ギルド結成!④

「なるほど、だから短剣なんだね」

 俺のパラメータと腰の装備を見て、紅葉は何かを納得したようだ。

「それじゃ、オリハルコンを守護する者の牙[1]とオリハルコンの原石[3]を材料に、短剣を打っていいんだね?」

「はい、お願いします」

 マシュマロパラソルの中で、近接武器が必要なのは俺だけだった。

 モンスターの牙は武器、鱗は防具の素材にするのが一般的だそうだ。

「紅葉さん、お代はオリハルコンの原石[3]でいいですか?」

「随分と気前いいな」

「実は、私の小手も作ってもらいたくて」

「これだけもらったんだ、全然構わないぞ。そっちの子は何か要らないのか? 武器とか鎧とか」

「必要ない」

「遠慮しなくていいんだぞ?」

「必要ない」

「そうか。よっしゃ、早速作っていくぜ!」

 本来であれば、原石から武器を打つにはいくつもの工程と時間を要するのだが、ここはゲームの世界なので、設備と素材、それと鍛冶スキルさえあれば、ものの数分で完成するのだ。

「『クリエイトウェポン・ダガー』!」

 紅葉は金床の上に素材を乗せ、左手でハンマーを握りしめると、勢い良く数回叩いた。

 するとそこには、オリハルコンの青白い輝きを持つ二本の短剣が出来上がっていた。

 鍛冶スキルによって出来上がる装備は、鍛冶屋の能力によって各種性能が上下してしまう。

 そこいらに居る鍛冶屋では、客のパラメータを超えないよう、初めから低い数値に設定して装備を作ることが多かった。

 それに対して、紅葉ほど腕の立つ鍛冶屋だと、パラメータジャストで装備を仕上げることができるのである。

 こうすることで、素材の性能を限界ぎりぎりまで引き出すことができるのである。

「装備してみな」

「はい」

 まだ熱を帯びた短剣をそっと持ち上げると、工房内にぶわっと風が吹き抜けた。

「……今のは?」

「武器に発現した特殊能力と推測」

「ウェポンスキル『光刃こうじん』だ。詳しいことは、武器の説明に書いてある。終生、その子を大事にしてやってくれ」

「もちろんです」

「さて、天音、そいつを貸しな」

「は、ひゃい!」

 紅葉は金床の上に天音から受け取った大盾を乗せ、鏡餅のようにオリハルコンの原石[2]を乗っけた。

「『リペアーLv.10』!」

 紅葉は徐にハンマーを振り上げると、鏡餅を力任せに叩き潰した。

 その衝撃に、オリハルコンの原石[2]は粉々に砕け散ったかと思いきや、その破片はぼろぼろになった大盾の隙間へと収まっていき、瞬く間に修復してしまった。

「わ~、あたしのいちごタルトが新品みたいにピカピカになってます~!」

「あたいの盾に変な名前を付けるのはやめてくれないか。オリハルコンを使ったから、前よりも格段に耐久力が上がっているはずだ。今度は壊さないでくれよな」

「ありがとうございます~!」

「さて、残りは小手だね」

「はい、お願いします」

 穂波は声を弾ませていった。

 新しい装備を手に入れる時は、誰だって嬉しいものだ。

 紅葉は金床の上にオリハルコンを守護する者の鱗[1]とオリハルコンの原石[3]を乗せた。

「『クリエイトアーマー・グローブ』!」

 ハンマーで数回素材を叩くと、青白い小手が完成した。

「わー、軽いのに物凄く硬いですね」

 穂波は小手の出来にご満悦の様子だった。

「紅葉、オリハルコンの原石で鏃を作って欲しい」

 栞は何の前触れもなくいった。

「えええ、そんな高価な物、私は使えないよ!?」

 鏃が誰のための物か、穂波はすぐさま察して手を振った。

 無論、攻撃力は劇的に上昇するが、消耗品である鏃にオリハルコンを使っているなど聞いたこともなかった。

「いざという時のために、持っておいて損はない」

「いざという時……、そうだね。紅葉さん、作ってください」

 いざという時がどういう時か、俺たちの脳裏に浮かんだ光景は同じだろう。

「あいよ」

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