかにもな場所でなければ、天音はある程度自我を保てるようだ。
パカッ、パカッとテンポよく二枚貝を開けていくが、なかなかお目当ての黒真珠は見付からなかった。
六時間の探索で見付けたのは僅かに一個、一人分だけだった。
「意外と見付からないもんだな」
「黒真珠のために、一週間も通い詰めた冒険者も居たらしいよね」
「一個でも見付かったのは、運が良かったってことか」
「ラッキーです~」
「この区画を探索したら、一旦地上に戻るか」
俺はマップ上でぐるぐると円を描いた。
足を運んでみると、頭上に天然の岩のアーチがかかっていた。
「落ちてきたりしないよな?」
「フラグを立てない」
アーチをくぐって奥のぽっかりとした空間に出ると、そこには亀の甲羅を被った巨大なタコのようなモンスターが居た。
六時間の探索で一度も見かけたことのないモンスターだった。
「うあ、気持ち悪っ」
「ひょええぇ~」
「オオタコガメLv.16だね」
「ワールドボスか?」
「否定。あれはダンジョンボス。強力な個体だけど、ワールドボスに比べると劣る。あと、一定時間経てば復活する」
「ほう、そんなのも居るんだな」
「稀少な素材を落とすダンジョンボスに貼り付いて独占しているギルドも居て、それが原因でギルド間抗争とかも起きているみたいだよ」
「怖いです~」
「おしゃべりは後だ」
既にオオタコガメは臨戦態勢だった。
オオタコガメとの戦闘について、特筆することはなかった。
オオタコガメの攻撃は、天音にまったくダメージが入らなかった。
しかも天音はパッシブスキルでダメージを反射しており、オオタコガメの体力をじわりじわりと削っていった。
オオタコガメからしてみれば、詰んでいる戦いだった。
オオタコガメは天音のスキル『挑発Lv.10』で完全に回りが見えなくなっており、ひらすら天音に対して攻撃を繰り出した。
穂波は遠くから弓矢でちくちくと援護射撃した。
栞はいつも通り、涼しい顔をして戦い振りを眺めていた。
下手に接近してこの安定が崩れてもあれだったので、俺も今回は傍観に徹した。
ぺちっ。
オオタコガメの触手攻撃が、天音の盾にヒットする。
直後、その巨躯がポリゴンの粒子となって弾け飛んだ。
ダメージ反射でやられたモンスターは、こんな風に地味に消えるんだなと思った。
戦利品はオオタコガメの足[1]としょっぱい物だった。
シティウェルへ戻り、黒真珠は俺が商会へと持ち込んだ。
天音は現状習得できるスキルが生活系のものしかなく、栞も必要ないといった。俺と穂波のどちらかが黒真珠でスキルポイントをもらえることとなったが、穂波は「終生君が使って」と快く譲ってくれた。穂波はそういうやつなのだ。
獲得したスキルポイントを使って、俺は『エアアクロバティックLv.1』を習得した。
ざっくり説明すると、空中でもう一回だけジャンプすることができるようになるスキルである。
「色々と便利そうなスキルだね」
「かっこいいです~!」
「いい選択」
空中を蹴ってもう一段高い場所へ飛べるというだけだが、俺は楽しくなって意味もなく何時間も町中で跳ね回っていた。
そういえば、時折町中でぴょんぴょんしているプレイヤーを見かけたが、俺と同じ気持ちだったのだろうか。
次に攻略を決めたのは、黄金の遺跡ゴールドスパークである。天音が希望していたところである。
まずはシティウェルから蒸気機関車に乗って、シティグッドを目指した。
ファンタジー・イン・リアリティの世界では、個室車だろうが解放席だろうが、切符の値段は同じだった。
俺の感覚だとみんな当然個室車を選ぶだろうと思っていたが、意外と売れ行きは半々なのだそうだ。
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